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【読書】「SPQR:ローマ帝国史」第2章:ローマの始まり
ローマ建国の伝説とその意味
1. ローマ建国の伝説
1-1. ロムルスとレムスの物語
ローマの建国伝説では、双子のロムルスとレムスが母狼に育てられたとされる。成長した二人は、それぞれローマの建設地を決めようとし、ロムルスはパラティヌスの丘、レムスはアウェンティヌスの丘を選んだ。しかし、レムスがロムルスの土地で挑発的に城壁を築こうとしたため、ロムルスに殺されてしまう。この物語には、ローマ人の好戦的な性格が象徴されている。
1-2. サビニ人女性の誘拐と戦争
ロムルスは新たな都市の人口を増やすため、各地の貧民や犯罪者、難民を受け入れたが、女性の数が足りなかった。そこで彼は、近隣のサビニ人やラテン人を祭りに招待し、その場で女性たちを誘拐し、ローマ人の妻とした。この策略は単なる人口増加のためだけでなく、意図的に戦争を引き起こす目的もあった。怒ったサビニ人がローマに攻め込むと、ローマ人はラテン人には勝利したものの、サビニ人とは長期戦になった。最終的に誘拐された女性たちが自らローマ人の妻となることで和平が成立し、サビニの王とロムルスが共同統治することになった。
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1-3. ロムルスの統治とローマの成立
その後、サビニ王が暴動で死んだことで、ロムルスがローマの唯一の支配者となった。彼は30年間統治し、ローマの基盤を築いた。ロムルスの物語は、ローマの建国神話の中心となり、戦争と支配を通じた国家の成り立ちを象徴している。
2. もう一つの建国伝説
2-1. トロイアの英雄アイネイアスとローマ
ローマのもう一つの建国伝説は、トロイア戦争後にイタリアへ逃れた英雄アイネイアスに関するものだ。彼は新たな都市を築き、その子孫が後のローマの基盤を作ったとされる。アイネイアスとカルタゴの女王ディドの恋愛物語も、後世に広く語り継がれた。
3. ローマ建国伝説に込められた意味
3-1. 内部対立への不安
ロムルスが兄弟を殺し、ローマが内紛の上に成立したという伝説は、ローマ人自身の内部対立への不安を示している。実際、ローマの歴史はしばしば内部抗争に悩まされた。
3-2. ローマの開放性と多様性
ローマは多くの民族や文化を受け入れることで成長した。歴代の王の中にはイタリア出身でない者もおり、奴隷も自由を得れば市民になれる制度があった。こうした開放性がローマの発展を支えた。
3-3. 神話としての側面と歴史的解釈
ロムルスの物語は神話的要素が強く、実際の歴史とは言いがたい。しかし、この伝説はローマ人の自己認識や、戦争と統合を通じて国を築くという考え方を反映している。ローマの成り立ちは単なる集落の発展によるものかもしれないが、こうした神話がローマ人のアイデンティティを形成する重要な役割を果たした。
このように、ローマの建国伝説は単なる神話ではなく、ローマの戦争と支配の歴史、そしてその精神を反映した物語となっている。