思わぬ書初め/年間長期企画のご案内
【小説】思わぬ書初め
「本当にやるの?書初め」「うん、エドワードやるよ。Let’s Try!kakizome」
1月2日が書初めをする日だと知った英国人女性ジェーンは、恋人のエドワードこと江藤に書初めをすることを提案した。
「わかった。でも筆や墨とか何も持っていない。買ってこようか?」と江藤は立ち上がったが、ジェーンは江藤の前に立ちはだかり首を横に振る。「エドワード、わざわざ買いに行く必要ないわ。これでやりましょ」とポケットからジェーンが取り出したのは、筆ペンである。
「筆ペン?それで書初めするの」ジェーンは大きくうなづく。
「そう、だってわざわざないものを買ってきても、毎日するわけじゃない。だったら似たもので、雰囲気を味わうだけで十分。筆ペンで書初めよ」
江藤は口元が緩み、内心安心した。「筆ペンなら、和紙などもいらない。普通の紙でもいいね」「そう、ほら筆ペンが2本あるから、お互い好きなのを書いて見せ合いしましょう」
そういってジェーンは、筆ペンを一本を江藤に渡す。「紙は?」「書けたらなんでもいいわよ」
江藤は、ここで何を書こうか迷ってしまった。「普通なら、『謹賀新年』『日の出』とかそういう正月らしいものがいいに決まっている。いや、まてよ。そうだ夢だ。昨日夢見たんだ初夢。よしそれを書こう」
ここで初夢の内容を思い出そうと頭をひねる江藤。「うーんと、えええっと。確か暗闇にいたんだよ。その目の前には白っぽくて高い山が見えた。ありゃ台形の形をしていたぞ。なぜかその山にひとりで歩いていくんだよな。疲れてきたと思ったら、茄子かなあれって。なんか木の枝に垂れていた実が気になったんだよな。それで手を伸ばそうとしたら、突然上から大きな鳴き声、そして大きな鳥が目の前に、ああ!」
江藤は思わず声を出してしまった。そして顔色が青くなる。「エドワード?大きい声出して。顔色悪いけどどうしたの」心配したジェーンが肩まで伸びる金髪を振りかざしながら声をかけてきた。
「ああ、いや大したことない。ゴメン心配かけたみたいだ」江藤は白い歯を見せてごまかす。
だが内心は穏やかではない。江藤は昨夜この悪夢にうなされていた。そして思い出したくないものまで思い出してしまったのだ。
「あの鳥の鋭い目は怖い、猛禽類だよ。でもあんなに大きいと化け物。俺上からさらわれかけたし」頭の中でまたイメージしては顔色を変え、ついには汗まで流れてくる。
「ああ、やめようあれは夢。忘れよう忘れよう。では何書こう。うーんと。まあ真剣に考えるのはよそう。あ、そうだ。これがいい」
何かをひらめいたのか、江藤は紙に筆ペンで何かを書き始める。「エドワード書初め出来た!」ジェーンの声。「おう、できた」
ジェーンは江藤に近づいてくると、「じゃあお互いの書初めを見ましょう。先にエドワードからどうぞ」
「え、なんで。ジェーンから見せてよ。君が提案したんだし」しかしジェーンは首を横に振って「いや、やっぱりこれは日本の文化だから、日本人から先に手本を見せて」
江藤は少し険しい表情になり「何でこういうときに、日本人なんだ。それだから白人は」「エドワード!それ言うな!」ジェーンは険しい表情で言い返す。
「わかった、公平にじゃんけんで決めよう」「OK!それがいいわ」ここで「じゃんけん!」の合図で出したもの。江藤は力強い握りこぶしを出した。
だがジェーンはそれを包み込むように手を大きく開け、指同士の感覚が開いている。
「やったー私の勝ちね。はいエドワードどうぞ」
江藤は、苦笑いを浮かべ「わかった。じゃあ俺からな」といって裏返していた紙を見せる。
「なにこれ?自園って」「自は『じ』だろ、園は『えーん』。つまりジェーンだ」だがこれを聞いたジェーンは、江藤の予想に反して表情が変わらない。全く変わらないから江藤は焦る。「あれ、不気味だ。いつものように喜怒哀楽がない。何だろう」
「では私は、こちら」と、ジェーンが同じように裏返していた紙を表に出すと次のような文字が書かれていた。
「う、ぷっ」思わず笑いを抑える江藤。「な、なに、これ」
「エドワード。そのままだけどね。本当は初夢のこと書こうと思ったけど、内容忘れちゃった」と言ってジェーンは照れながら舌を出す。「ぷ、ファハハッハア!」江藤は耐えられず噴き出した。
「初夢って、もう同じようなこと考えているし。でも、あえて漢字を使わずに、ひらがな、カタカナ、アルファベットで来たか。もう書初めなのか落書きなのか区別つかないよ」
「いいんじゃない。インターナショナルっぽくて」「まあな。別に書初めを漢字でなければならない理由は無いな」「そう、もうひとつ」と言ってジェーンは筆ペンを手に紙に何か書きだす。
「やっぱりこれかな」ジェーンが、今書いたのはこれである。
「Reiwa3、ああ令和三年ね。いいんじゃない。それなら干支の牛も英語で書初めしないと。えっとビーフだっけ」「エドワード違う。それは牛肉!牛はCowだって」と笑うジェーンであった。
2021年・年間長期企画「皆さんの画像をお借りします」を始めます
2021年になったので企画をやってみようと思います。昨年のような「旅のようなお出かけ」という大掛かりな企画はさすがに大変なので、気軽な企画にしました。
これは、皆さんが登録している「みんなのフォトギャラリー」の画像を使って私がその画像から小説を創作しようというもの。
過去にはこんな小説を書きました。
今までは画像を所有している方が実施していた企画に、私が参加するということでしたが、今回は逆に私のほうから画像を貸してくれる人を募集するというものです。
もし所有されている思い入れのある画像があって、それにストーリをつけてみたいという方がおられましたら、私のほうで創作してみます。
募集期間:今から2021年12月31日24時まで(つまりほぼ1年間)
参加方法:この記事にコメントをしてください。画像のリンク先とかを添えてください。その画像を見て私が創作します。また「こういうイメージ」とかの希望も承ります。(ただし可能な限りなので、できないときにはごめんなさい) 原則は「みんなのフォトギャラリー」ですが、それ以外の場合は別途相談に応じます。
使用画像:静止画像なら基本的にどれでもOK(写真、絵画、心象画、デザイン画、創作墨字などの文章など。ただし18歳未満に不適切な画像はお控えください)
完成後: #皆さんの画像をお借りします というタグをつけて私が小説を投稿します。(今までの傾向から2000から5000文字の間くらい)
小説の後に画像を貸してくださった方の紹介。その後専用のマガジンに格納します。
注意点:参加していただいたらできるだけ早く創作しますが、他の創作物との関係や私のインプット能力等により創作に時間がかかる場合があります。なお、参加する皆様の所有する画像を元に創作しますが、小説そのものは私に著作権が帰属します。その旨ご了承ください。
ロングラン企画なので、参加回数は何度でも構いません。お気軽に参加してくだされば幸いです。
こちらもよろしくお願いします。
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シリーズ 日々掌編短編小説 347
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