プアン/友だちと呼ばせて
ウードには明日がない。
悔いをあとに残さないため、親友ボスに「一生のお願い」をする。
ボスは明日をあきらめた。
家族を、恋愛を、信じない体質になってしまった。親友ウードの最期の願いごとをかなえるためにタイへもどってきた。
NYからタイBKへ。最初は甘酸っぱくクリーミー、飲み干すにつれビターな後味、男ふたりの青春カクテル。
さて、旅路の最終目的地は…。
音楽がアツい。
きゃぁ、オープニング90秒のカットで落とされて、スイッチ入ってしまう。予想よりもはるかに遥かに上質!「バッド・ジーニアス」もスリリング&どんでん返しで素晴らしかったが、カクテルとBGM、キャラ立ちまくりの元カノ軍団、おしゃれな小道具使い、マジやば、最高にキマッちゃてる!
エンドロールの主題歌 Nobaby Knows ♪涙にじんで恥ずかし気なく嗚咽まで出た。映画で泣くのは久しぶりやわ。MVとにかく観てほしい。
注:日本版ではオリジナルのタイ語ではなく、英語吹き替え版が流れる
デジタル世代のアナログ愛
ニューハーフや売人達がうごめく不夜城⁉︎ ではなく、ウードのバンコク実家はさびれたレコード店。部屋一面のLPレコードがアラフィフの私には貸レコード屋のようで懐かしさが蘇った。
そして、フォトグラファー卵の元カノへ返す1本のネガフィルム!現像するまで内容が見られない、二度と撮り直しが効かない、その唯一無比さを切取って見せる、あざとさ。あぁやられちゃったわ。
チェンマイ、パタヤ、と地方都市をがたごと走る旧式のBMW、そのポンコツ具合が懐メロばかりのラジオDJだったウードの父に重なる。カーナビでなくアナログのカセットテープも、第二部に続く“懐メロラジオ”がきっかけで男女の距離が縮まる設定も上手い、ストーリーこなれ上級者や。
総指揮ウォン・カーワイ
90年半ば、アツかった香港映画。その先端はWKWこと王家衛監督だった。
それはデカダンスの薫り。映像はきらびやかな香港を映しながら、ざらざらと彩度が低く、裏路地や寂れたアパートなど猥雑さの中で、ひと恋しいのに不器用で、ぎゅっと抱きしめたくなる主人公たち。あの頃「WKW何回観た?」はトンガリ女子の合言葉になる程だったのよ。
どの映画も、物語は今だけ、今夜だけ、刹那な一瞬を切り取った断片を繋いだもの。
一方、本作のポスターは青空と男ふたりの旅路。WKW監督の「ブエノスアイレス」を彷彿させると思っていたところ、両監督のインタビュー記事で、マジで間違ってなかったと知った。詳しくは下記を参照ください。
ラスト近くWKWのダメだしシーンについてこちら
”プアン“は、2022年my best movie 上位に堂々ランクインの超・超・推し映画
主役二人がタイ人らしくなくて、私の知人タイ人は皆小柄w、でも私の知人タイ女性は皆一途だから、まぁ合ってる。おまけに、どうでもいい情報だけど、ウードが使ってた「鼻スースー」グッズをタイ人は皆持ち歩いてるんだよなぁ。
プアン/友だちと呼ばせて
原題:One for the road (タイ/ 2021年)
監督: バズ.プーンプリヤ
製作総指揮:ウォン.カーワイ
字幕: アンゼたかし、監修:高杉美和
★★★★▲ 4.5/5
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