二人のYoutuberには見えている教育の世界観とは
僕が勝手に注目している二人のYoutuberがついにコラボしました。それはオリエンタルラジオの中田敦彦さんと株式会社div代表取締役のマコなり社長。このお二方が何を語るのか。僕は期待に胸を膨らませながら動画を見ました。
中田さんはお笑い芸人。マコなり社長は経営者。お二人はまったく違う分野で活躍しています。しかし、それぞれが作る動画はいつも「教養」や「学び」にあふれています。そしてそれを面白く、楽しく学ばせてくれます。僕もお二人の動画からたくさんの学びをいただいています。つまり、お二人の共通点は人々に知識や教養を与える「教育者」であることです。
そんなお二人が動画の中で熱く語ったテーマは、やはり「教育」についてでした。
➣マコなり社長のビジョン
初めて会ったとは思えないような二人のかけ合いが面白くて、テンポよく対談が進んでいきます。内容は、マコなり社長が中田さんへ「Youtubeを辞めて、新しい事業をやってみませんか?」という提案をプレゼンするという形式で進んでいきました。
その事業とは「アウトプットを通じて”学びを楽しむ”オンライン教育事業」。事業の詳しい内容は、ぜひ動画を見て知っていただきたいのですが、これを提案するに至ったマコなり社長の考えに、ものすごく共感しました。
マコなり社長は言います。
「価値観のパラダイムシフトを起こしたいんですよね」
「これまでの『学び』というのは、『役に立つから学ぶ』。これを『楽しいから学ぶ』に変えていきたいんですよね」
プログラミングスクールの経営者の方が、日本人の「学び」への価値観に疑問をもち、パラダイムシフトを起こしたいというビジョンを掲げています。マコなり社長は、「社長」という肩書から、ビジネスの世界で生きているように思われるのですが、「自分は経営者であり教育者だ」という自覚をいつも絶やさずに持っているように、僕は感じています。だからこそ、こういったビジョンをさらっと言えるのでしょう。
マコなり社長ぐらい発信力のある方だからでしょうか?そんなはずはありません。このような大きなビジョンをどれくらいの学校が、教師がもっているでしょうか?自分だって。一つの学級をもつ教師であれば、35人を率いる「経営者であり教育者」です。そう考えると、今までの自分の甘さを思い知ったようで、少し悔しくなりました。
➣中田さんが見ている教育の世界観
動画の終盤に中田さんがオンライン教育について語ります。
今、子どもたちに教師を配るより、スマホを配って教師が入っているアプリを配る方が効果が出ている、という話がいっぱいあるんですよ。だから貧しいところの子どもたちには、とにかく学校を建てる前にタブレットを配れ、という話になっている。そういう時代になってきている以上、そういうタブレットの中に入れるような先生たちを作ろうというのは、まさに教育改革ですよね。
中田さんはこうした世界観で教育を考えていらっしゃいます。
指数関数的に世界が変化しているということは、世界における「教師」の価値観もあっという間に変わっていくのです。しかし、日本の学校は指数関数的に変化することはない、と言い切っても過言ではなく、異質なくらいに世間に取り残された空間です。中田さんも「公立の小学校に通う娘から聞く学校の教育方法って、まったく我々の子ども時代と変わってない」とおっしゃっていました。一人一台タブレットが導入されている今、将来このタブレットの中に自分が入って授業をするかもしれないという世界観をもつ教師が何%くらいいるのでしょうか?自分としても危機感を覚えます。
これは日々教養を絶やさず学び、発信してきた中田さんだから見えている世界観なのかもしれません。マコなり社長も、「経営者」というビジネスの世界で生きながら「社会と教育をつなげて考えている」から、こうした未来へのビジョンを掲げられるのかもしれません。
➣学校が閉鎖的である理由
僕は約10年、公立の小学校に勤務していますが、学校は本当に閉鎖的な空間だと感じています。その理由の一つに「教師が多忙である」ということが考えられます。
僕の職場でも、すごく教育に熱心な先生がたくさんいます。担任する子どもたちに愛情を注ぎ、多種多様な教科を教え、遅くまで残業をして毎日懸命に働いています。それは裏を返すと、教師が学校に閉じこもっているとも言えます。社会との関わりがまったくなく、平日は職場と家の往復、休日は家族と過ごすという狭い空間で生きている教師になってしまうのです。
もちろん、こうした働き方を望んでやっている教師もいますが、自分に余裕がなさすぎて社会のことにまで目を向けられないという教師もたくさんいるのが現実です。僕もそのうちの一人でした。
そうなると、今、世界で起きている出来事や10年後の子どもたちの未来や日本の未来なんて到底見ることはできません。任された学級を一年間崩壊しないように保ち、目の前の仕事を必死にこなしているうちは、正直世界観を養う余裕なんてありません。
まさに「木を見て森を見ず」。子どもたちという「木」を育てる時、育て側が社会や世界という「森」をイメージしていないと、質のよい「木」は育てられないと思うのです。
➣教師に必要な世界観とは
新しい学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」の実現が求められました。これはざっくり言うと「子どもたちが、これからの社会を創るために必要な力を学校教育で育てる」ということを意味しています。
「これからの社会を創るために必要な力」とは何でしょうか?
どんな力を身に付けさせてあげれば、社会で力を発揮できる子に育つのでしょうか?
それを知るためには、教師が世界観を高めることが必須です。今の社会のことを、世界のことをもっと知る必要があります。社会で活躍するビジネスマンと教師がタッグを組めるようになれば手っ取り早いですが、自分で学ぶことだってできるはずです。
学校教育の先にあるゴールは「社会」であり「世界」です。そのゴールから逆算するという世界観が、教師としてとても重要な見方なのではないでしょうか。