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【#一日一題 木曜更新】5年後もまた同じ顔

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。

鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?

というのはかなり大袈裟だけど、鏡の中の自分の顔はけっこうイケてるのではないか?と、今朝も化粧をした。でもいい大人なので実は気がついている。それは「鏡に映るために用意した表情」だからなのである。

屋外にある鏡に不意に映った自分の顔にぎょっとするのは日常茶飯事。口角は下がり気味、ぼんやりした目のその顔が、普段の自分の顔である。まあそれでも、50年近く付き合ってきた自分の顔には愛着がある。

先日、運転免許証の更新をした。顔写真は当日に警察署で撮影するもよし、持ち込んでもよしとのことで、当日流れ作業撮影でがっかりするよりはと、ボックス型証明写真機で事前に用意していくことにした。

免許写真に関する注意書きを読み読み、やり過ぎない程度の細工を考える。クマ隠し、額全開にならない前髪、口角上げ、顔うつりが良くなる色味の上衣のセレクトなどなど。美容インフルエンサーが「証明写真は眉尻を主張!上瞼のまつ毛をアイライン埋めるッ!」と主張していたので従った。すなお。

そそくさと撮影ボックスに入り、分厚いカーテンをしっかりしめる。まずは撮影コース選択、と。通常撮影1000円、美白肌補正コース1100円。100円で美が買えるのに買わないひと、いる?  しかし撮影アプリ全盛のこの時代に100円のエフェクト。これをケチる人はいるのだろうか。価格に解せない気もした。

そしてお金を投入して思い出した。5年前の免許更新もこのボックスで顔写真を撮影した。5年前は肌補正コースがもう少し高かったような気がする。100円で済むようになったということは、もしかしたら5年の間に写真機にとって美白エフェクトが簡単な機能になったのかもしれない。

いざ撮影。制限時間内なら何度でもシャッターを切れる。顎を下げたり上げたり、口角の角度や目の開きを調整して、結局7回のやり直し。自分の往生際の悪さに笑いつつ、7回の中でいちばん好きな顔を選んでプリントした。

自宅に戻り、現在の免許証と比較してみる。来年50歳の顔である。5年でどれだけ顔つきに変化があるかとちょっとわくわくしたが、予想外にも5年前の顔となんら変わりはなかった。ここ数年、肌も体もアンチエイジングに全振りしていたし、よしよしそんなに老けていないかとちょっと気をよくした。

が、しかし。
ちょっと怖いことに気が付いた。

50歳近い女の顔が、5年前と同じであるわけがない。

スマホの撮影アプリほどではなくても、証明写真機もアプリ同様に過大補正機能があるのだろうか。もしかしたらこれを使えば、5年後55歳の女の顔も今日撮った写真の顔と同じになるのかもしれない。そうすると、45歳の女と55歳の女が同じ顔になることになる。

実際の老いに気が付かないまま、補正のきつい写真映りにいつまでも満足しているアラフィフ女。

これは、ちょっとしたホラーである。


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くにとみゆき(牡蠣ミユキ)
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