中等度から重度のアルツハイマー病患者の行動症状に対するドネペジル(アリセプト)の有効性~論文紹介~
初めまして。くろと申します。
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。
今回は、アルツハイマー病の薬物療法についての論文紹介をしていきたいと思います。
Gauthier S, Feldman H, Hecker J, et al. Efficacy of donepezil on behavioral symptoms in patients with moderate to severe Alzheimer's disease. Int Psychogeriatr. 2002;14(4):389-404. doi:10.1017/s104161020200858x
目的
中等度から重度のアルツハイマー病(AD)における行動症状の有病率と
ドネペジルによる治療の効果を調べた。
方法
中等度から重度のアルツハイマー病患者290人(MMSEスコア5~17)を
無作為に割り付け、1日1回ドネペジル5mg/日を28日間24週間、その後は10mg/日投与した。12 項目の精神神経疾患インベントリ (NPI) で評価を
行った。
結果
一般的な症状は、無関心/無関心 (67%)、異常な運動行動 (53%)、うつ病/不快感 (52%)、不安 (49%)、および興奮/攻撃性 (45%) でした。
最終観察繰越(LOCF)分析を使用した24週目のベースラインスコアからのNPI個別項目の変化は、すべての項目でプラセボと比較してドネペジル治療の利点が示され、うつ病/不快感、不安、無関心については治療に有意な差があった(p < .05)。
24週目のLOCFでプラセボ治療患者と比較してドネペジル治療で有意に改善したベースライン時に存在する症状には、不安、無関心、および過敏性/不安定性が含まれていた(p < 0.05)。
ベースラインで向精神薬を受けていない患者を個別に分析したところ、ほとんどの来院時と24週目のLOCFで、プラセボと比較してドネペジルでNPI12項目合計スコアの有意な改善が観察された(p<0.05)。
PICO
P:患者・対象者
中等度から重度のアルツハイマー病患者290人(MMSEスコア5~17)
臨床医の判断によるもの (n = 144)、またはプラセボによるもの (n = 146)で
無作為に割付けた。
I :方法、介入
1日1回ドネペジル5mg/日を28日間24週間、その後は10mg/日投与
C:比較対象
プラセボ薬
O:アウトカム、評価
NPI(BPSD評価尺度)
本研究のの主な結果
すべての項目でプラセボと比較してドネペジル治療の利点が示された。
うつ病/不快感、不安、無関心は治療に有意な差があった。
24週後も、プラセボと比較して、NPIの合計点に有意な改善がみられた。
著者らの結論
中等度から重度の AD 集団で観察された程度の行動症状は、ドネペジルで
改善された。
結論
今回の研究では、不安感などのBPSDに対して投与を行ったことでプラセボ群と比較して有意な改善がみられました。
ドネペジル(アリセプト)の作用機序としては、
脳内コリン作動性神経系の顕著な障害に対し、アセチルコリン(ACh)を
分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を可逆的に阻害
することにより脳内ACh量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活するものです。
「効果効能としては認知症症状の進行抑制」です。
おわりに
不安感等の軽減による意欲向上や注意力の向上でADLやIADLにも影響すると考えられます。
ADLやIADL、QOLなどに対しての効果も調べていきたいところですね。
今後の研究が期待されます。