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全国一斉休校から一年。一年前のあの日のことを記録します

いつも朝一番早く教室に入って来るAくん。

カッとなると手が付けられなくなってしまうのですが、本当はすごく優しくて正義感の強い子なんです。

「おはようございます!」とあいさつをして教室に入ってきます。

その視線は、教室の一番前で学級目標を外す僕に向けられました。

そして、
「やっぱり!本当に終わるんだ!」
と一言。

数秒後、Aくんの目には涙が溜まりました。あわてて下を向いたAくんの目からこぼれ落ちた大粒の涙を見て、僕も目頭が熱くなりました。



一年前の今日、子どもたちに衝撃的なお知らせを伝えなくてはなりませんでした。

全国一斉休校。

あの日から、ちょうど一年が経ちました。


今思い出しても胸が痛む、突然のお別れ。

このクラスは、正直なかなか大変なクラスでした。

それでもやっと軌道に乗ってきて、いい感じで進級させてあげられそうだと思っていました。

3月は学校の一年の中で、一番と言っていいほど大事な時期です。一年間の成長を噛みしめ、友達との別れを惜しみ、次へのステップを踏むエネルギーを蓄える大事な1ヵ月です。

僕も最後の1ヵ月で子どもたちに一年間の成長を存分に味わわせてあげようと意気込んでいました。

その矢先に舞い込んできた一斉休校のニュース。

前代未聞の出来事に、みんなパニック状態でした。

僕も感情の整理がついていなかったのだから、子どもたちはもっと困惑していたと思います。

朝の会で休校を伝える僕の話を、子どもたちはいつになく真剣に聞いていました。

この事実と向き合い、受け入れようとしているように感じました。


不思議なのは、こんなに印象に残っている一年前のこの日に、何をしたのか、どんな一日を過ごしたのかを詳しく思い出せないことです。

とにかくあわただしくて、やることがたくさんあって、バタバタしていたことは覚えています。

そして、ゆっくりと別れを惜しむ間もなく、みんなとのさようならをしました。

伝えたいことの半分も伝えられませんでした。

「本当にもう、これで終わりなの?!」
「こんな終わり方ないよ!」
と、戸惑う子どもたちの声が僕の頭に残っています。

子どもたちだって誰も悪くないと分かっています。やり場のない怒りをどこにぶつけたらいいのか分からないだけです。


たくさんの子どもたちであふれかえる下足箱に降りると、Aくんがひと際大きな声で泣いていました。

僕はAくんの肩を抱き、いくつか言葉をかけて励ましながら一緒に下校場所まで行きました。


子どもたちを見渡すと、表情は様々。

泣いている子や休みを喜んでいる子、いつもと違う雰囲気に浮足立っているような子など、みんな感情を整理できない様子でした。



それから半月後。

通知表や学校においてある荷物を取りに、Aくんがお母さんと一緒にやってきました。

元気そうな笑顔を見せるAくんを見て少し安心しましたが、ふとした時に悲しい表情を見せていました。

懐かしい教室に来て、いろんな思いが込み上げてくるようでした。

お母さんは、
「休校になってこの子はもぬけの殻になったように、体からエネルギーがなくなってしまったんです。食欲もあまりなく、退屈そうにゲームばかりしています」
と心配していました。

Aくんにどうにか立ち直ってもらいたいと願いつつも、僕にできることの限界もありました。

新しい学年でまた頑張ることを誓い、Aくんとお別れしました。

Aくんは今、元気にしているだろうか。

彼ならきっと立ち直れると信じることしかできない自分を、本当に無力に感じています。



僕は教師を続けていく限り、この日を一生忘れないことでしょう。

コロナウイルスは今も多くの人の人生に影響を与えています。

それは子どもたちも同じです。

この一年、学校でも多くの我慢を強いられてきました。

マスク、手洗い、換気、無言、近寄らない、触らない。

辛くて面倒なことばかりです。

現場の先生方も本当に大変だと思います。

1ヵ月後に復帰しますが、学校の生活様式の変化についていけるのか正直不安です。

今の僕には、祈ることくらいしかできません。

みんながくじけないで、この危機を乗り越えられるように祈っています。

この日々が少しでも子どもたちの成長につながることを祈っています。

そして復帰したら蓄えたエネルギーをみんなに分け与えられるように頑張ります。

みんながはじける笑顔で過ごせる日々がくることを信じて。



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