LIFE IS STRANGE2 のこと
これについて書くためにnoteを始めたと言っても過言でない。
ライフイズストレンジ2というゲームの話です。
noteを始めた昨年すぐに取り掛かっていたのに、下書きを繰り返しやっと無理やり形にしました。
1作目も名作ですが、私はたまたまお店で見かけて2作目からプレイし始めました。
「兄弟が2人で力を合わせながら父の故郷を目指す」というストーリーに我が子たち(男児2人)を重ね、なんとなく面白そう〜なんて気軽な気持ちで手に取った。
しかし、私を待ち構えていたのは
とんでもない作品だったのです。
いや、目どーーした!?ってなるでしょ!!!
何があったのか気になりません?
辛い辛い旅路のお話。
これ以降の解説はネタバレを含みます。
「人生にはどうにもならないことがある。それでも自分の選択してきた道が、自分以外の誰かの人生に影響を与えることもある」
ライフイズストレンジは、この「人生」の体験が詰まってるのです。
本来ゲームって楽しんでやるものじゃない?
この作品はやたらと辛い。厳しい。しんどい。
でも、考えさせられるから好き。
ひたすらにしんどい状況が続く
ライフイズストレンジ2(以下、LIS2)の主人公は16歳の高校生ショーン・ディアス。
ディアス家は、父エステバン、ショーン、そして小学生の弟ダニエルとの男三人暮らし。
メキシコ系アメリカ人のディアス家は隣に住む白人男性から人種差別の嫌がらせを受けていたが、ある日弟ダニエルがハロウィンの血糊をイタズラしていて隣人とトラブルに発展。
間に入ったショーンは、男性から「ディアス家の母が家を出ていった過去」を掘り返されたことにカッとなり怪我をさせてしまう。
さらに運悪く、そこを目撃した警官が人種差別の偏見からメキシコ人がアメリカ人を殺害したと勘違いしてパニックに陥り、庭に出てきただけの父エステバンを射殺。
何もかもとことん不幸でしかない。
ライフ、ストレンジすぎる。
地獄のハードモード(涙)
そして、目の前で父が射殺されたことにより突然超能力に目覚めたダニエルは周囲のものを吹き飛ばした拍子に、警官のことを殺めてしまう。
父親も失い、不可抗力はいえ人を殺めた幼い弟と自分はどうしたらいいのか……
近づくパトカーのサイレン。
ショーンは咄嗟に、気絶したダニエルを抱え「逃げ出す」という選択肢を選ぶ。
突然こんなストーリーの始まりで、私はひどく動揺した。
ついさっきまで、学校から帰ってきたショーンは今夜友達のライラたちとパーティーに行くって、楽しく準備してたのに?
このLISシリーズの重要なポイント「超能力の発現」。
1作目とその後の作品(ライフイズストレンジトゥルーカラーズ)では主人公がそれぞれ超能力を持っておりプレーヤーは能力を駆使しながらストーリーを進める。
LIS2では弟のダニエルが父の死をきっかけに超能力に目覚め、あくまで“普通の人間”という立場のショーンを操作していく。
これを「面白くない」とする評価は多い。
でも普通だから面白いんですよ!
「力を持つ人」と「力を持たない人」っていう見方をすると、力を持たないショーンの方が圧倒的に弱者なんだけど、でも力を持つダニエルにその力をどうやって使うべきなのか道徳的教えをしていくことでダニエルは変わっていく。
それって「力を持たない人」が「力を持つ人」に影響を与えているんだから、もうどちらが上とか下とかない。
それがLIS2の醍醐味。
それが「人生」そのものだから。
しかもダニエルはまだ小学生で、善悪の概念が曖昧。
とんでもないパワーを手に入れたことにより、最初は「僕って普通と違うの?」と不安な様子も見せていたけど、次第に自分の力一つで兄の事を吹き飛ばしたり力を持っている特別感みたいなのに気づき始める。
というか、調子に乗ってくる。
ショーンは兄として、ダニエルにその力を「正しい」使い方をさせるのか、それとも身寄りもなく人種差別に苦しみ逃避行を続ける自分たちの生活のために使わせるのかを教えていくのだ。
ちなみに、冒頭から悲しい始まりですが、物語が進むにつれメキシコ系というだけでガンガン差別も受け続けるし、最後までずっとしんどいです。
メキシコに逃亡するために国境を目指し、たどり着いた国境で起きるいざこざもとんでもなく悲しい。
ずっとずっと悲しい。
これが人種差別の問題なんだなぁ…と、自分の知らない世界を知ることになった。
(知ってはいるけど、日本でポヤーっと暮らしてるから海外のニュース見てても感覚が甘い)
自身もまだ16歳でありながら、子育てに奮闘するショーン
父を亡くしたダニエルに、父として兄として一番そばにいる家族として、ショーンは道徳性を教えていくことになる。
そこでショーンのとってきた選択肢が、最終的なダニエルの性格や行動を決めていくのだ。
もはや子育てなんだよ・・・
ちなみにディアス家の母がなぜ家を出て行ってしまったのかはストーリーの後半で判明するのでこちらはこのあと解説するとして、つまりショーンは逞しさを教える父の役割も、優しく包み込む母の役割も全て一人で担いながらダニエルという大変なパワーを持った弟の手を引き続けていく。
まだショーン自身も16歳なのに!!
向こうでは、もう車の免許も取れるし16歳って結構大人として扱われるんだと思うけど、日本でのほほんと暮らす私にとっては16歳なんてまだまだただの「男子」っていう感じだし、我が子がそんな思いをしながら幼い弟と2人で苦労する状況になってたら泣いちまうよ・・・
プレーヤーはショーンを操作しているので、ショーンが年相応に父や母のことを若干「うざいなー」とか思いつつもちゃんと心の奥底で感謝や愛を示しているのがチラチラ見えるところがまた切ない。
親のことを面倒くさいと思いつつも、父の大きな愛に感謝し尊敬している心優しいショーンをきっと誰も嫌いにならない。
どこにでもいる普通の男の子なはずだったんだ。
2人は警察から逃れながら、父の故郷であるメキシコのプエルトロボスを目指している。
そこに何があるのかわからない。
でももう引き返すこともできない。
逃げるために、悪さも重ねてきた。
人の汚さにも優しさにも触れてきた。
とにかく、何が何でもショーンに幸せになってほしい!!!
みんなその一心でエンディングを目指したはず。
ここまでの母親、これからの母親
ショーンとダニエルの母親カレンは、ダニエルが生まれておそらく3~4歳の頃に家を出ていったと思われる。
ショーンたちも、カレンがどうして家を出て行ってしまったのかをよく理解していない。
ただわけもわからず「自分たちは捨てられたんだ」と思っている。
ストーリーの後半になり、ダニエルの力に目を付けて利用する悪徳宗教団体に洗脳・軟禁状態にあるダニエルを助け出そうと一人奮闘するショーンのところに、知人伝に彼らに助けが必要だと手紙を貰ったカレンが突然現れる。
カレンは母親として息子たちの窮地を救うべくやってきた。
それは勿論正しいし大助かりだけど、ショーンもダニエルも突然現れた母と、長年謎だった失踪の理由も聞いて動揺を隠せない。
簡単に言うと「自分の人生を、自分らしく生きたいから」という理由から家を出ていったカレン。
ショーンたちにとっては非常に残酷だし、ショーンも母と再会したときに「好きで産んだのに、愛せなかったのか」「家族を捨ててまで大事にしたいものなんてなんなんだよ」的な怒りをぶつけている。
そうそう、ありえない。可愛い我が子2人を捨ててまで、自分の人生全うしにいくか!?って。
でもこれ育児経験ある母親なら多分「わかるわ~!」ってなる絶妙なキャラクターなんですよね…。
私はショーン大好きなので、そんなショーンに辛い苦しい思いをさせてきた母親・カレンに対しては、最初こそ「急に出てきてナニー!?」って感想だった。
でも何度も何度もこのゲームをプレイしているうちに、母親としての苦悩+人間としての苦悩=自分とは何かっていうのを重ねる瞬間が自分の現実生活で多くあり、カレンの気持ちもわからんでもないな・・・っていう後方母親面に落ち着いた。
子供を捨てていきたい気持ちなんて更々ない。
めちゃくちゃ愛してる。
でも、かといって「自分」を押し殺して残りの人生を終えていくとなると「なんのために自分は生まれたのか?」っていう疑問が付き纏う。
割り切れない何かがある。
自分の役割・存在意義を家族という内側に求めるか、それとも社会という外側に求めるかで、誰しもカレンになりうるんだと思う。
実際、カレンは大ピンチに陥った息子たちを命を賭けても助け出しに来てくれる。
息子たちを愛する気持ちに嘘はないから。
今更都合良すぎるだろ!ってショーンも叫んでたし、大半のプレーヤーもそう思ったはず。
カレン自身もそれは認めてる。
だけど、愛しているから自分を殺し続けるのかといえば、それは必ずしも正解ではない。
ベストエンディングは人によって違う
カレンが家族を捨ててまで自分を探しに行ってしまったことは、世間的にはおかしなことかもしれない。
だけど、ショーンが自己犠牲を払い続けて、ひたすらダニエルに道徳性と良心を叩き込むと到達できる「形式上のベストエンディング」を見た時、私は大きな虚しさを味わった。
確かに、一番良い形ではある。
だけどそこに「ショーンの人生」はあったのかな?って。
“ベストエンディングのショーン”にとっては、それが最善の形だったのかもしれないけどプレーヤーとしては納得できなかった。
プレーヤーが道徳心を持って「良い選択肢」を選び続ける=ショーンがダニエルのために生き続ける、それはショーンの幸せだったのか…?という苦しみが最後にドカッと押し寄せてくる。
ショーンにはショーンの人生があって、いくら大切な弟のためでもそんなに自分の人生を他人のために費やして欲しくないよ!って気持ちになる。
それは、まさに母という立場を捨てていったカレンが選んだ生き方なんだと思う。
もちろんほどほどっていうのがあるはずだから、カレンももっと家庭でうまいことできなかったのか?ってツッコミたくなるんだけど…
でもできなかったからそうなったんだろうし、誰もカレンのことも責められないと、ここで気付くはず。
そしてショーンにもカレンのように「誰か(ダニエル)のためではなく自分(ショーン)の人生を生かしてあげたい」と。
エンディングは大きく分けて4種類。
2人揃ってメキシコに辿り着く
ショーンだけがメキシコに行き、ダニエルはアメリカに残る
ショーンは死に、ダニエルだけがメキシコに行く
2人揃ってアメリカに残る
でもどのエンディングも手放しに喜べるものはない。
個人的には2人揃ってメキシコに辿り着けたエンディングが一番好きだけど、でもメキシコで暮らすダニエルは悪い奴に問答無用でパワーを使うどこか影がある青年になっている…
“形式上ベストエンディング”のアメリカに2人が残るパターンでは、ショーンの人生を犠牲にしたけど、
反対に、メキシコエンディングではダニエルの人生が犠牲になった感が拭えない。
誰かの幸せは
誰かの犠牲と共にある
そんな言葉が浮かび
プレーヤーに重くのしかかる。
どのエンディングを、自分の中でベストと捉えるか人によって変わる。
兄弟2人が揃っていることが必ずしも最高の未来ではないかもしれない。
辛い2人の姿を見て「あー自分たちの今は恵まれてるなー」って感じるのもアリかもしれない。
ただこの作品が、超名作と謳われる一作目と比べるとあまり評価されない点に関して全然そんなことないんだよぉー!と叫びたい。
力を持たない人間でもあなたの選ぶたくさんの選択肢がそばにいる誰かに影響を与えることがあり、人生のどこに比重を置いて生きていくか考えさせられる作品なのです…!
重たくて悲しいストーリーだけど
ぜひ体験して欲しい。