書評「反共感論 −社会はいかに判断を誤るか−」
真面目なセラピストは、訓練に伴う苦痛を訴える患者に共感して、その訓練を選択しなくなるかもしれない。
患者に寄り添うセラピストは、家に帰りたいという患者の思いに共感して、何とか自宅に退院できないかと模索するかもしれない。
これは直感的に理解できる。しかし、理性的に熟慮してみるとどうだろう。
本書は刺激的なタイトルのとおり、道徳的な領域における「共感」に焦点を当てて、その問題を指摘している。
例えば、共感にはスポットライトのように視野を狭め、近視眼的になりやすい性質がある。
私たちのクライアントは、目の前の患者だけとは限らない。
偏向的な共感は信頼関係を損ねたり、適切な支援を困難にしたりすることさえあり得る。
「共感はセラピストがクライアントにではなく、クライアントがセラピストに覚えるべきものだ」と著者は述べている。
カール・ロジャースを引用するまでもなく、私たちは共感的理解の重要性を教育されている。
同じように、共感のもつ負の側面にも私たちは目を向けるべきであろう。
ポール・ブルーム 著(2018年)
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