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未来をつくる子どもたちの教育にもっと関心を持ってほしい【フィンランド教育に学ぶ】

 人は決して平等には生まれてこないし、平等は実現することのない理想かもしれない。しかし、だからこそ、国が平等で無償の教育を提供する。貧富、性別、宗教、年齢、居住地、民族、性的指向などの違いによって差別されることのない等しい出発点を一人一人に保証する。

 これは、「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」(著 岩竹美加子)の「はじめに」の中で、著者が示したフィンランド教育の理念です。

 なんと素晴らしい考えなんだと、興奮冷めやらぬ状態で記事を書いています。

 この言葉の通りフィンランドでは、小学校から大学に至るまで教育費は必要ありません。小中学校では、教科書やノート、教材等も無償で支給されます。学級費やその他、諸費用はありません。給食も、保育園から高校まで無料。遠方に通学する場合の交通費も無料。これは私立も公立も関係ありません。

 フィンランドが教育の無償化にこだわる背景には、教育の平等の実現という理想があります。貧富の差や社会的立場によって教育を受けられなかったり、断念したり、差別されたりすることがないよう、教育の平等を保障し、一人一人の充足感を高めていくという考えが出発点となっています。


➣幸せの国の土台をつくるフィンランドの教育

 フィンランドの学校の授業時間は日本の半分ほどで、普段の宿題は少しあります。夏休みの宿題はない。休みは休むためのものだから、過剰な勉強を子どもに課す学校文化がないそうです。それでもOECDによる学習到達度調査(PISA)では上位に入り、毎回好成績を収め続けています。

 人口約550万人。日本の兵庫県と同じくらいの人口でありながら、一人当たりのGDPは日本より約25%も高い。残業する人は、ほとんどいません。極めつけは「世界幸福度ランキング」3年連続1位というまったく非の打ちどころのない国。

 どうしてこんなにも幸せそうな国ができあがるのでしょうか?

 その土台にあるものは、やはり教育です。日本よりも面積が小さく、資源が乏しいフィンランドには、質のよい人を育てることが豊かな国をつくるという考えがあります。ですから、国も、国民も教育に関心があり、注力しているのです。

 教師になるには日本よりも倍率の高い教育学部を経て、大学院を卒業する必要があります。厳しい採用試験もあり、高い質とモチベーションを求められます。そのため給料は日本よりやや高め。学校が夏休みの間の約2ヶ月間はほとんど休みで、教育以外の雑多な仕事も少なく、きちんと定時に帰ることができるので、教師という職業は大変人気があるそうです。


➣とことん「シンプル」なフィンランドの学校

 教育の世界にいれば「フィンランド教育がすごいらしい」ということを聞いたことがある人は多いはず。この国の教育に対する考え方は、日本と大きく違います。そして、とことん「シンプル」なのです。フィンランドの学校は、教育費はさることながら、あらゆるものが「ない」のです。

 極力ムダを省いてシンプルにし、子どもたちが落ち着いて自分の学習や将来について考えることができる環境を整えています。

 「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」の著者、岩竹美加子さんは、お子さんを日本とフィンランドの学校で育てられました。その中で見てきた、「日本にはあってフィンランドにはないもの」から、日本の教育の当たり前を「疑う目」を養っていきたいと思います。

- 日本にはあってフィンランドにはないもの -
※( )はフィンランドで代替されているもの

<学校行事>

入学式、始業式、終業式といった式典、運動会などの行事、授業参観(オープンドア)

<持ち物>

ランドセル(リュック)、上履き、制服、体操服、給食エプロン

<学習>
テスト、受験、偏差値、塾

<生活>
日直、掃除、クラブ活動、部活、服装や髪形の校則、手紙やプリント(メール)

<教員>
部活指導(地域の役割)、校務分掌、不要な会議、長時間労働

<保護者>
全員参加のPTA(任意参加の親達の組織)、地域に基づく○○委員会や○○協議会

 ずらっと並べてみました。上記のものすべてがフィンランドにはありません。なくても成果を出す国民が育ち、豊かな国を築くことができています。

 国のシステム上、変えられないものもありますが、当たり前を疑い、小さなことでも削ってみることは大切な視点です。シンプルでムダなものが少ない状態の方が、より重要なことに集中できるからです。僕たちは、思考停止状態で当たり前のように継続されているものを見直していく必要があるでしょう。


➣教育観の底上げをしよう

 知れば知るほどフィンランドの教育に魅力を感じてしまいます。フィンランドがPISAの多分野において1位を獲得し、「世界一の教育」と日本でも注目されたのは、2000年代の初め。それから約20年が経とうとしている現在、フィンランドの教育にどれくらい近づけたでしょうか。

 日本の教育もPISAで上位に入る分野はありますが、子どもたちへの学力の詰め込み方や教師の労働時間に見合っている感じではありません。日本はOECD諸国の中でも教育の公的支出が低く、2018年は最下位。学校のICT化も国際的に見て非常に遅れています。

 子どもたちは、日本や世界の未来をつくる希望です。大人が子どもの教育に関心を持たずして、この先の未来をどのようにつくっていくのでしょうか?

 僕たちは、理念や価値観をはじめとする教育観全体について見直し、底上げしていくべきではないでしょうか。「世界一の教育」から学ぶべきところはまだまだたくさんありそうです。

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