久遠堂の製作覚書⑥「何が君の幸せ、何をして喜ぶ」
覚書⑤で、初心者女子に『何が敬遠されたか』を書いたからには、だったら『何なら好感触だったか』も書いておかねばならない。
やはり、あくまで私の観測範囲内での話になることをご了承ください。「うちの周りの初心者女子にはそんな子おらんぞ」って言われても、なんだ、その、困る。
・準備は簡単に、分かりやすく
ランダマイザとしてカードを使用した(山札をめくって出てきた数字を適用する)時は「山札を用意したり、なくなった時にリシャッフルするのが面倒」と、あまり喜ばれなかったのだが、これをダイスにした途端に「準備が簡単だし、サイコロ振るの楽しい!」に変わったことがあった。ダイスが転がる様子は視覚的にも「ゲームをしている」という気になるらしい。わかる。ダイスって最高。
・得点は小さく、でも多い方がいい
矛盾しているようだが、単に桁数の話である。100点や200点などの大きな数字は、たくさん点を持ってるように感じるし、見た目の派手さもある。しかし実際には0を端折って計算することになるだけなので、最初から1点、2点といった小さい数字の方が数えやすいよね、という。そして、ゲームを遊ぶ上ではなるべく加点が多い方が嬉しい。逆に、せっかく得点したものをごそっと取り上げられる減点方式はあまり好かれない。
・勝った負けたはオマケ
ボドゲ触りたてのカジュアル層は、まず楽しく遊びたいのであって、必ずしもガチガチの勝負がしたいわけではない場合も多い。楽しかったという体験があれば、勝敗条件は細かく決まってなくても大丈夫。終了時に残金が多い方がとか、カードが少ない方がとか、そんなキッチリ白黒つけなくても、同点の場合は二人とも勝ち、それでいいじゃないか。
重ねてになるが、これはあくまで私の観測範囲であり、そういう初心者さんもいたよ、という話だ。
実際には「カード引いたりめくったりするの好き」とか「マイナス点って悔しいけど面白い!」とか「この1金差で負けか……ふ、いい勝負だったぜ」っていう初心者さんもそこそこ多いはずなので、あまり気にしすぎることではない。
何にせよ大切なのは〝どんな人に〟〝どんな時に〟〝どう遊んでほしいか〟だと思う。初心者さんへの気遣いはもちろん大事なんだけど、自分が作品を届けたい層が初心者とは呼べない場合、却って邪魔になる場合もある。
万人受けする作品を作るのは、とてもとても難しい。特に初心者さんは、遊び続けているうちに理解できることが増え、楽しめる範囲が広がり、いずれ初心者ではなくなってしまうものだ。
うちの作品からボドゲに触れた初心者女子の皆様におかれましては、うちの作品を「なんか物足りないな」「つまらなくなってきたな」と感じたその時は、昔「ちょっと難しそうだな」って思ったあのゲームに再度チャレンジしてみてほしい。さあ更なる深みへ。さあ。