深まれ!切手愛〜本のひととき〜
「切手デザイナーの仕事〜日本郵便 切手・葉書室より〜」間部香代
たびたびnoteで切手について触れている。
郵便局にふらりと立ち寄り、思いがけず出会う特殊切手。
ミイラ取りがミイラになった気分で手が伸びてしまう。
手紙が好きでよく筆を取る。
相手を思い浮かべてレターセットを選び、
切手との組み合わせを考える楽しさといったら! 幅広いジャンルに対応できるよう買い求めていたら、ファイルがパンパンだ。
便利なツールでメッセージを送ることができる現代、切手は使うよりも眺めている時間の方が多いかもしれない。
その切手を作る人たちがいる。
国内に8人しかおらず、彼らは日本郵便の社員だという。
所属は切手・葉書室。
そんな部屋があることも、そもそも切手デザイナーという仕事があることも私は今まで知らなかった。
これは著者のことばだ。
8人を取材し、単なる仕事内容にとどまらず
デザイナーになるまでの道のり、切手にかける想いを綿密に綴っている。
途中に挟まれたコラムには
・切手制作の流れ
・切手のいろいろ
・切手印刷のしくみ
これもまた初めて知ることばかり。
デザイナーの想いを読み込んだ上で、さらなる切手の知識が得られる。
あの手のひらにすっぽり隠れるサイズの紙片は只者ではない。
切手は制作開始から発行まで、約9か月を要する。
題材を決めるのは更に遡って発行の2年前。
ヒアリングや取材を重ねてからデザインにとりかかるという。
気が遠くなる…。
この手にある切手の奥の奥の奥に…
まだたくさんの物語が隠れている。
たとえばこれ。
シートの端っこにある模様のようなもの。
特殊切手は6色が基本だそうで、その色見本をこうやって明記している。
色玉の近くには印刷会社名も入っている。
国内外に5社。セキュリティなどの条件を備えた会社が請け負っているそうだ。
手持ちの切手シートに目を凝らしたら、国内2社と海外2社を確認できた。
8人のデザイナーは経歴や得意分野もバラエティーに富む。
美大出身者がほとんどだが、メーカーで畑違いのデザイナーをしていたり、中には元・郵便配達員という人もいた。
代表作が掲載されている。
あ、これ持ってる。これもある!
この切手かっこよかったんだよなぁ…。
頷きながらページをめくり、切手ファイルを再確認。
この切手はこの人がデザインしたのか…
切手の向こう側にいる人と出会う。
感慨深い。
眺めるのも楽しいけど、この気持ちを誰かに届けたい。
切手を買うときは宛先をもう考えている。
届いた瞬間、手紙より前に目に入るのが切手。私の気持ちを代弁してもらおう。
切手愛が一層深まった。