054 ガーンジー島の読書会の秘密、の巻

今回の表題は、2018年のイギリス映画から採っています。の巻。(もう、いいってば〜、ですね。失礼)

ええー、九条Tokyoで起きている奇跡を綴った連載じゃなかったの〜、って思ったあなた。アナタは偉い。54回にもわたるこの連載をすべて読んでくれているってことでしょうから、表彰状をあげたいくらい。

でも、ご安心を。最後に、九条Tokyoの話に戻る予定ですから、暫しお付き合いのほどを--って、落語のマクラみたいですね。

マクラといえば、今年の初めに、友人が遠くに引っ越すので、彼の主催する最後の落語会の餞 (はなむけ) にと、生まれて初めての落語に挑戦して前座を務め、誰よりも長い時間喋ってしまったことを思い出してしまいました。トリより長い前説。。。未だに冷や汗が出てきます💦

でも、彼の送別会兼の公演だと思っていたので、内輪のメンバーだけが集まる落語会だと思っていたら、そのほとんどが店にも初めて来られる高齢の女性陣。座布団の上に座ってから慌てたのなんのって。。。急いで話の枕を、当初用意していた内輪受けするものから変えなきゃと喘いでいるうちに、本題にたどり着けなくなってしまったのです。

やっぱ、2020年はなかったことにしましょう。今年あったことは、みんな忘れてしまうのが一番かも。

いや、そんなことはないですね。このシリーズで書いてきたような奇跡は、いつも起きてるのですから。

さて、「ガーンジー島の読書会の秘密」。

2018年の英仏映画、マイク・ニューウェル監督作品。リリー・ジェームズとミキール・ハースマンが主演ということになっていますが、脇役もみんな素晴らしい映画です。

◆それより何より、あの美しい風景。
それだけでも一見の価値があります。ボクの大好きなイタリア映画「イル・ポスティーノ」に匹敵するくらい、美しい島が舞台になっています。

◆そのありよう。
ガーンジー島はイギリス海峡のチャンネル諸島に位置し、イギリス王室の属領なのに、英国 (正式名称=グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国) には含まれていません。つまり、内政に関してはイギリス議会の支配を受けず、独自の議会と政府を持ち、高度の自治権を有しているらしい。すごくないですか?

◆その歴史。
イギリス領なのに、1940〜1945年の間、ナチスに統治されていた英国の島があったなんて知りませんでした。この映画は、そんな過酷な環境下から起きる、奇跡のようなガーンジー島の物語と、その後日譚を描いています。

◆そして、映画そのもののドラマ性。
これから見る人のためにストーリーは伏せますが、ボクの中ではトップ10に入れたいくらい。これまでの10本のどれと入れ替えるか、相当悩むことになりそうですが。。。

◆最後に、「読書会」がモチーフ。
となったら、世の本好きは、それだけでも観ないではいられないでしょ?

九条Tokyoでも「誤配だらけの読書会」というイベントを毎月1回開催していることは過去にも書きました (007 バカ野郎、物語が人を選んで降りてくるんだ)。

独裁下でも人が人でいられるのは、自由にモノが言えない以上、過去に書かれた自由な志を持つ物語や詩歌、哲学を読むことによってでしょう。そういう意味では、お隣ともいうべき香港の窮状を思わないではいられません。

周庭さんの監獄に窓はあるのでしょうか?
その窓は、彼女の好きな日本がある北東向きでしょうか?
彼女の愛に応えているというには、この国はちょいと冷たい気がしますが。。。

話は読書会に戻って、毎月、大量の書籍が刊行されていますが、残り少ない時間で、どれを読むか決めるのは難しいことです。1冊読むのに数時間要するとして、このチョイス、しくじったぁと思いたくないですものね。

そういう時、購入履歴からオススメされた本を選ぶより、信頼できる友人の感想を参考に選びたいと思いませんか? だって、同じ傾向の本ばかり読んでいたら、幅が広がりませんよね。多様性って、深さより、まず広さだと思うんです。

さらに、今こんなことに関心を持っているんだけど、と呟くと、サッと書名が幾つも出てくる友人がいれば、人生って素晴らしい。九条Tokyoの読書会には、そういうメンバーが集まっていて、ボクの呟きを真摯に捉えて、本をいくつか紹介してくれるメンバーが揃っています。

先日も、こんな内向きの時代だからこそ、遠い存在じゃなくて、それぞれの身近にいる、モデル (ビューティ系じゃなく、規範って意味ですよ) となるような若い世代を紹介し合って、100人くらいになったら定期的に本にできないかなぁと言ったら、メンバーの一人が後日、「こういう本が出ていたよ」と持ってきてくれました。

新型コロナウイルスの猛襲を受け、ロックダウンが発令されたイタリアで、強く、温かで澄みきった若者たちの言葉を集めた記録集で、『デカメロン2020』という本でした。読みたーい。

一方、生涯かけて何事かを研究してきた人たちが集めた文献の引き取り手がなくて、今まさに次々と葬り去られていっているそうです。世界に1冊しかないというのはオーバーかもしれませんが、そうした稀覯本があちこちにあり、最後の時を迎えようとしているとか。

実は、これは着物なども同じですね。この国は、未来にも過去にも冷たい。現在ばかりが幅をきかせています。

焚書坑儒とはまた別の、知の危機ですね。ただでさえ、世界から教養が失われつつあるというのに。

そのうえ、社会科学系の研究者には厳しい冬の時代。さらに急激な少子化の進展で、研究者も生徒も読者も減る一方。嵩張る膨大な資料を所蔵してくれるところを探すのは至難の話でしょうね。これからは、大学だって図書館だって減っていくしかないのでしょうから。

そうだ、図書館村を作ろう!

それが次回からの「誤配だらけの読書会」のもう一つのテーマになりました。空き家だらけになる町のどこかにお願いして、空き家1軒ごとに、ある作家や研究者の蔵書を引き取って保管していく。そのためには、若干のリフォーム代が必要ですね。でも、ということは仕事が生まれるってことでもあります。

その町に行けば、そうした古民家図書館がいくつも点在しているってどうでしょう。本好きが訪れる観光地にもなるし、晴耕雨読したい人の移住もあるかもしれない。ボクはそこで文学バーでもやりたいなぁ。。。

この世に生きて、書物を愛した一般個人の簡単なプロフィールと、蔵書リストが集められたサーバー墓場があってもいいかも。

ガーンジー島みたいに美しいところだと尚いいのですが、海のそばだと本がダメになってしまいますね。乾燥したところがいいのかな。知恵と行動力が必要です。

プリーズ、本好き老若男女の知恵と熱意。

1/9 (土) 15:00〜の「誤配だらけの読書会」では、いつものように好きな本を持ち寄っての紹介タイム以外に、この図書館村構想についても話そうってことになっています。

コロナ騒動の中、内向き一方になっていないで、何か未来のために考えることくらいはしていたいと、いつも思っています。興味ある人、あつまれ〜。

最後に、前回の「短歌好きあつまれ~」のために用意した、田中章義の短歌を一つ。

短歌好きなメンバーも大募集中。九条Tokyo短歌クラブをつくっちゃおうと思っています。同志よ、あつまれ~。

思い出と おんなじ重さ保つため「未来」が今日も踏んばっている (田中章義)





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