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親と子、それぞれの目線で考える。親子関係を描いた2冊の本レビュー

2024年最後の3連休が終わってしまった…。あとは年末年始まで走り続けるのか…と思いつつ、この3連休は2冊の本を読んだのでご紹介します。

奇しくも、読んでみたら親子関係がテーマとなった2冊だった。片方は母と娘、もう片方は父と息子の物語。どちらもYouTubeで紹介されていたのをきっかけに購入。

『母という呪縛 娘という牢獄』

母という呪縛 娘という牢獄

1冊目が齊藤彩さんの『母という呪縛 娘という牢獄』。ノンフィクション。

この事件はテレビを持っていない私でも知っていた。当時の記憶を思い起こすと、医学部受験のために9浪した娘が母親を殺害にしてバラバラにしたこと、当時のTwitterで「モンスターを倒した。これで一安心だ。』と犯行直後にツイートしていたことを報道されているのをみて、何も深く考えずに(世も末だな…)なんて思っていた気がする。

センセーショナルな事件だったけど、忘れられるのも早いのが今の時代。そんな事件があったことは頭の片隅に追いやられ、もはや記憶からも消えかけていた。

実際に読み始めて3〜4時間で一気に読了してしまった(普段、私が一気読みすることはめったにない)。
引き込まれて読んだあと、事件に対する解像度が高まり、私の抱く印象は大きく変わった。

こんなにも悲しくて切なくて報われないことがあるのか…という現実の無情さ。この母娘の周りにいた人たちがもっと介入していたら、この悲惨な事件は起こらなかったのではないかというやりきれない思い。

この家庭環境は異常なのか?
確かに異常な部分はあるのだと思うが、どんな家でも一歩間違えれば近い状況になることはあり得るのではないか。

私自身も娘であり、母という存在が身近だからこそ、この事件が遠い場所で起こった無関係な時間とは思えなくなった。

緻密な取材をもとに書かれたノンフィクション。母と娘のどちらかに肩入れすることなく、著者の考えなども極力挟まず、事実を伝え読み手の感じ方や受け取り方に委ねられた内容にとても好感を持ったし、フラットな目線で最後まで読むことができた。

殺人という絶対に犯してはいけない罪。
しかし、追い詰められてもう進めなくなったとき
こういう形でしか脱出できないことがあるのも現実なのかもしれない。
そうなる前に周りの助けがあればよかったのに…というのはたらればである。

でも救いもあった。父親が罪を犯した娘をサポートして寄り添っていたことに、私はかなり救われた。親が味方でいてくれる安心感は何物にも変えがたい。

親子とはなにか。罪とはなにか。生きるとはなにか。

そんな壮大なテーマを考えずにはいられない一冊となった。

『世界でいちばん透きとおった物語』

世界でいちばん透きとおった物語

2冊目が杉井光さんの著書『世界でいちばん透きとおった物語』。

これから読む方には一つだけ伝えたいことがあります。

どうかこの本は電子書籍ではなく、絶対に紙の本で読んでください。電子書籍で読むぐらいなら読まない方がいいです。

帯にそんなことが書いてあって、本屋で手に取ったことを思い出す。その理由がわかるのは最後の最後。これぞ読書の醍醐味。

読み終わったあと、20分ぐらい余韻を楽しみむした。

内容は父と息子の物語。亡くなった小説家の父の遺作を探しながら、会ったこともない父親の輪廓が少しずつ浮かび上がっていく話。

最初から最後まで読むなかで、親子の深い愛情を感じた一冊だった。

言葉にできない確かな思いを人と人の繋がりの中で感じられる。

それってぬくぬくしたあったかい毛布で心が包まれるような、幸せな気持ちになれる瞬間だなと思う。普段は意識することもないし、感じることもない。でも、何かの拍子にじわっと心に流れ込んでくるあたたかいもの。それを随所に感じる小説だった。

後半につれてわかっていくタイトルの意味。今までない読書体験。紙の本はやっぱり好きだなと改めて思った一冊でした。

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