『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』要約

シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感

著:中野信子


人間には、誰かが失敗した時に湧き上がる喜びの感情=「シャーデンフロイデ」を持っている

この感情は、安定を求めるオキシトシンという脳内物質と結びつきが強く、安定した社会・集団の逸脱者に対して利他的懲罰を与えようとする性向から生じる

他者へ懲罰を与えることは、報復されるリスクや懲罰に費やす労力等、実施者に利益を与えない行為であると思われる。しかし、集団の裏切り者を排除する事で、秩序を守り、集団の崩壊という最も生存確率を下げるネガテイブ要因の発生を抑える戦略を取ってきた

こうした戦略を取ってきた人類は、進化の過程で、社会的排除を執行する際に脳内で「快楽」を生み出す様になった。このため、率先して他人を引きずり落とす人間が出てくる

排他的性向は、意外にも協調性が高い人や、宗教信仰が強い人が高い。これは「倫理的」に正しい人の方がルールに対して順応であり、「ルールを破った」人への攻撃に「正義」という大義名分を持ち、残酷な事も躊躇なく実施できるためである

日本に焦点を当てると、SNSの利用率が高く、匿名での承認欲求が強い傾向を見て取れる。ここでの承認欲求は、「悪」を見つけ出して、自分は「正義」を代表する立場に置いて、「悪」を容赦なく攻撃するという行為により、喝采を得る、という行動に繋がる。更に匿名である事から、反撃されるリスクが低いため、自分の身を守りつつ承認欲求を充たせる結果となる。この際の快感は、セックスで得れる快感に匹敵する

このように、シャーデンフロイデは現代の病理ではなく、人間が生来保持するものである。愛や正義は人間が生きる上で尊いものとされているが、それらは簡単に攻撃的な感情・行動に移る事を常に意識すべきである

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