能楽を楽しむ会 vol.5 〜祈りの能楽〜
こんにちは、kuniです。
今回の記事は、能楽の体験型イベント「能楽を楽しむ会」の様子をレポート形式でお届けいたします。主催である仁和能楽學舎は、日常からちょっと縁遠い伝統芸能である能楽を身近に感じてもらうことを目的に、能楽にまつわるイベントを企画運営しています。ご紹介する「能楽を楽しむ会」は、実習中心の体験型イベントとなります。
能楽は、仕舞(しまい)・謡(うたい)・囃子(はやし)の3要素から成り立っています。本イベントは舞台の役者である能楽師の先生から、仕舞と謡の所作を直接レクチャー頂きます。毎回異なる演目を題材に、能楽師になりきって楽しむのがイベントの趣旨です。
春の伊豆高原にて、能楽にふれる
2022年4月23日(土) 静岡県伊豆市のサロンにおいて、仁和能楽學舎の専任講師である観世流のシテ方能楽師である坂井音隆先生を招き「能楽を楽しむ会 vol.5 〜祈りの能楽〜」を開催しました。
能楽の所作を体験するというイベントの特性上、これまでは学校が提携している能楽堂で開催してきました。しかし、今回は伊豆高原での出張開催。その場にこだわった理由は、本イベントの題材である演目にあります。
選んだ演目は羽衣(はごろも)。実は、能楽を楽しむ会の企画段階から、能楽でもっともポピュラーな演目である羽衣を題材にしたいと考えていました。羽衣の舞台は静岡県の美保の松原。そんな羽衣の舞台に程近く、雄大な自然を感じられ、さらに東京からのアクセスも良い伊豆高原を舞台にお届けします。
さて、伊豆高原のサロンに参加者が続々と集まってきました。参加者のほとんどは能に関してまったくの初心者。オリエンテーションが終わり、プログラムが講座にうつる段階では、能楽師である先生を前にどことなく緊張しているようです。
そんな空気を破るがごとく、能の成り立ちに関する解説からスタート。副題の「祈りの能楽」にあるとおり、能楽は五穀豊穣の祈りから始まったと坂井先生は説きます。能楽のルーツは、わたしたちの生活に密着しているということがよく分かるエピソードです。
演目「羽衣」のあらすじは以下の通りです。
丹田から日本語の母音をあじわう
講義が終わるといよいよ謡の実習。先生からは「姿勢良く、お腹から声を出してみましょう」と呼びかけられます。日常生活において声のボリュームは無意識に抑えてしまうものですが、この場ではブレーキを外して思いっきり声を出してみます。丹田に力を込めた発声は、うちなる自分を解放しているような気持ちになります。
謡の発声は、腹式呼吸が基本です。あごを引き、のどぼとけを下げるように、息とともに声を出します。音程は定められていませんが、全般的に音の高さは低めで、女の役でも男の声でそのまま謡われます。
気持ちの良い発声を通して、参加者の緊張も徐々にほぐれてきました。そして今回の題材である羽衣の謡本を分かりやすくした教本が参加者に配布され、先生のお手本に倣って謡います。能楽でいう楽譜は西洋音楽でいう五線譜とは異なり縦書きになっているのが特徴で、文字に振られている記号のことをゴマ点やゴマ節と呼びます。あ、い、う、え、おの5個の母音を丹田から響かせると、日本語の持つ響きの美しさを実感します。
静的な型の連続、仕舞の表現
謡のあとは所作をつける仕舞の体験へ。先生が持参した扇を持ち、すり足での歩き方や、扇で感情を表現するしぐさを学びます。
仕舞はさまざまな型によって構成されています。歌舞伎と異なり、一見すると動きが大人しく見える能楽の仕舞。しかし、間近で先生の所作を観察すると、静止してみえるような型であっても実は力が釣り合って止まっていることがわかります。直線的な動きではなく、円を描くように動いているのです。
あっという間に時間は流れ、最後は振り返りと共有の時間。能楽の成り立ちや歴史、そして謡や仕舞の体験を通して、670年間も変わらず受け継がれてきた能楽の世界がすこし身近なものに感じられてきました。
能楽には、日本で生まれ育ったひとであれば誰もが共感できるどこか懐かしい感覚におちいるはずです。
わたしたちはそんな能楽を、観るだけでなく、そこから学びを得ることに意義があると考えています。能楽師の方々が数百年にわたり受け継ぎ、磨き上げてきたその精神性や粋を探求できること以上に素晴らしいことはありません。日常にはない能楽の楽しさ、奥深さに触れてみてください。
では、また。
最後に、ちょっとだけ宣伝を
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