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森へ行きましょう、むすめさん〜美術館さんぽ10/31〜
「森へ行く日」舟越桂
彫刻の森美術館 本館ギャラリー
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行きたいと心に決めていた展覧会があった。会期が長いので油断していたら、残り数日しかない。★11/4終了です★
以前から心に残る作家だった舟越桂さん。
ドラマ化もされた「永遠の仔」を始め、数々の本の表紙に登場した彫刻作品。
一貫してクスノキを扱い、その静かな佇まいや独特のまなざしは一度見たら忘れられなくなってしまう。
前回観たのはこちら。
惜しくも今年の3月に逝去されたので、ご存命だった展覧会は松濤美術館が最後になった。
今回も最期まで展覧会の実現を待ち望み励んでくれた作者と、家族の協力で開催の運びとなったらしい。
彫刻の森美術館は箱根にある。
9月に家族旅行で箱根を訪れていたものの、美術館を1人で観る時間は取れなかった。
今回はいわばリベンジ。
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朝家事を終えてから出発。
夕方に帰宅できるように綿密な計画を立てた。
新横浜から小田原まで、ひと駅だけ新幹線に乗ってしまおう。
だいぶ時間の節約になる。
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新幹線ホームから東口を目指す。意外と遠い…。小走りで箱根登山バス乗り場にたどり着いた。
平日だというのに観光客がずらり。幸い始発駅で座ることができたけど、途中から乗ろうとしたキャリーケースの人は乗車を断られていた。
急なカーブがあるため、大きな荷物を持って座れないのは危ないんだって。
(カーブは座っていても怖かった)
約30分乗って最寄りのバス停に到着。美術館までは10分ほど歩く。
ここへ来るのは確か3回目。
小学生の家族旅行と、高校の卒業旅行。当時はまだ美術に興味がなかったから記憶が曖昧だ。
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お天気も良く、遠くの山々まで見渡せた。
野外に展示された彫刻は、景色と相まって印象をくるくると変えていく。
ケースに囲われないぶん、作品を360°の方向から観ることができる。
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下から見上げるとこんな表情なんだとか、発見がいっぱい。質感も近くで味わえる。ゴツゴツからなめらかまで多種多様。
舟越桂展は入口付近の本館ギャラリーで催されていた。ポスターの作品は実際には屋内展示だったけど、ひときわ目立つブルーを放っていた。
打ちっぱなしのようなシンプルな建物の内側に、彼の世界が広がる。
4つの展示室からなる構成。
《砂と街と》は「永遠の仔」で使用された作品。
まるで仏像と対時したような感覚を覚えた。
彩色されたクスノキでできた姿に、大理石の瞳。
目線は微妙に外れていて、鑑賞者とは合うことがない。そのせいか見る角度によって表情が変わる気がした。
儚げな表情の中に芯の強さも伺える。
作品のためのドローイングも展示。
木炭や鉛筆で描かれたそれは、また違う趣きだった。
《水に映る月蝕》は2階展示室にあった。
松濤美術館で1番心惹かれた作品。淡い色合いがあどけない少女のよう。背後に手を生やした異形でありながら、神々しい。美しいまなざしに見とれてしまった。
(館内を一通り観てから、最後にまた会いに行ったくらい)
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ランチを食べて、足湯も楽しんだ。足湯は今年7月にオープンしたばかり。自宅から手ぬぐいを持参した。晴れた空の下、気持ちも解放されるみたい。
ただ歩くだけでも楽しい。
緑があって、彫刻があって。オープンなぶん、その大きさに圧倒される。
紅葉には早かったので、また訪れたい。
帰りは小田原駅でアンパンのお土産を買いつつ、JRを利用。ちゃんと予定通り帰宅できたので「箱根は日帰りでもいける」と自信をつけた。
ひと駅だけの新幹線も、ちょっと楽しかったし。
日常を飛び出した美術館の旅。
短い時間ではあったけど、心が満たされた1日だった。