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店長!絵里さん家のシャム猫です。

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小説:山下徹は銀行を辞めて花屋に。常連客の絵里は、いつもニコニコと病院清掃のお仕事をしている45歳おばさん。そんな絵里の飼っているシャム猫には秘密があり、、、。  猫のシャムが私…
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#小説

店長!絵里さん家のシャム猫です。 第3話 ~えん罪事件~

店長!絵里さん家のシャム猫です。 第3話 ~えん罪事件~

「ただいま、シャムちゃん。すぐに夕飯用意するからね」

「ニャー」
 かすみ草のにおいがする。ご主人様、約束通り、買ってきてくれたのね。

「一人で寂しくなかった?」

「ニャー」
 大丈夫よ、今日はお外に付いて行くのが億劫だったの。ゆっくり、のんびり過ごしたわ。

「そうそう、寂しかったね。このあと、楽しく過ごそうね」

 相変わらず伝わってないわね。いつものことだからいいけど。

 ご主人様

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店長!絵里さん家のシャム猫です。 第2話 ~花言葉~ 

店長!絵里さん家のシャム猫です。 第2話 ~花言葉~ 

 皆さん、私の事。覚えていてくれて?

 シャム猫の、シャムよ。
 もう、やっぱり、この名前のネーミングセンスは無いわよね。

 まぁ、うちのご主人様の続きのお話、ゆっくり聴いていってくださいな。

「おはようございます」
「あら、絵里さん。今日出る日だった?お休みじゃなかった」

 うちのご主人様は週に5回、電車で3つ先にあるハートフル病院で清掃員をしているの。清掃をやらせたら彼女の右に出る者は

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店長!絵里さん家のシャム猫です 第1話 ~神様は不公平~

店長!絵里さん家のシャム猫です 第1話 ~神様は不公平~

 たまに思い出す風景がある。

 僕の父親は寡黙で、たまに笑うと眼鏡の奥の目がとても優しかった。母は明るくて柔らかい香りのする人だった。

 その日は父の帰りが早く、玄関から声が聞こえると僕は喜んで駆けて行った。「おかえりなさい!」と言うと、父は手元に小さな袋を持っていた。
「お母さんのところへついて来て」
 そう言われ、父に頭を撫でられながら、台所で料理をしている母のところへ向かう。
「これ、綺

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