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◎完結【週末ストーリィランド】

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」最終話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」最終話

 そう思った彼女の耳に、足元から特大の溜め息が聞こえてきた。

「あーっ、もっと上手く告白すれば良かったぁ〜!」

 大友の叫び声を聞いた有夢は、ふと違和感を覚えて、自分の首にかかったマフラーの色を確かめた。

……2回、確認した。

 何度見ても鈍く輝いているそれを見た有夢は、面倒な表情を隠しながらよいしょっと立ち上がる。

「……次のお仕事、スタート」
 静かに階段塔から降り立った彼女は、両手

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第28話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第28話

「……『昇華』完了」
 首元の鈍い光が消えたのを確認して、有夢は小さく呟いた。

「『ためい気』の素となる後悔が消えた時点で、私の存在を含めた修正前の記憶も消える。でも……」
 彼女は付け加えた。
「アオイは、これで本当に幸せになったのかしら?」

 屋上の階段塔に登っていた有夢は、足元から一組の男女が出てくる様子を眺めていた。
 どうやら男子生徒の方が呼び出した様で、先日の返事はどうなのかと聞い

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第27話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第27話

「……良かったね」
 霊安室の前で、カチューシャだけ外したアオイは、隣の理美を見た。

「何が良いのですか、いきなり未亡人ですよ」
「結婚式の後、すぐにお葬式だもんね」
 理美はクスッと笑った。

「ありがとう、アオイちゃん」
「え?」
 彼女の言葉が、アオイには一瞬理解できなかった。
「あ、別に無理やり着たんじゃないですよ。わたしは本当にナオ兄さんの事好きだし、だから結婚を決めたので、それに……

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第26話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第26話

 集中治療室は、容態の急変した患者の対応に追われていた。

「血圧下がっているぞ、輸血を急げ!」
「心拍数低下、電気ショック用意!」
「くっ、頑張れ、頑張れ!」
 慌しく動き回っていた看護師が、ふと足を止める。

「……先生」
「何だ?」
 何事かと思った医師は、彼女が指差した方向に顔を上げて……固まる。

 彼らの視線の先、
 無菌室の向こう側に、ひとりの少女が立っていた。

 全身を、純白に輝

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第25話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第25話

 そして、14日。

 タクシーから身体を降ろしたアオイは、空を見上げながら小さく息を吐いた。
(それじゃあ、参りますか)

「……アオイ、ちゃん?」

 ロビーに座っていた理美は、入ってきたアオイの姿を見て、大きく目を見開いた。

 アオイは無言のまま、小さく頷く。

「まぁ……何てことでしょう……」

 理美は、思わず目頭を押さえた。
 そこからは、悲しみだけではない泪が、ひたひたと零れ落ちて

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第24話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第24話

「明日かぁ……」
 夜空を見上げながら、アオイは病院から自宅へと向かっていた。

 本当は毎日泊まって行きたかったのだが、理美は頑として受け付けなかった。
「親御さんが心配するから、ちゃんと帰りなさい」
 そう言って叱り付ける姿は、まさに母親のそれだった。

 アオイは、自分の母親が嫌いではない、むしろ大好きだ。
 だからといって、理美と比べたりは決してしない。
 二人とも、全てを理解した上で、ア

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第23話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第23話

「理美(さとみ)さん、これはどこに置きましょうか?」
「あ、こちらにお願い」
「はぁい」
 水を取り替えた花瓶を、窓際の棚に置いたアオイは振り返った。
「次は、床の掃除ね」
「了解」

 二人が綺麗にしているのは、直人が数日前まで居た一般病室。
 本人は集中治療室に居る為、現在は利用していないが、必ずここに戻って来るという思いが、彼女たちを動かしていた。

 直人の母親は、アオイに自分の事を『お母

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第22話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第22話

 明かりの消えたロビーの一角に、小さな湯気が立ち昇っていた。

「落ち着いた?」
 ポットから注がれたコーヒーを受け取って、アオイは鼻をすすり上げた。
「ヒトって、あんなに涙を流せるのですね」
 なにしろ、4か月分まとめてだ。
「……ホントにね」
 直人の母は、少し笑顔を見せた。

 その横顔を見て、アオイは(強いなあ)と思った。
 彼女の場合、直人はいきなり帰らぬ人となっていた。
 それも辛かっ

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第21話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第21話

 集中治療室の中の直人は、眠っているだけのように見えた。

 しかし、彼の周りを取り囲んでいるおびただしい機器類が、避ける事が出来ない現実を物語っている。

「話しかけても、いいですか?」
 医師が頷くのを見て、彼女は直人に向き直った。
「ナオ兄さん、久しぶり。アオイだよ」
 努めて明るく話し掛ける。
「この前はゴメンね、急に帰ったりして。部屋にもいかなくなっちゃって……」

「私、ずっと謝りたか

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第20話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第20話

 直人の入院している病院は、彼の住んでいたマンションから二駅離れたところにあった。

「アオイちゃん!?」
 ロビーに降りて来た直人の母は、アオイの姿を見て狼狽した。
「どうしてここが?」
「聞いたんです」
「……そう」
 彼女は、軽く肩を落とした。
 おそらくアオイの母親から聞いたと思ったのだろう。

「隠しているつもりは無かったの。でも、直人がアオイちゃんには言わないでって」
「そんなに、悪い

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第19話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第19話

(……う……ん)
 暗がりの中、アオイは薄目を開けた。

 暫く経って、周囲の状況がはっきりしてくる。
「私の、部屋?」
 ベッドに横になっていたアオイは、起き上がってみる。
 カーテンの隙間から覗く光は、早朝の雰囲気だ。
 窓際に駆け寄って、彼女は自分が制服のまま寝ていた事に気付いた。

「今日、何日なのだろう?」
 部屋を出たアオイは、予想外の寒さにぶるっと身を縮ませた。
 勢いで玄関に出た彼

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第18話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第18話

「……ポイント還元、って訳?」
 半信半疑で聞いていたアオイだったが、その視線は有夢の首に巻かれたマフラーに移っていた。

 先程まで普通の毛糸編みだったそれが、いつの間にか真珠色の鈍い光を放っている。

 現実と非現実の区別が無くなり、平然とリストカットを続けてきた自分でさえ、目を疑う様な現象だ。
「ただの詐欺師じゃなかったんだ」
「あ、酷い。むー」
 むくれる有夢を見て、アオイは思わず笑った。

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第17話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第17話

「……以上が、わたしの『ためい気』の原因」
 一気に喋ったアオイは、色々なものを振り払う様に頭を左右に動かした。

(えい、えい)

 こうすると、記憶が片隅に追いやられていく気がするのだ。

「分かった」
 表情を一つも変えずに聞いていた有夢。
 リアクションの薄さに、拍子抜けしているアオイを無視して言った。
「それで、どうする?」

「どうする、って?」
 訳が分からない彼女に、有夢は説明した

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【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第16話

【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第16話

 1か月半の闘病生活が嘘の様に、直人はきれいな顔をしていた。

「末期の●●癌でした」
 医師の言葉を、アオイは機械的に受け止めていた。

「自分では、手遅れって分かっていたのね。だから、アオイちゃんにも話さないで」
 面識のある直人の母親が、ハンカチを握り締めながらポロポロ涙を流していた。
「あの子、本当に喜んでいたのよ。最愛の人は無くしたけれど、これからは愛する事が出来る可愛い妹が出来たってね

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