「STPーVP分析」マーケティング基礎セミナー原稿から
マーケティングの基礎セミナーの原稿からの第五弾です。
①「マーケティングの歴史」
②「マーケティングの進め方」
③「企画書の書き方」
④「分析のフレームワーク」
今回は「STP-VPのフレームワーク」についてご説明します。
STP-VPのフレームワーク
コトラーのマーケティングプロセス「R-STP-MM-I-C」のR、の次はSTPです。市場を細分化し(Segmentation)、その中から勝てる土俵、つまりターゲットセグメントを探し(Targeting)、そのセグメントの中の人や企業に対して提供できる価値を宣言する(Positioning)というSTPは、最も重要なマーケティングの仕事です。
STPのポイントは、お客さまをきちんと定義するということにつきます。お客さまの定義には、従来は例えば「30代女性」といった大雑把な定義が一般的でした。それは個人の価値観が世代や性別によって似通っていて、その大多数をとれば良かったからです。
しかしながら現代では個人の価値観が多様化して、世代や性別では定義できなくなりました。より具体的に定義しなければなりません。
そのやり方はどうしたら良いか。そのためにはさまざまなマーケティング理論があります。私はその中から、STP分析、JOB理論、バリュープロポジションキャンバス(VP)といったマーケティング理論の要素をピックアップして「STP-VP」のフレームワークを作りました。
このフレームワークは順番にやるよりも、この全体を俯瞰しながらワークショップでいったり来たりしながら、対象となる商品のお客さまは誰かを定義しようというものです。
提供する商品の強みを活かして提供できる価値は何なのかを意識しながら、その商品の提供価値がお客さまのどんな問題を解決できるのかを考えて、お客さまを定義していきます。
お客さまが製品・サービスといった商品を購入するのは、お客さまが「なりたい姿」をもっていて、現状との「ギャップ」を商品が解決するからです。
商品を提供する側が、お客さまの「なりたい姿」、要望、悩みを理解して、現状との「ギャップ」を見つけ、そのギャップを埋めるためにやるべきこと、「解決すべき問題」を明確にすることです。
そのお客さまの「解決すべき問題」を解決するために自社の商品がどんな価値を提供できるかを考えます。
STP-VPの例
ここで、ある楽器店の事例をご紹介します。まずこの動画を見てください。
●千葉次郎の挑戦
STP-VPの作り方
STP-VPフレームワークの作り方をご説明します。
まず、対象製品・サービスのお客さまはどんな人なのかをできるだけたくさん書き出してみます。特性、属性を思いつくままに書き出します。
対象商品を軸に考えます。
先ほどの楽器店の例では、「音楽教室」です。
例えば、
・音楽ソフトを保有している
・ピアノ指導者
・JAZZが好き
・子どもに音楽を学ばせたい
・サックスを吹くのが夢
・アウトドアが好き
・老後の趣味を探している
といったようにです。
関連性がなくて良いのです。とにかく書き出して、後でピックアップをして絞っていくのです。
同時に、その狙いたいお客さまがその製品・サービスを手にしてどうなりたいのかも考えて書き出していきます。
例えば、
・バンドに入りライブに出る
・将来音楽の仕事をする
・イベントで演奏をして、皆をびっくりさせる
・キャンプファイヤーでギターを弾く
・楽器演奏をきっかけにして友人をつくる
などです。
上側の特性、属性、下側のどうなりたいかの中から、今回のマーケティング施策でもっとも狙いたいお客さまをひとり選び、文章で定義します。
例えば「娘の結婚式の前に娘のために何かしてあげたいと思っている父親」です。
同じようになりたい姿も文章で定義します。
例えば「娘の結婚式で、楽器演奏をして、お祝いしたい。こっそり練習して、家族を驚かせたい」といったようにです。
これで、お客さまの定義となりたい姿が明確になりました。
次に、なりたい姿を達成するためにお客さまの障害、解決すべき問題、ギャップは何かを考えます。
対象となる「父親」が結婚式で楽器演奏をするという望みを実現するには、例えば次のような解決すべき問題があります。
・楽器を手に入れなければならない
・弾けるようにならねばならない
・近くには楽器店がない
・大きな音を出すことができない
など
この問題を解決するために、自社の強みを活かし提供できる価値は何かを考えます。
先ほどの問題を解決する提供価値は次のようになります。
・楽器を手に入れなければならない→楽器レンタルを提供する
・弾けるようにならねばならない→一曲完奏レッスンプログラムをつくる
・近くには楽器店がない→オンラインレッスンを提供する
・大きな音を出すことができない→レンタルする楽器に消音タイプも選べるようにする
このフレームワークで、
①自社が提供する施策・商品・サービスの狙いたいお客さまが誰であるか、つまりセグメンテーション
②そのお客さまの悩み、要望、課題が何であるか、つまりターゲティング
③その悩み、要望、課題を解決するには何をすべきか
④そのために自社が提供する施策・商品・サービスの提供できる価値がなんであるか(これをバリュープロポジション、VPと呼びます)
STP-VPのフレームワークで、お客さまが誰であり、そのお客さまにどういう価値を提案していくかがはっきりするのです。