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石原路子さんのテディベアによる、長岡義尚・作「自我像」の再現

画像は、我が家に2番目にやってきた、テディベアです。

石原路子・作 テディベア 2019年

伝説のテディベア作家、石原路子さんによるもので、2020年に岡山の老舗百貨店・天満屋で開催された美術工芸展に出品されていたのが、出会いでした。
体が小さい子で、連れて歩きたいというリクエストによって製作されたということでした。端正に形が整った造形で、細かいカール加工をされたモヘアで覆われています。悲しみを溜めたような、深みのある、潤んだように見えるガラスの瞳が印象的でした。

この子は、移ろい流れ行くものに寄り添います。

朽ちてゆく花に寄り添う小さな青いテディベア


長岡義尚(ながおか よしなお)は、京都高等工芸学校・図案科を卒業し、会社勤務の傍ら、画家を目指していました。昭和14年、軍に招集され、昭和16年フィリピン・ルソン島で戦死しました。26年の生涯でした。

画像は、長岡義尚・作「自我像」です。

長岡義尚・作「自画像」1)

戦没画学生慰霊美術館「無言館」(長野県上田市)の館長、窪島誠一郎氏は、「こちらをみつめる涼やかな眼差し、整った理知的な鼻すじ、閉じられた唇。この自画像を眼にしただけで、作者である画学生長岡義尚の、人生について深く思索しする姿勢がしのばれるというものだろう」と評しています。1)

遺された手記には、「自分の生命を絵の内にしみこませて、人々の心にそれを生かすこと、それが自分のしたい仕事である・・」「一木一草の有るがままにおのれをその中に置く、そうした自然に任せた、あなたまかせの境地こそ真の芸術ではなかろうか」と記されていました。その意味で、自画像でななくて「自我像」であるといいます。1)

テディベアとは顔の輪郭が違いますが、窪島氏が記述した長岡義尚・像と通じるものを感じました。

この空気感はいかがでしょうか。



1)窪島誠一郎・文 無言館・編:戦没画学生 いのちの絵 100選. コスモ教育出版, 2019. P162-163


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