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Meet Your Barista: Yopi – ゆっくりと急いで、十人十色にもう一色を添える
京都のコーヒースタートアップ Kurasuでは、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが活躍しています。京都店で活躍するバリスタのYopi(よっぴー)。彼女のスチーミング技術を見ると、「この人が淹れてくれたラテは美味しいに違いない」と思わせる確かな腕前を持っています。しかし、実はコーヒーに限らず、音楽にも知見が広く、センスが際立っています。実は、音楽大学を卒業し、市役所、ワーキングホリデーを経てスペシャルティコーヒーの世界へたどり着くという多彩なキャリアの持ち主。そんな彼女がKurasuチームに加わるまでのストーリーに迫ります。
—— Yopiさん、はじめまして。まずは自己紹介をお願いします!
こんにちは、バリスタのYoshida Saoriです。Yopiと呼んでください。2024年の夏からKurasuでバリスタとして働いており、主に京都店にいます。実は、後ほど話に出るかもしれませんが、以前KurasuにいたバリスタのArisaさんと勤めていた店舗が重なっていたんです。それから、オーストラリアでバリスタをしていたこともあって、ラテが好きなんです。掘れば掘るほどエピソードが出てくる人ですよ。
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好きだからこその決段、距離をおいて見えた道
—— それは楽しみです!ぜひ詳しく教えてください。音楽大学を卒業されたと伺いましたが、コーヒーに出会うまでのキャリアについて教えていただけますか?
小さい頃からピアノを習っていて、中学校では吹奏楽部に入ってクラリネットを始めました。受験生になった頃、両親から「大学には行ってほしい」と言われていましたが、当時の私は正直、「大学って勉強が好きな人が行く場所だよね。でも私はそこまで勉強が好きなわけじゃない」と感じていたんです。4年間という時間とお金を費やすので。だからこそ、少しでも自分の「好き」に近いものを学びたいと思い、音楽大学への進学を決めました。当時から、物事に対して必要ならしっかりと疑問を抱くタイプだったかもしれません。
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—— 音楽大学で過ごされた4年間はどうでしたか?
音楽大学に行かなかったらできなかったことがたくさんあり、かけがえのない時間を過ごすことができました。しかし、「音楽を仕事にはしない」と決断できた時間でもありました。音楽に限らないと思いますが、好きなものを嫌いにならないための距離感っていうのはあって、不思議と「業界」って言葉がつくと一気に閉鎖的になるような気もして。否定はしませんが、私は音楽を楽しく、好きでいたかったんです。後ろ向きではなく、前向きに「やらない」という決断をしました。
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—— 好きだからこそ嫌いになることもあれば、嫌いだけど好きになることもある。好きでいるための距離感ってありますよね。
だからこそ、それでも続けている人へのリスペクトをしています。大学卒業後は、音楽ホールのバックオフィスメンバーとして、音楽イベントの企画・運営などの仕事をしました。公務員ですね。好きな音楽に関わる仕事をしながらも、無理なく好きでいられる距離感を保てる素敵な環境で、3年勤めてから市役所の公民館の部署に異動しました。市民講座の運営もしている部署、そこでも演奏会の企画などをしていましたね。
市役所の中でいろいろと経験をしたのですが、20代後半になり、キャリアチェンジを考える時期が来て。そこでタイミングよく、海外に長期旅行にいくことを決めていたこともあり、「思い切って飛び出してみよう」と考えるようになりました。
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そのときはロンドンに渡航したのですが、ロンドンから帰る飛行機の中で、親友に「私、ワーホリしてくるわ」とメッセージしていて(笑)そういうエネルギーが湧き出るタイミングってありますよね。今もなぜそんな思い切ったことができたのかはわかりません。開放感だったのかもしれませんが、失敗を恐れずにチャレンジできる状況が、ちょうどいいタイミングで整っていました。
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異国の地で磨いた技術と経験
—— 思い切るには、ちょうど良いタイミングだったんですね。
ワーキングホリデーの行き先はオーストラリアにしました。最初からバリスタを目指してオーストラリアに行こうとしていたわけではありませんが、コーヒー文化が有名なことや、もともとコーヒーを飲むのが好きだったこともあって興味を持つようになって。それに、当時は英語もまだ得意ではなかったので、飲食の仕事をするならスキルが必要だなと思い、ラテアートやスチーミングを覚えようと決めました。
そんなことを考えながら渡航資金を貯めているとき、ちょうど新型コロナウイルスが流行して、ワーホリのスケジュールを見直すことになり、時間に少し余裕ができました。そこで、まず日本でバリスタとしてデビューすることになったんです。その後、オーストラリアで2年間過ごし、2024年の6月にKurasuに入社しました。
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—— 興味深いですね。いろいろなキャリアの積み方がある中で、Yopiさんのような経験は、多くの人の参考になりそうです。オーストラリアでの2年間はどのような時間だったのでしょうか?
2年間、バリスタをしていました。最初は語学学校に通いながら、オーストラリアでは珍しく夜22時まで営業しているドーナツ屋さんで働きました。そこでエスプレッソマシンを触る機会があり、やっぱりスチーミングの技術を磨く手は止めたくないと思って、その後の職場でもバリスタを続けました。その後、「スペシャルティコーヒーの都」と呼ばれるメルボルンにも行きました。メルボルンには日本から来ているバリスタも多く、コミュニティやパブリックカッピング会も盛んです。ただ、実は天気が自分に合わなくて……(笑)海外で挑戦するバリスタたちにも、それぞれ目指しているものや方向性があり、その分努力の仕方も多様だということを、ぜひ伝えたいです。詳しく話していると長くなりすぎるのでここでは深く語りませんが、リアルな経験がたくさんできたので、興味がある方はぜひ直接聞いてみてください。
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—— 気になります……また今度、詳しく教えて下さい!
変化の先に今がある、今の楽しさから明日が生まれる
—— ワーキングホリデー期間を終えて、Kurasuに入社するきっかけとなったのはなんですか?
実は、Kurasuに以前勤めていたArisaさんと同じ店舗で働いていた時期がありましたし、日本にいる時期にはKurasuでコーヒーを飲みに行ったこともありました。Kurasuはプロフェッショナルな姿勢をしっかり意識しながら、コーヒーを主役にしつつも、お客様やプロダクトなど、コーヒーを広い視野で捉えているところが好きでした。だから、もし帰国のタイミングでKurasuが求人を出していたら、ぜひ入社したいと考えていたんです。
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そんなことを思っていた矢先、ちょうどKurasuの募集が出ていて、実は最初の面接はオーストラリアから遠隔で受けたんですよ。
—— キャリアのお話を聞いていると、いろいろな変化を経てきて「やっと一息」みたいな感じも受けるのですが、この先Kurasuでチャレンジしたいことはありますか?
Kurasuでは、多様なバックグラウンドを持つ仲間たちとディスカッションを重ねる文化があります。それぞれが異なる場所でバリスタとしての腕を磨いてきたこともあり、良い意味で多様な視点が交わり、新しい発見がたくさん生まれます。
オーストラリアでバリスタをしていた頃は、忙しい店舗で技量を磨く機会には恵まれていましたが、じっくりと知識を深める時間がなかなか取れないことに悩むこともありました。Kurasuではチームで協力しながら取り組む環境が整っており、トレーニングの時間も確保されているので、現場での経験を大切にしつつ、さらに専門的な知識やプロフェッショナルな視点を深めていきたいと考えています。
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また、いろいろな経験を経て身についた感覚かもしれませんが、将来のことをあまり深く計画しすぎず、今この瞬間を楽しむことを大切にしています。バリスタとしてキャリアを積む中で、カフェのマネジメントに進んだり、現場での知識と経験を活かしてプロダクトに携わるといった選択肢も考えられます。ただ、そうしたチャンスが訪れたときや、自分がその選択を決断するタイミングが来たときに、今を充実させていれば、きっと良い方向に進めると信じています。「チャンスは準備された心に降り立つ」という言葉を大事にしながら、そんな感覚で毎日を過ごしています。
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さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが活躍するKurasuだからこそ、Yopiさんのキャリアストーリーは、多くの人に勇気を与えるのではないでしょうか。十人のバリスタがいれば十通りの答えがある、それぞれの「十人十色」の中で、彼女らしい色が一際輝いています。
ぜひ、一度彼女が淹れるラテを味わいに足を運んでみてください。そして、彼女がおすすめするコーヒーと音楽を深掘りする新連載「コーヒーとバリスタと音楽と」が、Kurasuのウェブサイトで近日公開予定です。どうぞお楽しみに!