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2024年7月の記事一覧
【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第12話
アオイの想いは、単に姉の婚約者だった義兄という枠を既に超えていた。
しかし、それ以上踏み込むことは出来ない。
姉に対する後ろめたい気持ちや、直人の本心を確かめる怖さなど、15歳の彼女にとって、乗り越えるにはあまりにも高過ぎるハードルだったのだ。
それでも、日々の想いは膨らみ……そして積み上がっていく。
彼女がハードルを越えて見ようと思ったのは、年末の事だった。
「もうすぐ、クリ
【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第11話
高校に進学した彼女は週に2回程度、直人の住むマンションに通っていた。
「まぁた散らかしている」
「おー、すまんすまん」
寝巻き姿の義兄を押しのけ、掃除機に手を伸ばす。
「いくら仕事が夜だからって、ぐうたらしていたら駄目よ」
「肝に銘じます」
「ったく」
しょうがない兄さんね、と言いながらスイッチを押した。
「高校の勉強はどう?」
冷蔵庫を物色中の直人が声を掛ける。
「大丈夫。良い家庭教
【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第10話
姉が死んだのは、中学2年生の時だった。
数ヶ月後に結婚式を控えていた姉は、飲酒運転のトラックが起こしたつまらない事故で、命を落としてしまったのだ。
あまりにも急な別離に、頭が理解出来ないまま、アオイは姉の亡骸に縋って泣いていた。
その時、病室に一人の男性が現われた。
仕事中に訃報を知った姉の婚約者は、動かなくなった最愛の女性を前に、暫くの間佇んでいた。
彼に構わず泣いていたアオ
【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第9話
「アオイを、助けたい」
牛乳パックのストローから口を離して、有夢は言った。
「このままだと、アオイが死んでしまう」
彼女としては、そこまで深い意味を持って発した言葉ではなかったのだろう。
しかし、アオイにとって、その言葉は妙に堪えてしまった。
おそらく、先程の先制パンチが相当効いているのだろう。
彼女は、ふうっとため息を付いた。
あっ、と言いかけた有夢を制する。
「今のは『ためい