かりんの青空 ~ニセコ旅行、舐めたらあかん!~
数年前、うちのパートナーとニセコ旅行に行って来た。
札幌に住む我々にはニセコという木々に囲まれ、ビルなどのない環境は癒しの土地になるに違いないと考えた。
温泉付きホテル宿泊とラフティングをすることを計画していた。
当初、彼はあまり乗り気ではなかった。
「ニセコって何か楽しいの?あんまりよくわからないんだけど。それにラフティングって昔の仕事でやった訓練を思い出すんだけど」
驚きである。
北海道でニセコなんて夏も冬もレジャーを楽しめる場所。コロナ前までは冬には海外から大勢のスキー・スノボをする人が来て、ごった返していた。
スキー場だけではなく、カフェの中や行く道すがらにも。
え、ここ海外なんですか?
と感じるくらい、すれ違う人がみんな他国の人ばかりだった。(もちろん、今は当時のように人はいないのです)
あんなに彼がブーブー言っていたので、行く前はどうか楽しんでくれますようにと祈る気持ちで当日を迎えた。
行ってみると、自然が大好きな彼はラフティングに大興奮!
「訓練とはぜんぜん違う!楽しかった!」
よかった、よかった。訓練が相当辛かったんだろうなと思いつつ。
そして、木ニセコというホテルを予約していたのでホテルへGO。
旅行の事前計画で、ラフティング後に夕飯の店を探すのは大変そうだと考えていた。
そこで、ホテルの夕食付プランを発見。ホテルお抱えのシェフが作るとあるのでそこで食べることにした。少々値が張ったため、これで不味かったどうしよう・・・と心配にはなったけれど。
結果、めちゃめちゃ美味しかった!
ミルクを使わないとうもろこしを漉して作ったコーンスープが最高だった。
当時、道民割があったので、少し良さげなプランの料理にしていた(いつもは選ばないような所をお得に!)。
お抱えシェフは間違いないと理解した。
何より彼を唸らせたのはニセコの地ビールだった。
「最高だ」
羊蹄山麗ビールだっただろうか。
5種類ほどあるビールを頼んで、すべてに感動していた。
「飯もビールも上手い。これは良い旅行だ」
あんなに懸念していた旅行を感動して喜んでいた。
それ以来、彼から出る言葉は、
「新しい冒険をしてみよう」。
ということで今夏は気球に乗ってみた。場所は以前と同じニセコ。
お盆真っ只中に行ったので、観光客はすごかった。
止まっている車も、レンタカーがかなり多い。ありとあらゆるところから来ている様子だった。
気球に乗るために並んでいる人の人数も想像以上だった。
気球に乗っていられる時間は5分とネットに書かれていた。
5分で楽しめるのだろうか。一抹の不安はあったけど、我々のテーマは「新しい冒険をしてみよう」なのだから良いのだ。
目の前で大きな大きな気球が浮かんでお客さんを乗せて高く昇る。
「おお!」
皆、喜びの声で観ていた。
予定通りに5分。
気球に乗っている映画やアニメを重ね合わせると。そのそれは、5分ではなく遠くまで飛んでいくイメージ。
『なんか、思っているのと違うかも・・・』
そう思ってしまう私の横で、彼は「思ってたより上がってなくない?」
くっ、言ってしまったか。
気球を提案したのは、私。その手前、あまり断言したくない。
期待は高まるけど、思っていたものと違ったらどうしようとの思いが出始めてきた。
かなり混んでいたので、なかなか順番はまわってこなかった。
彼は私が太陽に当たらないように横で影になってくれ、「暑い、そして早くホテルにもどってビールが飲みたい」と言い出し始めた。
すると、「お二人で来てる方、いますか?」との従業員の声が。
1回で乗れる人数は8人から10人ほどなので、2人参加の我々は運よく並んでいた順よりも前のファミリー(5人くらい)と共に乗ることになった。助かったぁ。
乗る時の重さも大事なようで。重さを左右均衡にするため、先ほど乗っていた人たちは一斉に降りてはいけない。
まず左側の人が降り、次に乗る人が左から乗る。そして、これまで乗っていた右の人が降りてから新しい人が右側に乗る。
そうしないと浮いてしまって乗る時に危険なようだった。
いやいや、気球は凄かった。
乗ってみると、頭の上が熱い。
なんか熱い、ではなく危険な事が起こらない?と心配になる熱さを放っている。
いや、初めはそんなに気にならなかったけど、気球が上がる瞬間にかなりの轟音をさせて熱を上げ始める。
怖くてそちらを見ることが出来なかった。
“そんなに高く上がらないのか”と思った気球は上がっていくと、見ると乗るとでは全く違った。
めちゃくちゃ高い。
一番高く上がったところで、“もう上げないでください。これ以上はちびってしまいます”というチキンな心が出てきた。
舐めていた、完全になめくさっていた。
「思っていた以上に上がるんだね」
と彼にいうと彼もすごく楽しそうな顔で頷いていた。
我々は大興奮だった。
そして、短いと思った5分はむしろ丁度よかった。降りて、もどる時には二人とも「やってみて良かった」と大喜びしていた。
ちなみに、一緒に乗ったファミリーの奥様は30代くらいのおしゃれな方で、「東京から来ました。ずっと乗るのが夢だったんです。嬉しい」と従業員の方とお話をしていた。
「新しい冒険をしてみよう」は大成功に終わった。
最後に、従業員のおじさんは我々2人に
「ね、思っていたより上がったでしょ」と一言、言い放った。
オーマイガー!!舐めていたことに勘づかれていたんですね。少し背筋が凍りました。
やっぱり素人が、舐めたらあかん!