寺内町富田林を歩く②-地域のお宝さがし-39
所在地:〒584-0033 富田林市富田林町・本町
■建築物■
●御坊(興正寺別院)●
寺内町の中核である御坊(現興正寺別院)は、寺内町の開発時期に創建されますが、その年代については、永禄元年(1558)、2年などの説があります。現在の本堂は寛永15年(1638)の建立で、近畿地方における最古級の浄土真宗本堂です。『河内名所図会』には、「興正寺懸所 冨田林にあり、京師興正寺の輪番所也」とあり、堂々たる伽藍が描かれています(38回目参照)。御坊前の「城之門筋」に面して建つ山門(図1)は、伏見城から旧天満別院に移築されたものを再移築したものとされていましたが、平成24年(2012)の調査で、伏見城の城門が興正寺(京都)北門として移築され、安政4年(1857)に当寺へ再移築されたことが判明しました。そのため、『河内名所図会』には山門らしき施設が描かれていません。
図1
なお、御坊前の「城之門筋」(図2)は昭和61年(1986)に「日本の道百選」に選定され、平成26年には、興正寺別院の本堂・対面所・鐘楼・鼓楼・山門・御成門が重要文化財に指定されています。伝統的な町並みは平成9年に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、平成30年にその範囲が寺内町全域に拡大されました。
図2
●町家●
寺内町の町家は、平面が四間取り以上の大規模なものが多く、周辺の農家と類似の構成をしています。農家と異なるのは主に外観で、①直接道路に接するため、駒寄や格子を設け、②防火を考慮して外壁を大壁造りとし、③屋根は瓦葺とするなどの点です。なお、古い町家は本瓦葺ですが、幕末頃から桟瓦葺が増加するようです町家を見てみましょう(図3、番号はマップの番号)。
図3
01:旧杉山家
寺内町の南西部、市場筋と西林町の交差点北東部に位置しています(図4~6)。寺内町創設にかかわった「八人衆」筆頭の家柄で、江戸時代中期以降は造り酒屋として栄えました。外観は、階高の低い つし2階に長方形の虫籠窓(むしこまど)が多数設けられ、本屋・下屋ともに本瓦葺、大棟の東端には煙出しが設けられています。江戸時代前期に建築された最古の町家で、江戸時代中期の拡張により、大規模で整った商家として、昭和58年に重要文化財に指定されました。
図4
図5
図6
19:木口家
寺内町の南部、城之門筋と東林町の交差点南東部に位置しています(図7~8)。当初は木綿商、後に瀬戸物商に転じました。18世紀中期頃の建築で、外観は、つし2階に丸形の虫籠窓が設けられ、本屋・下屋ともに本瓦葺、大棟の北端には煙出しが設けられ、東林町の町並みに変化を与えています。なお、下屋に設けられた幕板や「ばったり床几」は、他にはみられないものです。
図7
図8
10:越井家
寺内町の北東部、東筋と北会所町の交差点の北西部に位置しています(図9~10)。代々材木商を営んだそうです。明治末期の建築で、外観は、道路に面して、駒寄・細い竪子の出格子が備えられています。階高はやや高く、矩形の窓には木格子がはめ込まれ、本屋・下屋とも桟瓦葺、黒漆喰仕上げの壁面は軒裏まで塗り込められています。西端のオランダ積みの煉瓦壁は、伝統と近代を感じさせ、景観を引き立たてる要素になっています。
図9
図10
09:(北)越井家
亀ヶ坂筋と富山町の交差点北東部に位置しています(図11~12)。外観は、道路に面して、木割りの太い格子と細い竪子の出格子が備えられています。つし2階に長方形の虫籠窓が設けられ、本屋・下屋とも本瓦葺、黒漆喰仕上げの壁面は軒裏まで塗り込められています。東側の土蔵の妻面、主屋の煙出し、西側の高低のある塀、南側には越井家の長大な米蔵があり、変化に富んだ町並みが形成されています。
図11
図12
11:佐藤家
寺内町の北東部、亀ヶ坂筋と北会所町の交差点北西部に位置しています(図13~14)。代々紅梅酒味醂の醸造業を営んだそうです。文政3年(1820)の建築(幕末期との説あり)で、外観は、道路に面して駒寄・細い竪子の出格子が備えられています。つし2階に長方形の虫籠窓が設けられ、壁面は軒裏まで塗り込められています。本屋・下屋とも本瓦葺、大棟の南端に煙出しが設けられ、北会所町の町並みに変化を与えています。
図13
図14
12:佐藤家
城之門筋と北会所町の交差点北東部に位置しています(図15~16)。
図15
図16
長方形の虫籠窓が設けられた2階の階高から、近代に建築されたと推察されますが、その時期は、虫籠窓の形態の分析から「20世紀初頭大正年間」、出格子の形態と備えられる期間から「大正年間」、さらに昭和5年(1930)との説があり、年代判定の難しさが窺われます。外観は、道路に面して駒寄・細い竪子の出格子が備えられています。城之門筋に面する土蔵に設けられた水切り庇は、特徴的な町並みを形成する要素になっています。
次回は、その他の見所を紹介します。