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#1 どうして人を殺しちゃいけないのですか?
「どうして、人を殺しちゃいけないのですか?」
26年前の23時のニュース番組での言葉だ。
僕は小学校高学年だったと思う。子供がそんな深夜帯のニュース番組をどうして観ていたのだろうか今にしてみれば不思議で仕方がないが、テレビの中でお兄さんが白髪のおじさんに訊いていたのを覚えている。
ニュースは当時、神戸で酒鬼薔薇聖斗と名乗る少年Aが起こした猟奇殺人で持ちきりだった。
朝から晩まで少年Aについて報じ、被害に遭った児童の年齢が近いこともあって、ニュースを食い入るように観た。
どうして、人を殺しちゃいけないのですか。
今もその言葉がこだましている。
人を殺しちゃいけない法律があることなんて誰もが知っている。
刑法199条には人を殺した者には死刑又は無期もしくは5年以上の懲役に処すると定められている。
しかし法律は、時の為政者や生まれた国によって大きく異なる。国家が脅かされたら、敵国と暴力で以て争い合う。為政者の思惑に依って暴力に頼った現状変更や弾圧もある。
国家が法の下の平等に於いて殺人をおこなっている事実。死刑制度だ。
その死刑だって2人殺そうと、19人殺そうと、1人の命を以てでしか償えない不平等がある。
殺人者が犯す罪も不条理だが、公権力が行う罰も不平等でしかない。
殺してはいけないと縛りをかけても、縛りを破ったら殺すことによって罪を償わせる。
人間は、人間以外の生物を殺めて生活している。
そのことを差し置いて、どうして個人が、人間を殺してはいけないのか。
他の生物を殺して何食わぬ顔をして暮らしているにも関わらず、何故人間同士が殺し合うのはいけないのか。質問者の疑問にはそう云うニュアンスが含まれていたと思う。
そのニュース番組では明確な答えは出なかった。
肩書きは立派な大人達が出演していたけれど、耳障りの良い、誰もが知っている道徳論や秩序について論じることはあっても、人を殺したいと思うような人間が納得するような本質的な答えはなかった。
放送後にとある作家も一般的な道徳論を論じた上で、どうして殺人をしてはいけないのかと云う質問者に対し、そういった発言をする質問者の人格形成そのものに問題があると指摘した。
質問者はどうして殺人をしてはいけないかと云う動物的本能の部分に疑問を抱いているのである。それを、非道徳者だと非難した作家。
そして大人達はそれまで通用していた道徳論を繰り返した。
仮に同じことを少年Aに説いたって、殺すことをやめたりはしないだろう。
人の命はそんなに大事ですか。蟻やゴキブリと一緒。猫を殺すのと人を殺すのとどう違うんですか。少年Aは取調べでそう供述した。
落ちている財布を拾って自分の物にしてはいけない。それは皆が守っているから社会として成立している。もし人の目を気にせず堂々と自分の物だと落ちている財布を奪う者が現れることを、社会は想定していない。
近年そういう人間は増えるている。拡大自殺や無差別殺人も散見される。いわゆる無敵な人を前にして、法律があるからだとか、道徳を説いたところで、殺人の抑止になるだろうか。
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今日もまた凄惨な事件が起こる。
人を殺してはいけない理由を教えてあげなくちゃならない。
世にまた酒鬼薔薇聖斗を出さない為に。
神戸連続児童殺傷事件から26年後改めて問う。
どうして、人を殺しちゃいけないのですか?