『スマホ時代の哲学』感想・レビュー
ここ最近の悩み。なかなかTwitterをやめることができない。1日にどのくらいTwitterをしているか調べてみたら、およそ2~3時間費やしていた。膨大な時間。これはまとまった時間ではなく、細切れの時間だ。ごはんを食べた後、トイレに座った後、ベッドに入った後、気づいたらTwitterを開いている。
Twitterはパチンコに似た部分があって、たくさん「反応」がもらえるとドーパミンが放出される。いいねが100を超えるツイートができると、スマホを開く度に3件以上の「反応」がある。いいねが1000を超えると、1日以上確変状態が続くので、まぁちょこちょこスマホを見ることになる。
Twitterが占有している時間を減らしたいのだが、なかなかやめられない。実際それをしている間は楽だし、心地よいし、誰かと繋がっている気分になる。休職中から、寂しさや孤独感をごまかすためにTwitterには救われてきたので、悪い部分ばかりではない。それでも、時間の使い方を見直したい思っていた。そんな時期に出会ったのが『スマホ時代の哲学』である。
クッソ面白かった。中でも印象に残った箇所は次の文章だ。
「抑鬱的快楽」とは哲学者のマーク・フィッシャーが名づけた言葉。著者の谷川さんがかみ砕いた説明では、「抑鬱的快楽は、断片的で即自的なコミュニケーションや表面的な感覚刺激のレベルに自分の体験を分解していくことで、余計なこと(=不安や退屈)を意識せずに済むようにするストレス・コーピング」とされている。
この文章を読んで、あぁ、なるほど。Twitterは酒なんだなと思った。仕事をしている以外の時間、スマホを開いてTwitterを眺める自分は、流れてくる情報に身を任せながら、不安から目をそらしているのだとわかった。
また、「自己啓発でテンションを上げる」にも思い当たることがあった。僕は休日、本が読めるスタバに行き、気になった自己啓発本やビジネス本を読んでいる。何冊か読めば高確率で気持ちがシャキッとなるので、メンタルが不調になりかけたときによく利用している。思えばこれは、エナジードリンクを飲んでいる状態かもしれない。
『スマホ時代の哲学』とはどんな本か?
『スマホ時代の哲学』は京都在住の哲学者谷川嘉浩さんによって書かれた本。つながっているのに寂しい「常時接続」の世界で私たちはどう生きるか。この問いに対して、様々な哲学者の考えを借りながら答えを探す旅の物語である。
この本はユニークで、『エヴァンゲリオン』や『ドライブ・マイ・カー』などの現代のアニメや映画を切り口に論じている。哲学になじみがない人でもわかりやすいように、また興味が持てるように意識された文章になっている。僕たちの場所まで「下りてきてくれている」と感じた。
哲学の本をいくつか読んだ人はわかるかもしれないが、現代に近づけば近づくほど、僕は哲学者たちが何を言っているのかよくわからなくなった。でも、「暇とは何か?」を論じた『暇と退屈の論理学』や「贈与とは何か?」を論じた『世界は贈与でできている』の2冊は読んでいて面白かった。自分に身近なキーワードという補助線があれば、知的興奮は大きくなると知った。
『スマホ時代の哲学』は上記の2冊よりも、さらにカジュアルに論じてくれている。スマホを触る時間を短くしろって言ってもつい見ちゃうよね~どうしたらいいんだろうね~ということを、僕たちは考えられる。様々な哲学者の考えを借りた谷川さんの考えをさらに借りて、自分と自分を取り巻く環境が少し見えてくるのだ。
とても面白いので、ぜひとも読んでみてほしい。
終わりに
このnoteを書いたのは、『スマホ時代の哲学』をもっと多くの人に読んでみてほしいと思ったから。気づけば2000字近くなってしまった。
この本では「常時接続の世界に置かれている僕たちはどんな問題を抱えやすいか」だけでなく「こんな世界で僕たちどのように生きたらいいのか」も議論されている。現状の把握だけでなく、解決策の提示もきちんとなされているのだ。
僕は現在、その解決策をヒントに、Twitterを眺める時間を減らし、音楽を学ぶ時間を増やすことに取り組んでいる。
キーワードは「アテンションエコノミー」「ネガティブケイパビリティ」「趣味」の3つだと思っている。
この辺もとても語りたいのだが、これについては次回のnoteで詳しく書こうと思う。言ってしまえばネタバレになるので。
哲学者とともに「失われた孤独をめぐる冒険」をしたい人は、ぜひ『スマホ時代の哲学』を読んでみてほしい。冒険をした人の感想が気になるなら、次回のnoteを読んでみてください。
読書ってたまに「こういう本が読みたかったんや!」って本にぶち当たるからいいよね。
あー、面白かった。明日からもがんばろう。
おわり。
追記。ネタバレ前提の読書感想文も書きました。
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