サービス終了した推しコンテンツの2.5次元舞台を観に行った話
夢か幻を見ているのかと思って涙が止まらなくなっちゃった。
観に行ったタイトルは、声優志望者が集まる学園を題材にしたソーシャルゲームアプリ『オンエア!』。舞台のほうの呼び方は「ジュエルステージ」、略して「ジュエステ」(以下この表記でいきます)。2022年6月3日〜12日まで東京ドームシティシアターGロッソにて上演されている。
■『オンエア!』ゲーム公式HP
https://on-air-coly.com/
■「ジュエステ」公式HP
https://onair-stage.com/index.html
ここ数年、ヒットしたアニメやゲーム、漫画を原作として2.5次元舞台やミュージカルが制作されることは特段珍しいことではない。
むしろそういったメディアミックスをされていないコンテンツのほうが少ないのではないかと思うほど、その流れはもはやメジャーとなりつつある。
しかし、『オンエア!』に関しては少しだけほかのコンテンツとは事情が異なっている。
それは、このアプリが既に2020年10月にサービス終了してしまっているということ。
私は事前登録はもちろん、2018年にリリースされてからサービス終了まで、このアプリを愛し、遊び尽くしたユーザーのひとりだった。
『オンエア!』に救われていた日々
『オンエア!』がリリースされた頃、私は新卒で入った会社に精神をやられてしまい、大好きだったあらゆるアニメや漫画、ゲームをプレイする気力も失せ始めていた。苦しすぎる仕事を終え、夜遅くに帰って翌日の心配事を考えながら眠りにつく毎日を繰り返し、たまの休日は疲れてまともに活動することもできない。
そんななかで、自分の「好き」をなんとか守り通そうと、キャラクターデザインや声優を見てプレイし始めたのが『オンエア!』だった。
ストレスや心配、不安で何もやりたくない・何も手につかないというときでも、完全に気力を失ってしまわぬように「せめて『オンエア!』のデイリーミッションだけはこなそう」と決めて、毎日ログインしてデイリーをこなした。
それはもはやゲームというよりも自分の「好き」を守るための抵抗であったし、失われた情熱を取り戻すためのリハビリにも近かった。
『オンエア!』は声優育成に特化した宝石が丘学園を舞台として、生徒たちがユニットを組み、プロの声優を目指して邁進する青春学園モノだ。かつてはプロの声優を輩出し隆盛を誇った学園だったが、諸々の事情で経営破綻の危機に直面してしまう。
プレイヤーは「特待生」として入学し、学園を立て直すために伝説の公演「グラン・ユーフォリア」を成功させるというミッションのもと、30人の男子生徒、6つのユニットを説得。個性あふれる生徒たちみんなで協力して、「グラン・ユーフォリア」の成功を目指していく。
ここからは思い出話も込みになってしまうのだが、6つあるユニットの中での私の推しは「Re:Fly」(りふらい)というユニットだった。Re:Flyはリーダーの青柳帝を中心に、暗い過去を抱えた5人が集まり、「お互い干渉しないこと、足を引っ張らないこと」を条件にビジネスライクな関係を大事にした、クールで大人めなユニットだ。一見するとみんなちょっと冷たいのかな?と思いきや、ユニットストーリーでそれぞれの過去や苦しみをわかちあい、「干渉すること」と「みんなで協力すること」はノットイコールであるということを学び、成長していく姿に見事に心を持っていかれた。
『オンエア!』がリリースされてから一番最初のゲーム内イベントが、このRe:Flyの箱イベ(※特定のユニットのお当番イベントのこと)だった。
このイベントのストーリーが、まぁ〜〜〜メチャクチャ良くて。詳述すると長くなるのでザックリと言うと、人間関係について過去にトラウマを抱えたユニット内のあるキャラクターが、仲間との交流を経て、再び前を向いて歩けるようになるというものだった。
このストーリーを読んだときのことは今でも覚えている。仕事が終わって帰ってきて、夜中にアプリを起動してストーリーを読んで、涙がぽろぽろと止まらなくなってしまった。胸が苦しくて、でも自分の過去のトラウマを乗り越えて前を向くキャラクターの姿に、ものすごく勇気づけられた。そのときに、「あぁ、私はこのゲームがあれば大丈夫かもしれない」と心の奥底で思ったのだ。
『オンエア!』は私の生活に欠かせないものになっていた。
新卒で入った会社を辞めて、転職した次の会社で出会った、同じく『オンエア!』好きの人と一緒にたくさん推し活をした。コラボカフェに行ったり、ポップアップショップに行ったり、イベント予告に打ちのめされたり、本当に楽しかった。課金をしすぎて貯金が底をつき、昼食を会社のウォーターサーバーでしのいだこともあったけれど、それでも楽しかったので気にならなかった。
だから、2020年7月の終わりに「サービス終了のお知らせ」が発表されたときには、目の前が真っ暗になった。
突然の終わり
結局、私はサービスが終了するその日まで、それを現実として受け入れることができなかった。無理すぎて運営の悪口を言っていたら気づいたらサービスが終了していたという感覚だった(ごめんなさい)。
もう会えないんだなぁとか、みんなで夢を叶えていこうって約束した彼らの未来を見ることができないんだなぁとか、これからもいろんな景色を見るはずだったのにどうして?とか、ずっと考えていた。
運営には運営の事情があるし、仕方ないことなのだ。正直、ソーシャルゲームアプリがサービス終了することなんて最近は全然珍しいことじゃない。今はちょっと落ち着いてるけれど、2017年〜2020年あたり、女性向けソーシャルゲームアプリは戦国時代だった。似たようなジャンルのゲームが日々リリースされては、生き残り競争に負けて終了していく。『オンエア!』もそれに負けた、それだけのこと。
でも、やっぱりつらかった。
空っぽになってしまった。
こんなに大好きになっても、ある日急になくなってしまう……あまりにも無責任じゃないか?と思ったし、「こんなにつらい気持ちになるのなら、もう何も好きにならない」とすら思った。実際『オンエア!』が終わってから、実は私は今でも似たようなジャンルの新しいゲームには手を出せていない。好きになったとして、ハマったとして、また消えてしまうのが怖いから。
そうして、失意のまま時が過ぎた頃。
2022年になって、急に『オンエア!』が再び立ち上がり始めた。
2022年1月にボイスドラマ化が、3月には舞台化が……「ジュエステ」の開催が発表されたのだ。
再起と2.5次元舞台、葛藤
前置きが長くなってしまったが、ここからが本題で
ボイスドラマはまだ「わかった」。『オンエア!』は元々声優志望の学生を題材にしたコンテンツだったし、展開としては必然でむしろどうして今までなかったんだ?と思った。
しかし、問題は舞台化のほうだった。
正直ものすごーーーーーーーーーーーく困惑した。だって急だったし、いや別に舞台はやらなくていいからもっとゲーム関連で何かほかの施策やってくれ……というのが本音だった。
しかも、そもそも私は昔から2.5次元舞台にかなり抵抗があるほうのオタクで、もはや嫌いなジャンルになりつつあるレベルのものだった。何かトラウマがあるわけではなく、単に2次元キャラクターを3次元化することに喜びが見出せず、実物も一度も観劇したことがなかったのだ。
この『オンエア!』だって、大好きなキャラクターみんなを3次元にちゃんと顕現させることなんてできるのか? もし変な感じになってたら……思ったのと違ったら……。
すっかり息を引き取ったと思っていた『オンエア!』が再び動き出した喜びと、その展開媒体への複雑な気持ちとで、告知されてから毎日、己がどうするべきかを悩んでいた。
舞台の情報が解禁されていくなかで、なんとキャラクター30名が全員出演することがわかってビックリしたり(一部のキャラしか出ないと思っていた)、キービジュアルや衣装・ヘアメイクの力の入りようにビックリしたり、初めての2.5次元舞台関連情報へのカルチャーショックを無限に繰り返していた。
思ったより(すみません)、すごくちゃんと作っていただいている……。
それらをふまえて、行くか、行かないか。
毎日毎日毎日メチャクチャ死ぬほど葛藤した結果、「とりあえずコンテンツにお金を落としたい」というごくごくシンプルな理由で、私は舞台にーーージュエステに突撃することを決めた。人生初めての2.5次元舞台。
観るからにはちゃんと観たかったので、前方の席が確約されるクラウンシートでチケットを購入した。
「ジュエステ」を観た
私が行ったのは上演開始から2日目の昼公演。
結論から言うと、公演終了直後に席に座ったままその場で千秋楽のチケットを即購入した。
ガチのマジで本当にとてつもなくものすごくメッッッッッッッッッッッチャ良かった。
舞台化発表直後のあらゆる心配や不安は、全部杞憂だった。ネタバレをしたくないので、ネタバレにならない程度の感想しか言えないのがとても歯痒い。それならどうして上演期間が終わったあとに記事を書かないのか、と言われるかもしれないが、それはひとえに上演期間中に少しでもたくさんの人に観てもらいたい舞台だと思ったから。
舞台で繰り広げられるのは、ゲームの中でも見せ場のひとつだった「グラン・ユーフォリア」そのものだった(この情報は公式から既出です)。
しかし、ゲームの中では描かれなかった、30人のキャラクターたちそれぞれの「グラン・ユーフォリア」に向けての準備シーンや裏方の動き、パフォーマンス全てがとても細かく丁寧に描かれている。表現が難しいのだけれど、一つの舞台の上で30人のキャラクターたちが同時にそれぞれ30通りの動きをしている。30人分の群像劇を一挙に見せられているかのような、1シーン1シーンごとの情報量の多さ。あぁ、あのときこの子はこういう動きをしていて、あの子はこんな想いでこういうことをしていたんだな、と。キャラクターみんなそれぞれが、そこに「生きている」。
もちろん歌もダンスも曲も全部すごい。そして何よりも、担当されている役者さんが、それぞれのキャラクターらしい立ち居振る舞い、仕草、表情などを、指先まで非常に忠実に細かく気を配って演じられているのがわかる。声音まで近い方がいらっしゃる。
圧倒的なキャラクター実在性・再現性の高さにひっくり返ってしまった。
メッッッッッッチャ解像度上がる。天才すぎる。2.5次元舞台、すっっっっっっっっご。こんなすごいものを、見せてくれるんですか……⁉︎
推しユニRe:Fly、これもネタバレしたくないので細かくは言えないんですが、このユニットを推してるオタクなら全員口を揃えて「解釈一致‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」と絶叫したくなるようなあれやこれやが繰り広げられる。ちょっと本当にすごすぎてビックリする。動揺する。こんなエラいすごいものを見せていただいて本当によろしいんですか?
私の推しキャラクターRe:Fly所属の天橋幸弥に関しては、一挙手一投足表情立ち方すべてが実在のソレで情緒ガタガタ号泣してしまった。ありがとうございます大感謝の気持ちしかない。
そんないろんなことを終演直後に考えていたら、気づいたら千秋楽のチケットを購入していたというわけである。
これからの未来も一緒に見たいから
初めての2.5次元舞台としてももちろんすごかったし、やはり再び『オンエア!』に触れられたこと・宝石が丘学園のみんなに「会えた」ことがとてつもなく嬉しかった。
舞台を見るまでは、まさか「会えた」という言葉が自分から出てくると思わなかった。3次元には無理だろうと決めつけていた、「会えるわけがない」「そこにいるわけがない」と思い込んでいた。
けれど、そんなことは一切なかった。そこにはちゃんと彼らがいた。30人全員がそこにいて、いきいきとキラキラと輝いていた。それこそ、まばゆい宝石のように。
たとえば『オンエア!』には声優さんもしっかりついているので、朗読劇をやるという選択肢もあったかもしれない。しかし、実際にジュエステを観ていただければよりわかると思うのだが、やはり舞台にしかできない演出がたくさんあって、舞台だからこそ顕現させうるキャラクターたちの姿がある。朗読劇で顕現されるキャラクターと、舞台で顕現されるキャラクターは実在性という点において大きく異なっていて、舞台だからこそ今回私は「会えた」と思えたような気がする。
そして、何よりもサービス終了した『オンエア!』というコンテンツにおいて、今回舞台で「グラン・ユーフォリア」が実現された光景は、経営破綻危機の宝石が丘学園を「グラン・ユーフォリア」の成功によって復活へ導いた本編ストーリーを想起させる。メタ的な意味でも『オンエア!』は今、30人の宝石たちによって新たなスタートを切り出そうとしている真っ最中に思えた。
サービス終了したゲームはもう戻ってこないかもしれない。この先、何か大きな展開があるとは限らないかもしれない。けれど、このジュエステは、大好きな『オンエア!』の失われた未来を再び手繰り寄せるための大きな一歩だと信じて。
私は千秋楽前のRe:Flyお見送り回のチケットも追加購入したのであった。
(記事更新現在チケットまだちょっと余裕あるみたいなのでぜひ……
https://onair-stage.com/schedule.html )