「忘れられた絵本」ショートショート
大学生の陽菜は図書館の隅で、一冊の古ぼけた絵本を見つけた。タイトルも作者名もないその本は、誰かに手に取られることを待つように、静かにそこに佇んでいた。ページをめくると、不思議な温かさを感じる色鮮やかなイラストが広がり、次の瞬間、部屋の空気が変わった。
「ようこそ、物語の国へ!」
突然、ウサギが目の前に飛び出してきた。陽菜は目を瞬かせた。ウサギは大きな耳をぴょこぴょこさせながら、歌を口ずさむフクロウと、影のようにぼんやりした人影を紹介した。
「僕たちはこの絵本の住人さ。だけ