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入院
2008/09/09
(この記事は2008年のものです)
母のいるホームの看護師の判断で、昨日ドクターSに往診してもらった。母のお腹があまりにもパンパンで、しばらく便も出ていないから。ドクターSは、腸閉塞の疑いもあるとして、母が入院していた病院に連絡をとり、母を搬送することに決めた。
私は昨日の昼間、ヨガを終えてトイレを済ませ、さあ帰ろうとしていたところへ姉から携帯に電話。急遽新宿からタクシーで、中野へ向かった。
ホームの介護スタッフと運転手のおじさんが病院で待っていてくださる。ホームの介護車で母を病院まで連れてきてくださった。介護士が医師に、最近の症状を説明してくださったとのこと。
腸のCTを撮ると、母の腸管はパンパンに腫れあがっているという。水分とガスが大量に溜まっていると説明を受ける。早速別の場所に移って、大腸へスコープを入れ、中のガス等を出す処置をする。
「入院です」と医師は言うので、ホームの方に母の車椅子と共に、いったん戻っていただいた。「あとで入院に必要なものをもう一度こちらまでお持ちいたします」とおっしゃる。おお、そこまでしてもらえるのか。感謝である。もちろん今回付添料として、きちんと料金が発生していることは知っているが。
母はなかなか出てこない。1時間半は待っただろうか。担当の内科医が出てきて「1リットルの便を出しました」と説明される。ガスと便を出してとりあえずお腹はぺちゃんこになったけれど、それでもまだ、S状結腸のあたりまでしかいっていない。全体の6割だという。閉塞などはなさそうだけれど、あまり無理をすると腸管を傷つける恐れがあるので、後日また行うとのこと。
「放っておいて腸管が破裂したら、すぐオペになっちゃいますからね」って医師は言う。ガスと便で腸管破裂だなんて、そんなこと、あるんかな。母は食事も水分も摂っていないので、点滴をしている。そうでなくても最近、ほとんどまともな食事をしていない。
病室に案内された母は、再び絶望する。
「またココに舞い戻ってきちゃった」
病室の階が違い、今度の部屋はずいぶんおしゃれで綺麗な部屋だ。以前は産婦人科病棟だったという。部屋のドアもピンク色だ。
おしっこが2回も出ちゃったから、看護師を呼んでと母は言う。無理を承知で傍にいた看護師に訊いてみると、案の定きっぱりと「時間が決まってますから!」と言われてしまう。老人が多いこの病院で、ひとりひとりにオムツ替えなどを対応していたらとても手が足らない。介護施設と病院の違いだ。
神経質で眠りの浅い母はホームで、夜中におしっこが1回出るたびにコールして、オムツのパッドを交換してもらっていた。なんという贅沢。
「お母さん、オムツはね、おしっこ4回分くらい漏れないようにできてるんだから、大丈夫なんだよ」と安心させようとするが、それでも母は絶望的な顔をしている。仕方無い、病院なんだから。
「○○さんがね、ホームを出る時泣いてたの。ゆびきりしたの。きっと帰ってきてねって…」と言って、母は目に泪をいっぱいにためる。「大丈夫だよ。点滴して身体が少し元気になって、腸の具合が良くなったら、すぐに戻れるよ」
最近母の前で私は、無意識に仕事モードにスイッチを切り替えるようだ。だから母の泪を見ても、泣かずにいられる。ギリギリでセーブして、きちんと言葉を返すことができる。鍛えられたと思う。
スタッフが入れ替わり立ち替わり部屋に来て、なんやかやお世話してくれた快適なホームから一転、母はしばらくまた、監獄に入った気分だろう。私たちもまた、とりあえず少しの間(と期待する)、病院通いの日々が始まる。