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Meet Your Barista: Kuri 朝が好きで始めたバリスタ、世界を巡った彼が届けたいピースフルなコーヒー

京都のコーヒースタートアップ「Kurasu」では、多様なバックグラウンドを持つメンバーが活躍しています。コーヒーの街メルボルンの名店で経験を積み、現地の競技大会で結果を残してKurasuにジョインしたKuri(Kuribayashi Takuya)。その輝かしい実績とは裏腹に、彼は「朝に働くのが好きだからバリスタを始めた」とシンプルに語ります。今回は、カフェというピースフルな空間に魅了され、バリスタとして歩み始めた彼がKurasuチームに加わるまでのストーリーに迫ります。


—— Kuriさん、はじめまして。まずは自己紹介をお願いします!

2024年の秋からKurasuにジョインしたKuribayashi Takuyaです。コーヒー業界には約7年間携わってきて、福岡、長崎、ニュージーランド、直近2年間はオーストラリア、メルボルンのMaker coffeeというところで働いていました。学生時代、ちょっと背伸びしてフレンチの高級レストランでシェフのアシスタントをしていたことがあります。そのとき「たくやの味覚は正確だね!」という一言に嬉しくなり(笑)それから、カッピング大会を意識的に参加するなど、コーヒーを本格的に楽しむようになりました。昔も今も、食に関することが大好きです。

海外で見つけた答え、バリスタという職業の可能性

——コーヒーを好きになったきっかけはありますか?

大学1年生のときにシアトルに短期研修に行きました。現地で飲んだ飲み物は僕にとって少し甘すぎると感じるものが多かったのですが、そのとき初めてスターバックスでブラックコーヒーを飲んで、「ブラックコーヒーって美味しいかも」と感じたのがコーヒーとの出会いでした。

研修を終え帰国した後、学業と並行してアルバイトをしようと思ったときに、自分が朝型なのもあり、朝に仕事を入れて生活のリズムを整えたいと考えました。そこで思い浮かんだのが、スターバックスでした。コーヒーショップという場に憧れを感じたことも、選択の理由の一つでした。

スターバックスで働き始めてからは、コーヒーショップが提供する空間そのものの魅力を強く実感しました。「お客様にとって居心地の良い空間をつくる」という「スターバックスらしさ」に触れる中で、バリスタとしてのキャリアを築いていきたいという思いが芽生えたのです。

短期研修プログラム中、シアトルのスターバックスで撮った写真

コーヒーショップが提供する空間が自由でピースフルだと思ったんです。友人と雑談をしてもよし、一人で本を読んでもよし、家でも職場でもないサードプレイスのような機能性も好きです。そういう空間を眺めていると、自分も心が穏やかになり、エネルギーをもらうんです。

——ニュージーランド、オーストラリアと海外でバリスタをされた経験もありますが、もともと海外には興味がありましたか?

両親が英語教師というのもあって、もともと海外志向でした。また、大学でも国際系の学部で学び、ゼミの半分は留学かワーキングホリデーをするような環境にいたことも大きかったなと思います。

スターバックス時代の写真

なぜニュージーランドを選んだかというと、ラグビーが大好きだったことに加え、バリスタとしての経験があったので、仕事も見つけやすいだろうと感じたからです。ニュージーランドには、世界的に有名なラグビーチーム「オールブラックス」があり、ラグビーファンにとっては憧れの場所でもあります。それだけでなく、コーヒー文化も非常に盛んで、オーストラリアと並んでフラットホワイト発祥の地とも言われています。違う環境に飛び込むときって、計画通りにいかないことが前提のようなものですが、そんな流動的な状況の中でも、自分自身の経験を土台に柔軟に対処して、きっと楽しめるだろうと思えたのがニュージーランドでした。

当時は、バリスタになるというより、英語を磨くためにワーホリに行ったのですが、そこで初めて、アルバイトではなく、プロフェッショナルな生業としてバリスタを選択して生きている人たちに出会いました。一つ答えが増えた感覚がありましたね。きっと、そのとき増えた選択肢が、このあと話すオーストラリアでの挑戦にもつながったと思います。

ニュージーランドで撮影した思い出の一枚

ニュージーランドの景観は、坂が多く、海が近いことから、どこか地元の長崎県を思い出させるような心地よさがあります。そのほか、シアトルも坂が多い街ですが、そういった地形の中で隠れた個性的なコーヒーショップを巡るのは本当に楽しいものです。そんな街並みが広がる場所で、ローカルに根差してバリスタとして働くのか、それともキャリアアップを目指して、都市部で活動するのか。景色や環境は、ただ心を掴むだけでなく、自分の選択や方向性にも大きな影響を与えると感じます。

坂と海がある街に住むのは、自分の心にしっくりくるものがあります。それとは対照的に、オーストラリアのメルボルンや、今いる京都のような場所は、より多くの人と出会える環境で、コーヒーの仕事をする上では非常にチャレンジングなフィールドです。それぞれの街が持つ景色や文化、出会いの違いが、キャリアや価値観に大きく作用する中で、どこでバリスタとして働くかという選択も、その時々のタイミングや価値観によって変わってくるのだろうと感じています。

ニュージーランドの街の雰囲気が感じられる一枚

Geekな心、夢中になることを求めて


——大学卒業後は、すぐにコーヒーの仕事を始められましたか?

大学卒業後、東京に移り、新卒で入社したIT業界の大手企業でソフトウェア・ハードウェアの営業をしていました。当時は、新卒でそのままバリスタになるイメージがなかったので、ひとまず就職をしました。ただ、コミュニケーションを取ることは好きですが、営業職は自分には合わないと感じたんです。

IT業界って、コーヒー業界と似ているなと思います。一言でいえば、Geek(特定の分野において深くのめり込んでいる人)な人たちが集まる傾向にあるんです。

ニュージーランドで見たバリスタたちは、コーヒーに夢中になることで人生を楽しくしているのだと感じましたし、新卒入社した会社では、IT Geekたちが仕事を通じて人生を楽しんでいるように思いました。そういった環境で過ごす中で、「自分の場合、ITの世界では自分自身のGeek性を引き出しきれないかもしれない」と感じるようになりました。

一方、スターバックスでの経験を思い出すと、コーヒーの世界では自分のGeek性が自然に発揮できていたことに気づきました。コーヒーとIT、似た特性を持つ業界を両方体験することで、自分が本当に好きで夢中になれるのはコーヒーだと改めて実感したのです。

好きなことに夢中になれば、結果にもつながる。そういう、すごく自然で良い循環を生みたいと思いましたね。個人の自己実現と会社の成長がマッチすると良いな、とも思いました。

あと、当時も休日はPassage Coffeeによく通い、Small Talkをしたり、彼らはやっぱりコーヒーが好きでやっているんだなというGeekさにインスパイアされたりしました。コーヒーって不思議と離れてからも、何らかの形で自分の暮らしに関わっているのが良いなと肌で感じました。

——「夢中になることを探す」という感覚にすごく共感できます。退職後はどうされましたか?

一社目を退社した後は、コロナの影響もありましたが、地元の佐世保に戻り、HAPPY TRAILS COFFEEに転職し2年間勤めました。エスプレッソマシンがあったので、オーストラリア渡航前のいい腕試しになりましたし、新店舗の立ち上げから関われるということで、オペレーションやマネジメントの部分で携われるのも魅力的でした。コーヒー業界に長く勤めている方だと共感する内容だと思いますが、「コーヒーを淹れることが好きだからこそ、バリスタ以外の仕事も任される」ということもあると考えて、バリスタ+αで自分はどうしたいのか、考える時間にもなりましたね。

その後、オーストラリアで2年間過ごしました。家探し、銀行口座開設、仕事探しなど、ワーキングホリデーに行くとスリリングなことがたくさんありますが、運よくMaker Coffeeでバリスタとしてスタートを切ることができました。

スペシャルティを追求する環境に身を置く

——オーストラリアで過ごした2年間の話をぜひ聞かせてください。

Maker Coffeeは、コーヒーのクオリティを優先的に考えているお店で、プロフェッショナルなバリスタとしてスペシャルティをここまで追求した経験は初めてでした。1日で300-400杯は出るコーヒーショップで、バリスタ3人でオペレーションを回すような環境でした。そんな中でも、ミルクのスチーミングを3杯分同時にすることで、少しスチームが甘かったりすると作り直しをされるお店でした。同期のバリスタにもQグレーダー(国際コーヒー鑑定士の資格)を持っている人がいたり、コーヒーの素材そのものへの理解がとても深い人がいたり、刺激を受ける環境でしたね。

3杯分同時にミルクスチーミングをするような忙しい時間帯に撮った一枚

また、メルボルンの少し外れにある店舗だったので、オーストラリア英語のネイティブスピーカーしかいない中で仕事をすることになりました。言語的なハードルを感じる環境の中で、仕事ではプロフェッショナリティが求められ、緊張感のある日々でしたが、今思うと貴重な経験でした。バリスタとしての修行期間を聞かれたら、きっとMaker Coffee時代のことを挙げると思います。

メルボルンの風景

メルボルンという街のコーヒーシーンは日々、目まぐるしく変化していて、とても活気にあふれています。パブリックカッピングもあらゆる店舗で開催されていて、日本人だけで集まってカッピング会を開くこともありましたし、休日の朝に知り合いのバリスタがいる店でコーヒーを飲んで、その夜またカッピング会に参加する、そんな日常がありました。

↑ Kurasu Ebisugawaでも開催し始めたパブリックカッピング。インスタグラムでご案内していますので、ご興味ある方は参加してください。

緊張感はありましたが、そんなチャレンジングな環境に身を置くと、自然とあまり構えず、大会に参加できるようになりました。オーストラリアのローカルな大会でエスプレッソ部門でオーストラリア国内2位、カッピング部門でメルボルン1位になれました。結果だけを見るとものすごくストイックだったように思われるかもしれませんが、環境が良かったので、楽しく挑戦できる渦の中にいたなと感じています。

オーストラリアで開催されるローカル大会の様子

コーヒーという、まだ発展途上中の業界でキャリアを積む上で、ブランド力のあるお店で働く経験が重要かもしれないと思いました。ブランド力のあるお店の中には、それ相応の厳しい基準やプロフェッショナルなサービスが求められることが多く、それに応える中で自然とスキルや視野が広がる傾向にあると思います。

規模の大きなお店では、一人ひとりがコーヒーに向き合う姿勢を語りづらいことが多いし、ブランディングが矛盾を生むこともありますが、Maker Coffeeでは環境的にも自分の中で納得のいくピリオドを打てた感覚があります。今いるKurasuでも、自分を含め、働く一人ひとりのバリスタがそういう納得感や誇らしさのもとに仕事を楽しみ、次のステップにつながる、そんなポジティブな流れもあるんだろうなと思います。

Maker Coffeeのボスと撮影した写真

Geekでピースフルな仲間と描きたいロールモデル

——充実した時間を過ごされたんですね。Kurasuに入社するきっかけは何でしょうか。

帰国後、Kurasuに入社したきっかけは、いろんな種を蒔いている会社だと思ったからです。自分が育てられるものが必ずあるだろうと感じました。自分の中では、コーヒー+αの「α」の部分をKurasuの中で見つけたいという感覚がありました。

Kurasuはいろいろなプロダクトを取り扱っていて、マーケティングやブランディングなどコーヒー以外のバックグラウンドを持つ人たちが集まる、とても貴重な環境だと思います。一方、最近は夷川店に立つことが多いですが、ここは多様なコーヒー器具を実際に試せる場でもあり、Geek的な好奇心を満たすには絶好の環境です。

多様なバックグラウンドを持つ人々が集まることで生まれる「コーヒーとの適切な距離感」と、プロダクトにこだわり抜く「深掘りできる楽しさ」の両方を併せ持つKurasuは、とてもバランスが良く、ピースフルな場所だと感じています。コーヒーをGeekに追求する面白さはもちろんありますが、それだけではなく、違う選択肢も尊重される環境があることが大切です。

おそらく、コーヒーを仕事にする方々の多くが「常にコーヒーを仕事にするということは何か?」と考える時間が多いのではないでしょうか。そうやって考えさせられる時間が多いからこそ、コーヒーを仕事にする人は面白いし、そこに魅力があるのだと思います。これからの10年、新しいキャリアのロールモデルになりうる、自分なりにレンガを積み上げている人たちが、今Kurasuには集まっている気がします。僕らの世代のバリスタがこれから努力して背中を見せることで、様々なコーヒーとの関わり方が登場し、より豊かな人材が集まると思いますし、僕自身も「α」の部分をKurasuの中で見つけ出したいですね。

Kurasuは、一緒に働く仲間を募集しています!

Kurasuでは、コーヒーを通じて人々の暮らしを豊かにし、笑顔溢れる社会を実現するビジョンに共感するメンバーを募集しています。

一人ひとりの情熱と知識を大切にし、自由な発想と責任感を育む環境のなかで、生産者から消費者まで、コーヒーに関わる全ての関係者とのつながりを深める経験が得られる、そんな場所です。

変化を恐れず、新しい価値を追求し、市場の変化に対応するKurasuで、コーヒー産業のグローバルリーダーとして共に成長しましょう。