「自走できるエンジニア」を育てるための仕掛け
エンジニアリングチームが持続的に成長し、高い成果を出すためには、「自走できるエンジニア」の存在が不可欠です。自走できるエンジニアとは、指示を待たずに自分で考え、行動し、問題を解決できる人材のことを指します。
しかし、エンジニアがこのように主体性を持って動けるようになるためには、適切な環境や取り組みが必要です。本記事では、一般的な方法論を解説しつつ、僕が実際に試してきた取り組みを具体例として紹介します。
自走できるエンジニアとは?
自走できるエンジニアの特徴は次の通りです:
必要な情報を自分で探し、学ぶことができる。
チームや会社全体のゴールを理解し、その中で自分の役割を考えられる。
成果物やプロセスに責任を持ち、課題に対して主体的に取り組む。
このようなエンジニアが増えると、チームの生産性は飛躍的に向上し、マネージャーやリーダーがすべてのタスクを指示しなくても、高い成果を生み出す組織へと進化します。
自走を促すための3つの取り組み
1. ゴールを共有し、視座を高める
自走できるエンジニアを育てるには、まず「ゴールを明確にすること」が欠かせません。ゴールはただの指針ではなく、エンジニアが自分の役割を理解し、行動に意味を見出すための出発点です。
チームが同じ方向を向いて動くためには、「自分のタスクが全体のどこに繋がるのか」を理解する必要があります。これを怠ると、エンジニアは指示通りに動いているつもりでも、いつの間にか全体のゴールから逸れてしまうことがあります。実際、方向性が曖昧なまま進めたプロジェクトが途中で頓挫する原因の多くは、「各メンバーの認識にズレがあった」というケースです。
そこで重要なのが、「ゴールを共有するだけでなく、全員がその意義を理解すること」です。たとえば、会社全体のビジョンをチームの目標に落とし込むことで、メンバー一人ひとりが「自分の仕事がどう会社に貢献しているのか」を実感できます。この視座の高さが、エンジニアの自走を支える基盤となるのです。
2. 学びの機会を与える
エンジニアが自走するためには、「知識」と「判断力」を身につけるための学びが欠かせません。特に、個人の学びをチームや組織全体の成長に繋げる仕組みが重要です。
僕のチームでは、業務時間内に学びの時間を確保し、メンバーが自主的に選んだテーマで勉強会を開いていました。あるメンバーは新しいフレームワークの調査結果を共有し、別のメンバーはプロジェクトの課題をテーマにディスカッションをリードしました。こうした活動が、チーム全体のスキルアップに繋がるだけでなく、個々のエンジニアが「自分で学び、他者と共有する」意識を育むきっかけになりました。
さらに、学びの成果を社内のナレッジベースやブログにアウトプットする仕組みを整えました。これによって、過去の知見を誰でも引き出せるようになり、情報共有の効率が大幅に向上しました。学びを「自分のため」から「チーム全体のため」に広げることで、エンジニアとしての成長に留まらない価値を生み出せるのです。
3. チャレンジを奨励し、失敗を許容する
自走できるエンジニアを育てるには、「挑戦する経験」と「その結果から学ぶ機会」の両方が必要です。特に、失敗を恐れず試行錯誤できる環境は、主体性を育む上で欠かせません。
印象的だったのは、あるプロジェクトでメンバーにタスク全体の責任を任せたときのことです。「どう解決するかは自分で考えてみてほしい」とだけ伝え、具体的な進め方はすべて彼に委ねました。初めは迷う場面もあったようですが、進め方に工夫をこらし、最終的にはチーム全体が納得できる結果を導き出しました。この経験を経て、彼は次のプロジェクトでも積極的に動き、リーダーシップを発揮するようになりました。
もちろん、失敗する場面もあります。あるメンバーが大きな課題を一人で抱え込み、途中で進行が止まってしまったことがありました。そのときは1on1で「どうすればチームの力をうまく使えるか」を一緒に振り返り、次のタスクではメンバー全員を巻き込む形で進めてもらいました。このような経験を重ねることで、エンジニアが失敗を恐れず動ける土壌が少しずつ育っていきます。
僕の経験談
僕がエンジニアリングチームを育てる中で特に注力したのは、「チーム全員が同じゴールを目指し、自ら動ける状態を作ること」でした。そのために、まず会社のビジョンを基に、テクノロジーチーム専用のビジョンを策定しました。これを全員と共有するためのプレゼンを行い、「僕たちはなぜここにいるのか」「どこへ向かうのか」を全員で理解し合えるようにしました。
次に、このビジョンを具体的な行動に落とし込むため、いくつかのミッションを設定し、それぞれのチームに割り当てました。それぞれのチームが、自分たちでゴールを設計し、それを達成するための方法を考えるというものでした。たとえば、スキルの棚卸しを行い、足りない部分を補う計画を立てるチームもいれば、コードベースのリファクタリング方針を考えるチームもありました。このような取り組みを進める中で、エンジニアたちは徐々に「自分たちの仕事がチーム全体の成果にどう繋がるのか」を意識するようになりました。
さらに、ミッションプロジェクトが進む中で、成果を共有する場として全社向けのプレゼンを実施しました。ここでは、エンジニアリングの取り組みが「ビジネス全体にどう貢献しているか」を、他職種のメンバーにも伝えることを目的としました。このプレゼンの準備を通じて、エンジニアたちは技術的な内容を噛み砕いて説明する力を養い、他職種とのコミュニケーション力を高めるきっかけを得ました。特に、「こういう背景があるなら営業戦略にも活かせそう」といったフィードバックが得られたことで、エンジニアたちは「自分たちの取り組みが会社全体の成功に直結している」という実感を持つようになったんです。
一方で、全員がスムーズに進んだわけではありません。ときには、自走と独りよがりの違いを理解できずに、他のチームメンバーとの足並みが乱れる場面もありました。その際は1on1で「どうすればチーム全体のゴールに貢献できるか」を話し合い、改善策を見つけるためのサポートを行いました。
こうした取り組みを通じて、エンジニアたちは「自分で考え、動く力」を身につけるだけでなく、チーム全体と連携しながら成果を出す感覚を得ることができました。この一連のプロセスを振り返ると、「自走するエンジニア」とは単に自由に動ける人ではなく、方向性を理解し、それに沿って主体的に行動できる人だと改めて感じます。
まとめ
自走できるエンジニアを育てるためには、ゴールの共有、学びの機会の提供、挑戦の奨励といった取り組みを整えることが重要です。そして、それをリーダー自身が実践し、チームに浸透させていくことが鍵になります。
エンジニアの成長がチームや会社全体の成長に繋がる。その第一歩を一緒に作っていきましょう!