お金もモノも同じこと。需給をコントロールするための金融政策を
日本はコメの自給率が100%である。
ここで、仮にコメの消費量が激増し、100%を割りそうな場合、どうするか。
1つには、コメを輸入するという方法がある。ただし、これは自給率100%を放棄することになる。
自給率100%を維持したいなら、コメを増産する必要がある。作付面積を増やすか、生産効率を上げるかしてコメの生産量を増やさなければならない。
同じことは、お金にも言える。日本で、日本円の需要が増して不足しそうになったら、どうするか。
ドルやユーロなどの外貨なら貿易をするなどして外国から「輸入」する方法しかないが、日本円ではそれはできない。日本円は自給するしかなく、となれば、日本円を増産するしかない。
ただ、日本円の増産は、コメなど比較にならないほど簡単である。発行元たる日本銀行が、多めにお札を刷ればいいだけである。
政府にお金がないなら、日本円を増産し、借用証でも取って政府にお金を貸し出せばいいのである。借用証にあたるのが国債である。こうして日銀が「増産」したお金を政府が使い、回りまわって企業や個人にもお金が入る。
これが積極財政と金融緩和の合わせ技である。
難しい言葉など、ひとまず覚えなくてもよい。お金が足らなければ日銀がお金を刷って(=金融緩和)、刷ったお金を政府が使う(=積極財政)だけである。
ただ、1つ気をつけなければいけないのは、無制限にお金を刷っていいわけではないということだ。
コメの場合、不足していた分より少しは多めに増産してもいいかもしれない。コメが多ければ、それだけ消費量も増えるかもしれない。が、無制限に増産してしまってはコメ余りとなり、価格が暴落する。
お金もこれと同じで、足らない分より多少は多めに刷ってもいいが、あまりに多すぎると日本円が暴落する。
が、今のところ、日本円暴落の兆候であるインフレは起きていない。企業物価は上がっているようだが、消費者物価は上がっていない。企業が仕入れ値を価格に転嫁できていないということで、まだまだ、インフレには程遠い状況だ。
かつ、国債の金利は相変わらず低いままだ。これはコメでいえばまだまだ価格が高いままということだから、やはり暴落には程遠いと言える。
つまり、お金だからと言って何も特別なことを考える必要はない。不足したら増産する。過剰になったら減産する。そうやって需給をコントロールする。ただそれだけのことである。
そして、今の状況はお金が不足しているのだから、もっと日本円を増産して金融緩和すべし、という結論になるのである。