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薬と毒は匙加減

薬も処方量を誤れば毒になり得るし、毒だとしても使いようによっては薬になる。
つまり、普遍的に薬である物質・毒である物質は存在せず、使い方によってどちらにでもなり得るってことですよね。

例えば、いわゆる風邪薬を過剰摂取(オーバードーズ)すると、意識障害や呼吸困難、場合によっては心停止することもあるし、優れた鎮痛剤であるモルヒネを誤って過剰投与されてしまうと意識不明、痙攣や重篤な脱力感やめまいにつながる、とか。逆に猛毒として知られているトリカブトは、乾燥させると鎮痛剤や強心剤となるらしいとか。

重要なので繰り返し:薬は毒になり得るし、毒は薬になり得る。目的通りに使うには匙加減が超重要。


ビジネスにおいても同じことが言えるような気がしませんか、と。


たとえば会社の業績が芳しくないとして、それを改善するために投与する「薬」としてパッとアタマに浮かぶのはザックリこんなカンジ。(どれを投与するのかは症状によって異なるわけだけど、ってのは横に置いとくとして)

・業務プロセスの見直しとコスト削減
・市場戦略の再構築
・資金調達と財務管理の改善
・組織文化の改善と従業員のモチベーション向上
・持続可能性と社会的責任の強化

えーっと、じゃあ「コスト削減」って薬にフォーカスするとして、このコスト削減という薬、過剰摂取した場合にどういう副作用が生じるか、つまり薬として投与したはずのものが過剰摂取によって毒に転じるケースがありそうかを考えてみると;

製品品質の低下
原材料や部品の品質を犠牲にしてコスト削減を強硬してしまうと当然製品の品質が下がり、それによって顧客満足度は低下、結果市場競争力が無くなってしまう。

サービスの悪化
お客さま対応やアフターサービスの品質を下げることとコスト削減をトレードオフしてしまうと、当然顧客満足度が低下し、長期的な顧客ロイヤルティの喪失につながる可能性が高くなる。

生産性の低下
業務の生産性や効率性に悪影響を与えることは自明であるのに、業務基盤や設備をコスト削減を目的に過度に縮小や変更してしまうと当然作業の遅延や低下を招く。

リスクの増大
必要なリスク管理や予防措置の縮小とコスト削減のトレードオフは、当然企業経営の安定性や信頼性が損なわれる可能性が高くなる。例えば、安全対策や法的コンプライアンスを軽視し過ぎてしまうと機密情報漏洩などのリスクが増大する。

人材の流失
コスト削減を目的として、従業員が達成した成果に対する適正な報酬の支払いや、必要な労働環境の提供を怠ってしまうと、従業員の不満レベルは高まり、モラルの低下も招き、結果会社に必要な優秀な人材から順に流出してしまう可能性が高まる

長期的な成長の阻害
長期的な視点からは必要な投資や研究開発の費用すらもコスト削減の対象としてしまうことは、競争力を維持するための必要な成長戦略が立てられなくなる。

これらは、コスト削減の過程でのバランスの取り方が重要であり、ただ単にコストを削減するだけでなく、企業の長期的な持続可能性や競争力を考慮しながら施策を検討する必要があることを示しているように思います。「コスト削減」という薬を投与することによる効果が、如何に定量化しやすく、よってその実績が評価されやすいからといって、やみくもに「コスト!コスト!コスト!」と、あくまで経営の一要素しかないコストにのみにフォーカスすべきではなく、包括的な視点で意思決定をしていくことは必然じゃあないのかと思いますよね。


もうちょっとズームアップして、個人ベースで考えてみる。

例えばアナタが取り組んでいるプロジェクトが頓挫しそうになっている、或いはこの2wk解決できない問題にぶち当たってる。こういうとき、上司やその上の上司がアナタに対して;

・「いやーそういうケースの時、ボクはこういう対応をしたけどね。」
・「そんなことで悩んでるの?じゃあこうすればいいじゃん。」

というような「薬」の投与を勧めてきたとする。しかし、それはその上司にとっては薬だったのかもしれないが、アナタにとっては劇薬なのかもしれない。

その上司はある種の成功者、あらゆることがうまく嚙み合ってきたからプロジェクトを完了させられたり、問題を解決できたりしてきたひと。その結果としていまのそのポジションに就いているわけで。そういった「成功者バイアス」をベースとして示されるアドバイス、それをアナタはその上司と同じように実行するだけの経験やスキルを未だ持ってないのかもしれず、その薬が期待通りに作用せずに、プロジェクトの進行がより悪化してしまったり、問題がより大きなものとなってしまう可能性がある。

ここでは、上司がきちんとアナタの目線・立場にたって、そのポジションから実行できるちょっとだけストレッチした解決策(薬)はなんだろう?と一緒に考えていくことが肝要。

企業経営・日々の業務における「改善策=薬」は「毒」になり得るよね、ってことをリマインドして、薬として投与つもりが、実は毒だったなんてことにならないようにしたいよね、っと。

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