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最初から最後までがんばらないコーヒー

「コーヒーを淹れよ」と社長から指令が下ると、二つ返事でコーヒーを淹れている。

仕事柄コーヒーを淹れるのが得意なので当然といえば当然なのだけど、そもそもコーヒーを淹れるのに時間はかからないと知っているからだ。


コーヒーを淹れるのにかかる90秒。


僕が1杯分のコーヒーを淹れるときの話だ。(多少前後するけど)

2杯でも3分もかからない。

意外と短いし、テレビCMの方が長いぐらい。

いや、テレビは全然見ないので正確ではないが、ともかく、そんなに時間がかからないことは間違いない。


コーヒー屋に勤め始めた頃、ドリップコーヒーを淹れるとき、常に緊張感があった。

おいしくないって言われたらどうしよう…という不安と緊張で、ドリップケトルを持つ手がよく震え、最初のお湯がなかなか出ない。

というのも、ドリップコーヒーに慣れていなかったから。


当時勤務のお店の状況を少し書いておくと、9割5分ぐらいのコーヒーはドリップマシン(ドリップケトルでお湯を注ぐ役割を担ってくれるマシン。※コーヒーメーカーではない)で淹れたものを提供していた。

これは客席数とスタッフ数の兼ね合い、どんなに忙しくても安定した味を提供するためなどの理由で、特定銘柄のコーヒーオーダーが入ったときだけハンドドリップ。

そんなお店事情もあり、圧倒的経験不足。

夕方のまかないコーヒーを自分でハンドドリップしていたものの、実践で特定銘柄の注文が入ったとき、僕の心の中では戦慄が走っていた(笑)

たぶん、他のスタッフも同様だったと思う。


正直なところ、当時は「抽出時間」を考えることがなかった。

ゆっくり、じっくり、時間をかけて丁寧に淹れるのが美味しいコーヒーだと思っていた。

だから、他店の店長が淹れ方を教えてくれたとき、度肝を抜かれた。

それまでの自分たちの淹れ方は何だったのかと(笑)


もちろん、時間をかけて丁寧に、が必ずしも悪いわけではなく。

どんな淹れ方であっても最終的においしければ問題ない。


ただ、おいしいから時間がかかるわけじゃないし、

時間がかかるからおいしいというわけじゃない。

ようは、どこに時間をかけて、どこに時間をかけないかが重要。

蒸らしに時間をかけるとか、ドリップ終盤には時間をかけないとか。

その結果、だいたい90秒。


最初から最後までがんばりすぎると、案外うまくいかないのはちょっと人生に似てる気もしますよね。

いつも何気なく淹れるコーヒー、肩肘張らずに90秒目安にトライしてみては?

90秒が絶対ってわけじゃないけど、ドリップコーヒーって、それぐらいあっという間にできるよって話。


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