蝶とザクロ。
今年は蝶が飛ぶ姿をたくさん見た。4月から7月末まで母の家に通っていたせいだ。3月、竹子の東側の家は住人がなくなりたて壊しになった事もあり、春先にはモンシロチョウが数羽飛び交い、5月には緑色のアイツが、柑橘系樹木に密集し閉口した。さら地になった東側から風が吹き抜け、初夏にはアゲハチョウ、珍しいクロアゲハもみた。
それにしても、庭木の世話は大変だ。
天気予報は毎年のように「今年は猛暑です」という。
5月にいい香りを漂わせてくれたジャスミン、7月は青い花弁が可憐なガクアジサイ、アサガオはちょっと遅れて茎をのばし、7月中旬まだつぼみが無かった。そんな花の名前、花の世話を教えてくれた竹子だったが、7月末には大腿骨骨折のため今年二度目の入院となってしまった。そして、「猛暑」である。主のいない庭の植木の世話のために毎日通った。ときどき家族が手伝ってくれたものの、朝行くのはかったるい、昼行くのは朝だくだく、夕方行くのはヤブ蚊に刺される。植物も生きてるとはいえ、モノ言わないそれらのために毎日通うなんて苦行以外何物でもない。水が足りずにアサガオが貧弱な花しかつけなかった。虫よけできずミカンの若木は緑色のアイツにやられた。ごめんね、だけどどうしようもない。仕事もあるし、竹子の病院にもお見舞いにも行かねばならないのだから。
10月に退院後、花咲くザクロに竹子は驚く。「こんなにザクロが花をつけたのは初めてや。こぶし位デッカイ実ついたらええのになぁ。」と顔をほころばせていた。日照と水やり(ときどきサボッたが)のおかげさまだ。
そうして、たわわに実ったザクロを見たとき、春先の蝶を思い出した。花の蜜を吸い、卵を産み付ける蝶、自然の営みはどんな年も休まずずっと続くのだ。
さて、いままた再入院した竹子へ、おおきなザクロを持っていってやろう。