広報って必要?クラシコム初のひとり広報が模索した1年のあゆみ
こんにちは。クラシコムの馬居(うまい)です。
もともとは2016年ごろからフリーランスとして「クラシコムジャーナル」の編集や人事など様々なお手伝いをしていましたが、2021年に正式にクラシコムの社員としてジョインしました。
そしてこの一年は、はじめての広報活動にチャレンジしていました。
実はこの広報活動を始めた頃は「広報って必要なのかな?」とすら思っていた私たち。でも、今ではすっかり「私たちには必要!」と胸を張って言えるようになったこの1年の歩みを振り返りたいと思います。
本格的に広報活動をしなかったわけ
2006年の創業以来、クラシコムには広報の専任担当はいませんでした。
年に数本のプレスリリースを、各施策の担当や、当時はフリーランスだった私が作成したり、外部メディアさんから取材のお声がけがあった際は、代表の青木や「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤が基本的に本人たちだけで対応するような状況でした。
「北欧、暮らしの道具店」というお客さまに自分たちの言葉で直接伝えられるメディアを持つ私たちが、「広報」という形で自分たちのビジネスについて発信する必要性を強くは感じられなかったということが、本格的な広報活動をしてこなかった主な理由です。
しかし、ありがたいことに事業は年々右肩あがりで成長し、「北欧、暮らしの道具店」やクラシコムにご興味を持ってくださる方や関係者の方々が増え、さらに数年間準備してきた東京証券取引所グロース市場への新規上場も目前に迫っていました。
そのなかで、「クラシコム」の広報=Public Relations、つまり「北欧、暮らしの道具店」のお客さまだけではない、世の中と、クラシコムという企業がどのような関係をつくるのか、がよくわかっていない状況に、漠然とした不安を持つようになっていきました。
その不安を打ち消すための正解が、本当に「広報」という仕事なのかどうかもわからなかったのですが……でも、まずはやってみようと重い腰をあげたのが1年前でした。ただ、そういった状況だったので、開始からしばらくの間は、代表の青木からは何度もこう言われました。
「まぁ、一回一通りやってみよう。意味がないと思ったらいつでもやめよう。」
まずは試してみるという姿勢で小さく始めて、いける!となったらアクセルを思いっきり踏み込む、というのがクラシコムあるあるです。
「広報活動」何から始める?
プロ直伝の「広報活動」3項目を素直にやってみる
しかし「広報活動」をちゃんとやるといっても、何から手をつけたら……ということで、今回は企業の広報サポートをされている株式会社シプードさんに先生についていただきました。そして、いわゆる「広報」とは何かを教えていただき、とにかくまずはその通りにやってみることにしました。
実際に教えていただいたことは主に3つです。
(1)ファクトブックを作成する。
(2)メディア対応の窓口になる。
(3)プレスリリースを見直す。
まず、メディアの方々に対するクラシコムの自己紹介として、ミッション、サービス説明、経営陣の紹介や沿革などを15ページほどの資料=ファクトブックにまとめました。
次に、私が明確にメディアの窓口として立つようにしました。具体的には、インタビューには基本的に同席し、社内で新たな外部発信をする際は必ず広報を通してもらうよう周知しました。さらに青木と私とで、いくつかのメディアの記者さんたちと取材を抜きにして、ファクトブックをご覧いただいた上で、お互いに質問をし合う場を持ち、メディアの方々をより具体的にイメージできるように動いていきました。
地道なプレスリリース発信、あの手この手で自己紹介
さらに、2021年は『青葉家のテーブル』関係を除くと年にほんの数本しか出していなかったプレスリリースを、もっとコンスタントに出すようにし、内容についてもブラッシュアップ。
先生のアドバイスを受けながらとにかく「客観的」に書くことを意識した上で、今社会が知りたいと思っている流れに沿って、クラシコムが提供できる情報を出すという「①社会性」と、みんながまだ知らない新たな取り組みとなる「②新規性」のどちらか(もしくは両方)を軸にファクト(事実)を集めるという方法で書いていきました。
そのプレスリリース第1弾となったのは、ポッドキャスト「チャポンと行こう!」の取り組みです。数年前から急速に再生回数が伸び、社内ではとても大事なコンテンツの一つと認識していたものの、客観的な見せ方がわからず、プレスリリースは出したことがありませんでした。
そこで、改めて担当者へのヒアリングを重ねると、実際に伸びていた時期は、まさにコロナによる巣篭もりが始まった頃からということ、さらには、累計再生回数1000万回が目前!担当スタッフたちは、各回の反応や月毎の伸びは見ていたものの、累計回数を気にする必要はそこまでなかったようで、私と一緒に「すごーい!」と驚いていました(笑)。
そして生まれたリリースがこちらです。
プレスリリースの面白いところは、会社の歴史的事実として積み重なっていくことです。
例えばポッドキャストであれば、この後、実際に1000万回を突破した際や、初の公開収録を開催する際に、上記のリリースで作り上げた説明を使い、どんどんと面白みを増した情報を作り上げていくことができました。そして、「チャポンと行こう!」は1年で4回のプレスリリースを出しました。
2022/1/13発表 1,000万回突破・配信100回記念LIVE告知リリース
2022/9/12 初の公開収録イベントの開催告知リリース
2022/11/16 公開収録イベントのレポートリリース
そうこうしているうちに、4月に読売新聞、8月に日経MJ、11月に産経新聞と次々に取材をいただくことができました。1年前には、どう客観的に説明したらいいのか全くわからなかったコンテンツが、今や私たちを代表するコンテンツとなってしまったのでした。
実は、長年Web広告にも携わってきた私にとって、プレスリリースはメディアさんに取り上げていただけたかで一喜一憂してしまう割に、実際に取り上げられたとしても、広告のように短期的にわかりやすいリターンが見つけづらいことがモヤモヤポイントでした。
しかし、プレスリリースは「積み重ね」が重要で、積み重ねていけば、チャポンと行こう!の認知が目に見えた上がっていったように、社会に伝わっていくのだという実感を持つことができてからは、反響に一喜(はしていたかもですが)一憂せず、心穏やかに、ただ自分たちの歴史的事実として残したいことを、わかりやすく作っていけばいいのだ、と捉えられるようになってきました。
また、私自身も、プレスリリースを作る過程やその繋がりのメディア取材によって、客観的に自分たちを捉えた説明ができるようになってくると、まるでプレスリリースは、いつか何かでご一緒する方々に向けて「自己紹介」をあの手この手でするような、そんな認識にもなってきました。
そんなふうに、実際につながりはじめたメディアの方々の顔も思い浮かべながら、あれこれ自己紹介のような気持ちで、YouTube、企業マーケティング支援、商品開発など、さまざまな分野でコツコツとまとめていき、気がつくと2021年11月から2022年10月までの1年間で30本以上のプレスリリースを配信していました。
+α 賞に応募することで、客観的な説明を強化する
そして今年、私たちの広報活動に役立った大きなものにはもう一つ、「賞」の応募があります。今年は二つの賞に応募し、どちらも良い結果をいただくことができました。
・「YouTube Works Awards2022」ファイナリスト選出
・「第3回JAPAN PODCAST AWARDS」リスナーズチョイス3位
この結果を持って振り返ると、そもそも2020年の終わりに受賞した「ポーター賞」の応募の際に、上場準備をしていたIRチームが中心となり、客観的な私たちの説明を作ってくれていたことが、私の広報活動にとってとても大きな味方となりました。
また、ポーター賞を受賞できたという事実も、もともと私たちを全く知らない方々が、きちんと説明することで認めてくださり、その後思わぬ視点で客観的に論じてくださった経験は、「もしかしたら、この世の中には、私たちを面白いと思ってくれる人がいるのかもしれない!」と希望を持ったきっかけでもありました。
賞は応募することで、自分たちを客観的に説明することができ、かつ入賞すればさらに大きな武器になります。準備の大変さや、受賞できなかった時のメンタル的な負担も考慮しながら、これからもチャレンジを続けたいなと思っています。
ちなみに……先日佐藤が受賞したウーマン・オブ・ザ・イヤーは自分達で応募をしたわけではありませんでしたので、とてもとても驚いた受賞となりました。ただ、この受賞が一体私たちにとってどういう意味があるのか、を佐藤と共に考えた時間は、今後のクラシコムの広報にとってはとても大きな意味があると思っています。(という話は、こちらで……)
広報活動1年の成果
広報はここぞという時の備え、実感した「上場」
そして、広報活動をはじめて1年も経たない2022年8月5日に、ついに東京証券取引所グロース市場への新規上場が決まりました。その告知をしたのが、上場の約1ヶ月前の7月1日。すると、瞬く間にたくさんのメディアに掲載されました。
そのあと2週間後にはテレビ東京のWBSに初出演し、ほぼ初めてに近い形で日経新聞からの取材を受け、さらにこれまで発信したプレスリリース・インタビューなどを引用した分析記事が公開されていきました。
そして上場日にむけ、記者会見の準備を開始。記者のみなさんに招待状を送り、会見用のバックパネルを作り、資料を作り……それと並行して、上場日以降に出されるメディア取材に対応する忙しない日々が続きました。
そして迎えた当日。事前に取材されていたNewsPicks・日経クロストレンド の記事・ラジオが公開される中、セレモニーにはWBSの繋がりでテレビ東京の撮影が入り、会見には13メディアの方々が集まってくださいました。
驚いたのは、会見に集まってくださったのは、ほとんどが私が広報担当になってから取材をしてくださった方々だったということです。広報活動の結果を嬉しく思うと共に、もし改めて取り組んでいなかったらどうなっていたんだろう……とドキッとする瞬間でもありました。
そして、上場後もしばらくは常に週に1、2本の記事が公開されるという日々が続きました。
あれよあれよと広がる露出ラッシュを前に、地道な広報活動は積み重ね、いつか何かのために、と思っていましたが、「上場」はその「いつか」だったのだなと思いました。
取材件数3倍、掲載数140件、広報活動の定量的効果
そんなふうに日々せっせとプレスリリースをつくり出しを繰り返し、取材に対応し、時々賞に応募したり、地道にコツコツ広報活動を続けていくうちに、あれあれ、なんだかとっても忙しくなってきました。
というのもそのはず、振り返るとメディア掲載全体では2022年はすでに約140件となっていました。プレスリリースが直接メディアに掲載される数は、配信数からすると昨年からは微増というところでしたが、取材件数は例年の2〜3倍ほどに。なるほど、忙しいわけです。
根本的なクラシコムの広報力の源とは
こういった数字の伸びに合わせて、何よりも変わってきたことは社内でした。
プレスリリースやファクトブック・メディアさんに取り上げられた際の記事を、私が何も言わずとも、採用・企業マーケティング支援の営業・バイヤー・IR担当…などにより、さまざまな場所で、活用されるようになり、その反響も聞くようになってきました。
思えば、クラシコムは(きっと他の多くの企業でも)お客さまや取引先の方々をはじめ、社外の方とコミュニケーションを取らないスタッフなどおらず、会社の自己紹介ができることで、みんなの仕事がスムーズになっているようでした。これは本当に、何よりも嬉しいことでした。
そして、広報活動を後押ししてくれたもう一つの存在は、「お客さま」です。初めて取材をしていただく編集・ライター・カメラマンの方々が、私たちをすでにご存知のお客さまであることはしばしば。それだけでなく、「友人がすごくおすすめしていて」「母親がこんなところが大好きで」と、担当記者さんたちの周りにいるお客さまが私たちのことを熱く語ってくださったことで、取材の質がグンと上がるということが、本当に、何度も何度も起こっていました。
思い起こせば、北欧以外の商品を取り扱う時、アパレルを始める時、ドラマを制作したとき、それが映画化される時、私たちはいつも何か新しいチャレンジをする際には、かならず漠然と世の中にではなく、「お客さま」にどうお伝えするかを真っ先に考え、お客さまに説明のできることだけを実行に移してきました。
その積み重ねが、クラシコムの広報活動のとても大きな力になっていることを、改めて広報にチャレンジすることで感じることができた一年でした。きっとこれからも、そのお客さまとの信頼関係がクラシコムの広報力の源になってくるのだと思います。
それが、先ほどのグラフでもわかるように、実は広報を始める1年前までも、月に1本程度の取材が入っていたというクラシコムの根本的な広報力の強さなのかなと思います。
ただ、それだけでは、すでにお客さまである方々以外に興味を持っていただくことはできません。お客さまとの関係はスタッフのみんながこれからもがっちり守っていくことに疑いはないので、広報としてはそれ以外の方、「北欧、暮らしの道具店」というサービス自体をご存じない方にもクラシコムの自己紹介ができるようになるべきなんだな、と、改めて思うようになってきました。
そうすると、さらにプレスリリースで書くことが明確になってきました。例えば、同じ「はじめての下着販売」をお知らせする際でも、商品ページ担当と私はほぼ同じタイミングで、同じように開発担当に話を聞いたにもかかあわらず、これだけ違うアウトプットになります。
1年考えた、広報って必要?の答え
なぜ、お客さま以外の方々に興味を持たれるべき?
そしてこの広報の役割=「お客さま以外の方々に興味を持っていただく」必要があるのか、ということもこの1年でとてもよく考えました。
私たちが上場企業になり株主の方々という新たなステークホルダーが増えたからということはとても大きいと思いますが、それはきっかけに過ぎず、根本的にクラシコムの会社としてありたい姿=ヴィジョン「自由・平和・希望」に照らし合わせてみると、とても腹落ちさせることができました。
私たちの事業「北欧、暮らしの道具店」は、D2Cや企業のマーケティング支援を行いながら、メディアを運営し、SNSやアプリを通して日々大量に情報を発信し、ついには映画まで公開するなど、日々新たなチャレンジを重ねています。
そんな風にクラシコムが様々な新たな一歩を踏み出すにあたって、自分たちが動かなかったことはありませんが、社外で助けてくださる方がいなかったら、ひとつも成果にはつながらなかったのでは、と言っても過言ではありません。オリジナル商品開発も、映像制作も、アプリ制作も、今回の広報活動も同じです。
その助けてくださった方のほとんどは、「北欧、暮らしの道具店」やクラシコムのことを何らかの形で知り、大きな力を貸してくださいました。
私たちはこれからもチャレンジや実験を続け、健全に成長をしたいと思っています。クラシコムがこれからも、自由に、そして平和に、あらたな希望をさがして進んでいくためには、私たちの内側だけではなく、外側にも、クラシコムがどういう会社で、何を目指して、どんな取り組みをしているのかを過大評価も、過小評価もせずに、きちんと理解していただくことがとても重要です。
「意味がないと思ったらやめよう」と始めた広報活動ですが、地道に客観的な視点で発信を積み重ねることで、適切な情報が周知され、正しい理解を促し、信頼が生まれ、仲間を増やす、そしてそれが自由・平和・希望を生む、そんなふうに役に立てたら広報活動はクラシコムにとって、とても意味があるなあと思えるようになってきました。
クラシコムらしい広報を探す旅、新担当募集開始!
というふうに、広報をやるぞと覚悟を持ったクラシコムですが、メディアの方々と接点をつくり、広報とはなんぞやを知る1年を超えて、これからは、新しくクラシコムらしい広報を作っていくためのあゆみが始まります。
そして、次の一歩をいっしょに踏み出してくださる方を探すべく、採用を開始いたしました。
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