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【読書15】11月に読み終えた本~不完全燃焼だった読書の秋~
あっという間に12月も中旬に。
というわけで今さらだが11月の読書を振り返っておきたい。
読書の秋!ということで張り切っていたものの、結局忙しさにかまけて思ったよりも読書が捗らず何とも不完全燃焼な読書の秋となった…(無念)
①小川 洋子 著「密やかな結晶」【再読】
読書の秋といえば必ず手に取りたくなる小川洋子さんの作品。
今年は小川洋子さんの作品の中でも特にお気に入りの「密やかな結晶」を久しぶりに。
何かが少しずつ消滅していく架空の島を舞台にした美しくも残酷な物語。秘密警察による記憶狩り、民の餞別、そして迫害…その中で慎ましくも懸命に生きた後に残るものとは?
私たちはいつか必ず消滅するけれど、消滅した後も”密やかな結晶”は残り続けると信じたい。密やかな結晶を奪うことは誰にも許されないのだから。
決して明るい物語ではないのに、一文一文がとても美しくてうっとりとしてしまう不思議な物語。この物語自体がまるで密やかな結晶の集合体のようだ。
おじいさんが大好きすぎて毎回涙してしまう。
②三浦しをん、西加奈子ほか「わたしの名店」
★★★☆☆(3.5)
様々な分野で活躍中の豪華28名(ガチで豪華!)が「名店」のお気に入りの一皿について綴る美味しいエッセイ集。
「名店」の定義は人それぞれで、紹介されているお店はジャンルも価格帯もバラバラだが、共通しているのはそれぞれにとって特別なお店であるということ。誰と過ごしたか、どんなタイミングで訪れたか、どんな出会いがあったか…大切な思い出と結びついて食もまた大切な記憶の一部となる。
挿絵も可愛いし、食いしん坊にはたまらない一冊だった。
③松浦寿輝 著「わたしが行ったさびしい町」
★★★☆☆(3.5)
根暗なせいか、はたまた本当のさびしさを知らないせいか、私は”さびしい”という感覚が嫌いではない、というかむしろ”さびしい”という感覚に心惹かれることすらある。
そんな私が吸い寄せられるように手に取ったのは、私人で小説家の松村寿輝先生の「わたしが行ったさびしい町」
まさにタイトルのとおり、松村先生がこれまでに訪ねた20のさびしい町について記録ではなく、記憶の断片を寄せ集めて綴るエッセイ集。町の紹介というよりはさびしい町でのささやかな出会いやちょっとしたアクシデント、寂しい町を歩きながら感じたことやおもいだしたことなどが静かに綴られている。
秋の静かな夜に似合う一冊でこの季節に手に取ることができて良かったなとしみじみ。
④万城目学、門井慶喜 著「ぼくらの近代建築デラックス」
★★★☆☆(3.5)
近代建築をこよなく愛する作家の万城目学さんと門井慶喜さんが、大阪・京都・神戸・横浜・東京・台湾で名建築を訪ね歩く対談集。
写真や地図も豊富で読んでいるうちに実際にそれぞれの街を歩いてみたくなる魅力的な一冊。
建築の専門家ではないふたりが近代建築ファンとして興味関心の赴くままにちょっと脱力でワイワイと喋っている感じがとても楽しい。
構造はもちろん、その建築に秘められた歴史や建築家の人となりなんかが見えてくるとまた新たな角度から建築を楽しむことができて面白い。
気ままなひとり散歩も良いけれど、誰かと歩けばひとりでは見えなかったものが見えてくるかもしれないなと思ったり。
⑤貫井 徳郎 著「龍の墓」
★★★☆☆
VRが日常に浸透した近未来を舞台にしたミステリー
都内で起きた連続殺人事件と人気VRゲーム上の連続殺人事件とが実はリンクしていることが明らかになって…
VR技術が進化すればするほど現実世界とVR世界の境目が曖昧になってVR世界に溺れる人がたくさん出てくるんだろうな…というのはよくわかるけど、小説の舞台を近未来設定にした意味があるような無いような…貫井さんの中ではだいぶライトな印象の作品。
登場人物が個性強めなので将来的にはシリーズ化も目論まれているのかな。
⑥燃え殻、二村ヒトシ 著「深夜、生命線をそっと足す」
★★★★☆
この本を鞄に密かに忍ばせて出勤し、疲れ果てた帰りの電車の中でそっと開くのが最高の楽しみだった。
自己肯定感が安定的に低すぎる燃え殻さんもへりくつと下ネタを交えつつ優しく話を聞いてくれる二村さんも好き。
何よりも「深夜、生命線をそっと足す」というタイトルが抜群に良い。
辛いことがあった夜、何となく心がざわついて眠れない夜に私はまたきっとこの本を開いて生命線をそっと足す。ということでずっと手元に置いておきたいお守り的一冊になりそう。
再読だった小川洋子さんの「密やかな結晶」は別枠として、11月のベスト本は燃え殻さんと二村ヒトシさんの「深夜、生命線をそっと足す」かな。
「量よりも質」と思いつつ、どうしても量も求めたい私にとっては冒頭にも書いたとおり今年の秋は何とも不完全燃焼な読書の秋であった。
本を読みたい→読めない、が続くとストレスが溜まりがちなのであまり本のことは考えないようにしよう…と思いながら結局スキマ時間に書店にだけはしっかり足を運んでしまって、積読本だけは着々と増えているという状況(読書が捗らないときに限って積読本は増えるの法則)
次のターゲットは年末年始!
年末年始こそは腰を据えてたっぷり読書ができるといいなと願いながら、何を読もうか今から妄想してニヤニヤしている(実はこの時間が一番楽しいかもしれない)。
というわけで2024年もあと少し!駆け抜けよう!