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枯れ枝
2008/08/05
(この記事は2008年のものです)
母はすっかり痩せてしまった。
…って、また母の話題かぁ…。まあ仕方ないかな。
そう、母の身体はすっかりやせ衰えてしまって、枯れ枝のようなのである。私がものごころついた頃には、母はもうふっくらとしていて、若い頃には痩せていたというけれど、私は母が痩せている姿は、最近まで見たことがなかった。
母は食事をほとんど食べたがらなくなった。「鶏肉? いらないっ!」って言う。「鶏肉じゃなくてお魚よ」と言うと、母はもっと食べたがらない。ご飯を小さく数口食べさせると、「もういい」と呟く。お味噌汁も「もういらない」おかずを見せると、「まだそんなにあるのっ!?」と不機嫌に言う。
「お食事はどれくらい召し上がりましたか?」と訊ねに回ってくるナースに、今度から半粥にしてくれるようお願いした。
一昨日はずいぶんおさまっていた妄想や幻覚が、今日はまた再び盛り上がっている。薬の量を調節しているのかもしれない。そういった細かい話を、直接ドクターに聞きたいのだけれど、なかなかタイミングが合わなくて、聞くことができない。
母は明日の病院の朝食が「おにぎり2個なんだって」と言う。業者と婦長さんが話しているのを聞いたとかで、「いやよ。今晩のうちに握ったおにぎりなんて。腐っちゃうもの」と言っている。「だから明日の朝は食べないって決めたの」
「どうしておにぎり2個って判ったの?」と訊くと、壁にかかったカレンダーの写真を見つめて、「だってあそこに顔がふたつ見えるもの」と、確信に満ちた声で言う。
カレンダーの8月の写真、砂丘の上を駱駝が歩いている遠景を見て、お相撲さんの顔だと言い張る。顔が2つあるという。
母はもともと依存的な人なので、いったん何かを受け入れてしまえば、どんどん甘えていく人である。自分で取り組む気持ちを失くしてしまう。もうオムツも嫌がらないし(嫌がったところでどうにもならないことを知っているからでもあるが)、歯磨きする時も、歯ブラシを握ろうという気もなくなった。お箸を持とうという気もなくなった。咀嚼するという気がなくなったら、今度は流し込むだけになってしまう。胃ろうということか。
明日は仕事が休みの姉と昼間病院へ行って、医師とコンタクトをとろうと思う。
薬と症状の実際について。
今後の栄養対策について。
退院の目処について。