和田誠 『お楽しみはこれからだ 映画の名セリフ PART4』 国書刊行会
『PART3』を読んだときに、もういいかなと思ったのだが、既に本書を予約注文した後だったので手にすることになった。予約しておいてよかったと思った。尤も、予約しなくても普通に書店で買うことができるとは思うが。
取り上げられている作品の時代がだいぶ近くなって1970-80年代のものが多くなり、観たことはなくてもポスターとかチラシに見覚えのある作品があって、本書自体がこれまでのシリーズよりもなんとなく身近に感じられるのが良い。文章も読みやすくなっている気がする。と、思ったら「あとがき」にこんなことが書いてある。
書く方が楽になった分、読む方も楽になった、というわけでもないのだろうが、PART3は確かに少し読みにくかった。内田百閒に言わせれば、忘れたことも含めてリアリズムなのだから、書きにくさを読みにくさとして味わうことにリアリティがあるとも言える。しかし、読みやすいに越したことはない。
あとがきについて触れたついでに、もう一つあとがきに書かれていたことに触れておく。
こうやって何度も観るから映画のことがなおさら好きになったり、映画のことから様々のことに発想が広がって、考えることの幅や深さが大きくなったりすることもあると思う。何かが好きだと言うとき、その何かに対する熱量が本書が書かれた頃に比べると今の時代は低い気がする。
こうやって何かについて文章を書くとき、疑問に思ったことや「あれなんだったっけかな」というようなことを調べるのにネットは便利で重宝している。でも、ネット検索が今ほど手軽ではなく、検索できる内容もテキスト情報に限られていた30年ほど前の修士課程の学生だった頃、課題や論文を書くのに図書館で悪戦苦闘して調べ物をしたり考え事をしたりしていた頃の方が、手にした情報や考えが自分の中で熟成したものになっていた気がするのである。それと、お世話になった図書館の司書のおばさんの笑顔が今でも記憶に刻まれていて、その笑顔の記憶のおかげもあって、アナログの時代が豊かに感じられるのかもしれない。
マクラが長くなったので、今回は付箋を貼ったセリフを並べるだけにする。能書きは無し。
どのセリフが何という作品の誰のセリフであるかは敢えて書かない。原語がどんなものであったのか、気にならないこともないのだが、日本語字幕や日本語のセリフにしたもので外国映画を語るところに面白さがあるとも思う。改めて思うのだが、外国語から起こした日本語というのは、やはり日本の日本語とはだいぶ違う。いろいろ説明をつけようと思えばつけられるのだろうが、誰もが納得できる説明というのは無理な気がする。
本書ではイングリット・バーグマンのことにかなりページが割かれており、上に引いたセリフにも彼女ものがいくつかある。『カサブランカ』は何度か観たが、他の作品を観た記憶がないので、本書を読んでAmazonでDVDを何枚か注文した。
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