宿題をやる気にさせるために大人ができること
「ここから先へは入ってはいけません」
と言われると、つい入りたくなるのが人間の心。これは「心理的リアクタンス」と呼ばれる心理現象なんだそうです。人間は、自分の自由を制限されると、反射的にそれを取り戻そうとする心理が働きます。つまり、「○○しなさい」と言うのは逆効果となってしまうということです。
僕もすごく心当たりがあります。それは「宿題」です。子どもの頃、親に「宿題しなさい」と言われてすごく嫌だったのを今でも覚えています。にもかかわらず、教師になった今、つい子どもたちに「宿題やりなさい」と言ってしまうのです。
子育てをして、だんだん子どもが大きくなってくると、親は子どものやることについ口を出してしまいます。それは子どもの安全を守るため、子どもの成長を促すため。すべてその子のためを思って言うわけですが、逆効果となるのはちょっと切ないですね。
➣「宿題しなさい」と言われるとしたくなくなる心理
残念ながら「宿題しなさい」は心理的リアクタンスによって無効化します。無効化するどころか、「絶対にやらない」という心理さえ働いてしまいます。自分の自由を制限されたことの反発により、反射的に自由を取り戻そうとする心理が働きます。同様に「宿題終わったの?」や「宿題したら?」も同じです。
かと言って、「絶対に宿題をしてはいけません」と言ったところで、きっと心理的リアクタンスは働かず「やったー!」となって終わるのがオチでしょう。
では、宿題をやらない子がやるようになるにはどうすればよいのかを考えていきます。
(個人的に現行の宿題について思う所は多々ありますが、また別の記事にまとめていきます)
➣宿題をやろうとしない子の気持ち
宿題をやろうとしない子に「宿題しなさい」と言ったところで、やる気になるわけではありません。その時は言うことを聞いてやるかもしれませんが、次の日にまた同じやり取りをする可能性が高いでしょう。
宿題をやらない理由として、4つの理由が考えられます。
①やり方が分からない
②能力がなくてできない
③やった方がいいと思えていない
④やる気がない
簡単に解説します。
①やり方が分からない
宿題のやり方そのものを理解しておらず、どのように取り組んだらいいのか分からないパターンです。単純にやり方を掴めるまで一緒に取り組んだり人にやり方を聞いたりすることで解決できます。
②能力がなくてできない
その子にとって宿題の問題が難しすぎて、自分だけでは取り組めないというパターンです。一緒に問題を解いていかないと終わらないので、親子ともにストレスがかかります。個人的には、現行の宿題で起こる一番の問題点だと思います。
③やった方がいいと思えていない
その子にとって宿題が価値のないものとなっているパターンです。宿題が簡単すぎる、単純な反復の繰り返しでつまらないなど、何かしらその子の考えがあるはずです。よく話し合いをして、気持ちをよく聞いてあげたり、一緒に考えたりすることが大切です。
④やる気がない
①~③をすべてクリアしているけれど、ただただやる気がでないパターンです。やった方がいいのは分かっているけれど、まだやる気にはなれていない時です。ここで「宿題やりなさい」と言われたらすかさず「今やろうと思ってたのに」と返すでしょう。
➣宿題をやる気にさせるために大人ができること
「親ができること」ではなく「大人ができること」としました。宿題を出す側である僕の考えは、宿題ができないのは誰の責任でもなく、親と教師が協力して取り組んでいく課題だと思っています。たとえ家庭でできなくても、学校でアプローチしてみればいいですし、その子の理由やその子に合う方法を探して解決してみればよいと思います。ですから、その子を育てる大人が「宿題をやりなさい」と言わなくてもよいアプローチの方法を考えていきます。
①やらない理由を考える
②一緒に計画を立てて期限を設定する
③一緒に勉強する
④期限を再設定する
①やらない理由を考える
子どもがどんな理由で宿題をやらないのかをよく話し合います。おそらくやらない理由の①~④のどれかに当てはまるので、一つひとつ解決していきます。
②一緒に計画を立てて期限を設定する
いつ、どこでやるか、いつまでにやるかを子どもと一緒に設定します。大人が決めるのではなく、子ども自身に決めさせた方が「やらされている感」の軽減につながります。
③一緒に勉強する
大人が時間を取れるのであれば、子どもが勉強をしている間、そばにいてあげます。あまり口を挟まず、難しすぎるなら解き方を教えてあげたり、隣で本を読んだりするだけでもいいです。教師なら隣で作業をしていてもいいです。分からなかったらいつでも聞けるという安心感はやる気にもつながります。
④期限を再設定する
一緒に計画を立てて期限を設定したのに守れなかった時。やることは「叱ること」ではありません。計画を見直し、期限を再設定することです。「叱られるからやる」という状態では、何時間勉強に費やしてもあまり効果は期待できません。結局のところ「勉強嫌い」が続くだけです。その子がやる気になるまで、粛々と期限の再設定をし、辛抱強く待ちます。
➣子どものやる気を疑わない
日本には「宿題はあって当たり前。やらないといけないもの」という価値観が根強く残っていますが、海外の学校では日本よりも宿題が少なかったり、レポートや自主学習などクリエイティブな課題が多かったりするそうです。そう考えると、単純な反復練習のような宿題は、無理にやらせる必要はないかもしれません。無理にやらせようとすればするほど悪循環にはまります。勉強が嫌いになったり、大人の負担が増えたりします。宿題をすることで、家で学習する習慣がつくことは良いことです。しかし、「宿題をやらせること」が目的ではなく、大切なのは子どものやる気を引き出すことです。子どものやる気を信じて、辛抱強く待つ姿勢を僕も身に付けていこうと思います。