LOCALという「場」
朝晩めっきり冷え込むようになり、秋の気配があちらこちらで感じる時期になりましたね。ワクチン接種も5割を超え、緊急事態宣言も今月末で解けそうですかね❓ 社会に目を向けると、緊急事態宣言中とは思えない、国民をなおざりにした活動も、世間を騒がせていますが・・・
こうした喧騒とした社会とは離れ、季節を感じながら生活する、そんなスローライフな生活もいいかなと思う今日この頃です。まあ、のんびりと自分のペースで暮らせるのが、人として一番あっているのかもしれませんね。
今回のテーマは、のんびり・・・ではありませんw スローライフにも通じますが、「LOCAL」をテーマにお話をさせていただければと思いますので、よろしくお願いします<(_ _)>
◆都市開発をしても首都圏にはなれない
ひと昔前のミレニアムを迎えようとする20世紀終期に都市開発の象徴である、市街地再開発事業がピークを迎え、そこからは減少傾向にあるとは言うものの、いまだに事業認可を受けている地域があるそうです・・・(下の画像をクリックしていただくと、資料のリンクに移動します)
今までの都市開発は、行政や建築家が中心に計画を立て、その計画に基づきゼネコンなどが開発し、エンドユーザーが利用するという流れになっていましたが、エンドユーザーが多少の意見を言えても、根本の設計や計画に関わることができず、見映えや最新モデルなどと言ったわけのわからないものに費用をかけて、エンドユーザー目線に立たない建築をした結果、案の定、家賃や固定費などがかさみ、そのことで採算が合わず、撤退する事業者が多くなり、再開発などの失敗事例の一因となっているわけでして、昨年のVRS
設立1周年記念講演会でレクチャーしていただいた馬場正尊さん(株式会社OpenA代表取締役)の著書「エリアリノベーション」によりますと、エンドユーザー、つまり使う人から起点となって空間を作り上げていくことを提言されています。(下図は同書から引用)
地方都市が首都圏と同じような建築物やアミューズメント施設を建設しても、それだけで交通利便性の悪い地域を選ぶはずもないので、その地域の特性を活かすものを取り入れることが大切なんだと思います。しかし、残念ながら、いまだに「都市開発=地域活性化」と考える地方都市の権力者がいてるわけで、その方が先導して都市開発を進めたがるわけです。最近では、国の方でもインフラの維持が地方財政の安定的運営をカギを握ると考えており、特に将来的なインフラの再整備などには巨額な費用がいるわけで、行政コストを削減していかなければ、今後の人口減少化による税収の減収に対応できなくなるのは目に見えているわけです。いくら初期投資に国から補助金が出ても、ランニングコストの補助があるわけではないので、その分のランニングコストにどう効率的に対応していくか考えていく必要があるわけです。その辺のお金の話は別アカウントで書かせていただいた最新のnoteに具体的に書いていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
◆人口減少化が悪いことか?
人口減少に突入したのは、ご存知の方も多いと思いますが、2010年を境に減少が始まっていますが、少子化はもっと早い時期の1970年頃から少しずつ始まっていて、その時は団塊の世代や、平均寿命が延びたことなどで人口減少に歯止めをかけていただけで、それが団塊の世代が超高齢化になったことに伴い、人口減少につながっているわけです。
しかし、日本の人口が1億人を超えたのも1960年代に人口ボーナス期を迎えた最中の1967年、今から約50年少し前に超えたわけです。下の表を見ていただくとわかるように、この後少ししてから高齢化が進み、1980年代から少子化が始まったのがわかります。
世界的に見ても、人口1億人を超えている国は194か国中、日本以外では中国、アメリカ、ロシアなどの14か国で、ヨーロッパ諸国は軒並み1億人を切っている状態となっています。このことからも人口が減少することが悪いのではなく、人口ボーナス期を迎えた日本が、現在、人口オーナス期を迎えているのにも関わらず、人口ボーナス期と同じ取り組みを繰り返していることが問題なのです。
◆「LOCAL」という価値
「LOCAL」というと、田舎くさい、不便なとか思われたりしますが、こういう意味もあるそうです。
つまり、「LOCAL」とは、その地域にしかない風俗や自然、情緒、歴史、景観、文化、そして人の価値のことなんだと思います。都市開発は、その何十年・何百年継承してきた価値を壊し、いつでもどこにでも造ることができるありきたりの価値を、巨額なお金をかけて整備することにしかほかならないと思うのです。
確かに、老朽化で損傷が激しく、使うことが危険な建物はあります。しかし、それはその建物の寿命であり、そういう物件まで巨額な費用をかけて延命措置をして景観を守れと言っているのではなく、まだ使えるにも関わらず、寿命を全うしていない建物を取り壊し、都市開発するべきではないということなんです。
バリュー・リノベーションズ・さの(VRS)のアドバイザーの嶋田洋平氏が2年前のVRS設立記念での講演会で、「歴史はお金で買うことができない」と言われておりましたが、正しくその通りだと思います。過去に「LOCAL」についてnoteに書かせていただいていますので、そちらもあわせてご覧ください。
◆「LOCAL」を維持するための最大公約数
地方都市が維持できない理由の一つに、若い世代が都市部へ人口流出することが挙げられています。15歳から64歳までの生産年齢人口は首都圏や都市部へ行く傾向は確かに見られます。2020年8月上旬に日本財団が全国の17歳~19歳を対象に行った調査によりますと、都市部で暮らしたいと回答した人の半数弱が地方都市で育った若者でしたが、地方都市で暮らしたいと回答した85%以上が地方都市で育った若者でした。
地方都市で暮らしたいという理由には、都市部で暮らしたい理由と同じく「生活がしやすい」という理由が高いのが目立ちます。
しかしながら、若者が地方移住が進むかというと、その考えは否定的な意見も多かったようです。
コロナ禍で地方の時代だと思われている方も多かったですが、なかなかそれだけで地方移住が進むかというとそれほど期待が持てない状況ですね。
それでは、人口減少が止まない地方都市ではどのようにしていけばいいのでしょうか。
同じく日本財団の調査では、企業のリモートワークの推奨や若者の雇用確保という意見が多かったです。
これはあくまで17歳~19歳の若者にアンケートをとった集計であり、この対策をしたから成果につながるものではないのです。
これからの人口減少の時代に地方都市を維持するためには、すべての人が心からすべてを満足させる施策は不可能であり、それができたように見えても何年も継続できるものではない、まやかしの施策であることを頭においていただきたいのですが、誰か何かしらの制約を受けなければ、地方都市だけでなく、日本全体、全世界レベルでも維持できないということです。しかしながら、最小限の制約に抑えるべきですし、それが最大公約数の成果につなげていかなればならないのです。
◆「LOCAL」という「場」での産業
いま全国的に空き家が増え続けています。地方都市から人口が減少し、そのことで住まない家が増えてきていることも要因の一つです。住まなくなった家は損傷が激しくなり、そのことで景観が悪くなるだけでなく、危険になる可能性も高くなります。そうなると治安も悪くなったりして、きちんと手入れすれば寿命を全うできる建物も放置されることで、その寿命を短くなったりするわけです。人の人生と同じで、摂生すれば健康寿命が延びるのに、不摂生すると不健康になり、入院したり、健康な体を取り戻せなくなるのです。
まちも一緒です。空き家を増やすだけだと、景観が悪くなり、危険度や治安が悪くなりますが、空き家を居住用としてだけでなく、事業として活用していくことで、空き家が生まれ変わり、まちににぎわいが生まれるのです。
我々VRSはそういう活動をしており、衰退するまちを再生するために、空き家などを使って、まちで活躍する人を発掘・育成し、そういう人たちがまちで活躍していただき、まちの活気を取り戻す、そういう「まち再生事業」に取り組んでいます。
今回、商店街を舞台にした「つばさ通りリノベーション実践塾」という、ワークショップにも取り組ませていただきます。過去には「さの町場 まちやど実践ワークショップ」という名称で実施させていただいたワークショップを商店街に特化した形で取り組ませていただきます。(「さの町場 まちやど実践ワークショップ」の内容は過去のnoteをご覧ください。)
11月13日(土)14日(日)に、「つばさ通りリノベーション実践塾」を開催させていただくため、現在、鋭意調整中ですので、詳細が決まり次第、またお知らせします。
「LOCAL」という言葉って、なかなかいい言葉だと思いますが、みなさん、いかがですか? 某有名アイドルグループが歌って大ヒットした「世界に一つだけの花」に
というフレーズがありましたが、人も地域も同じだと思います。
それぞれ一人ひとり、それぞれの地域ごとが”Only One”なんです