読んで味わう〜本のひととき〜
「今日のビタミン 短歌添え」東直子
たしか新聞に紹介されていた。
歌人の初めてのエッセイ。「とりつくしま」などの小説は読んでいたが、エッセイは初。
36の、「食」にちなんだテーマでことばを紡ぎ、短歌でくくるスタイル。
読むと食べ物を味わうことと、日々の感情の移ろいは近しいものだと感じられる。
黒豆を食べながら好きな人を思い浮かべたり。
山菜の天麩羅のほろ苦さに、かつての苦い体験を重ねたり。
毎日の食事に対する著者の視点もみずみずしい。
白いお米がまるで宝石のように輝く。
料理の過程も楽しげに映るから不思議。
各3ページ程度、エッセイの長さがちょうど良かった。
ふと空いた時間にぱっと開き、さっと読める。
短い中に味わいが潜んでいる。
それは食欲や、忘れていた感覚を呼び覚ます。
だから「ビタミン」なんだな。