脂の海を転写する
お弁当の強い味方、冷凍シュウマイ。朝のあわただしい中レンチンで一品できる魅力は大きい。
レンジからお皿を取り出して、シュウマイを無事にお弁当箱に移すと、お皿には肉汁の海が残る。
美味しそうなエキス、もったいないなーと思いながらお弁当を完成させる。
そのお弁当を持たせて子どもを送り出して洗い物に戻ると、肉汁の海は流氷よろしく、真っ白な脂の層を浮かべている。
毎度思うがすごい脂である。
この脂どうしてくれよう。
以前ならお箸でつかんで紙にとり、ちぎれてうまく取れなかった部分は布で拭き取っていた。
ただ、拭いても拭いても脂の筋はなくならない。ベタベタと脂の広がったお皿を洗うのだった。
でも今はその脂の処理がちょっとしたお楽しみになっている。
脂の海をビニールに転写するのだ。
使ったラップでも、スーパーでもらった水濡れ防止袋でも、野菜の入っていた袋でも、なんでもいい。手近で目に入ったビニールを脂の上からそっとかけ、脂とビニールが密着するように軽く抑えて、端からめくるようにそっと持ち上げる。
上手くいくと脂がそのままベロンとビニールに転写される。
「やった!」
この快感がたまらない。
お皿には少しの水分が残るだけで、洗うのも楽チン。
残念ながら脂が全部移らなかった時も、
「あー、ダメだったかー。おしい!」
「よし、あと何回で取り切れるか…」
とゲーム感覚。
このゲーム、シュウマイだけではない。
お鍋の茹で汁に脂が浮いている時も対戦可能。
一晩放置してお湯が冷めると流氷が出現している。
たくさん浮かんだ大小の水玉模様の脂。
「さて、一気にどれだけ取れるか」
なーんて心の中でつぶやきながら、お鍋にビニールを浮かべる。
こちらシュウマイでできた大陸のような一枚の流氷に比べて、温暖化でゴロゴロと崩れてしまったようなたくさんの流氷なので一段と難しい。
ビニール袋の面を替えて、その後は袋を裏返して、また面を替えて四面を使い切る。
やはり取り残しが出るがやらないよりはいいだろう。
温暖化の進む海に想いを馳せながら、そして楽しみながら下水を汚さないように工夫する。
これが未来のために役立っていると信じて。