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堪忍袋の緒が切れた

なんだかんだ人生で初めてだった。

頭の中じゃなくて、心の中で堪忍袋の緒が切れた感覚をしっかり感じた。
それは、態度や顔に出るよりも先に心の中でぷつんと切れて、その様を感じて自分でもまずびっくりした。そのあと感情が追いついてイライラした。











本当にしょうもないことだった。

リビングで推しのライブDVDを見ていた。
いきなり寝始めた母にこう言われた。

「うるさい」

この一言で私の堪忍袋の緒が切れた。












そんな何気ない今まで散々言われてきたその一言でキレるとは思わなかった。でも私の心がダメだったらしい。頭で考えてることと、心で感じることは全然違うみたいだった。

ただ、私はそのまま見続けることはなかった。

私の生きがいの推し、私の生きがいの音楽。
それは薄っぺらいもんじゃなくて、それらがなかったら私はとっくに死んでいたくらい、それがないと死んでもいいくらい、大切で、今までもこれからも生かされていくもの。
そんな宝物に対してうるさいの一言が思い返せばムカついてくる。そこまでの音量なんかじゃなかったし。まあどうせそういうことではないんだろうけど。











テレビを切って、自分の部屋に行った。
私が大切にしているもの、気持ちをバカにされた気がしてその場に絶対居たくなかった。二度と口を聞きたくないくらい。

自分の部屋で音楽理論の勉強を始めた。
その後ベースを弾いた。

気を紛らわすように音楽の勉強をして本を読んでノートにまとめて、バカみたいに激しく弾いて、イライラをぶつけた。
大切なベースには申し訳なかったけど、そんなダメな逃げ場のないはずの感情をぶつけられるのは幸せだった。










気付いたらベースの弦がブヨブヨになった気がした。
強くピッキングしすぎたか?バカみたいに強いスラップのせい?わからない。よく見ると弦高も高くなってる気がする。前より弾きにくい。ネックでも反ってるのか?

分からないけどそれもなんかムカついた。

私が今ベースを大切に扱わなかった罰なのか。
そうだとしたら、そりゃそうよね。ごめんね。

だけど少しだけ嫌気が刺したのは本当。最低な自分。もう何もかも嫌になりそうだった。













とりあえずチューニングを合わせた。弦高は変わらないし違和感ありありだが、とりあえずベースを綺麗に拭き上げて、ピカピカにした。

いつもの位置のスタンドに置く。
いつも通り眺める。

ふと気付く。













上手く撮れなかったけど、肉眼で見ると分かる。それは、ピックガードについた傷。

こんなに傷ついてたんだ。

今まで一緒にこのベースと過ごした日々と思い出が急に愛おしくなった。激しく弾いて出来た傷も含まれていると思うと、私の生き様、感情も擦り込まれてる気もした。

ベースは喋れないのに、そうやって大切なことを教えてもらったみたい。心に直接伝えられたような。

それと同時に、イライラしていた私の心もスッと落ち着いた。

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