窮鼠はチーズの夢を見た
初めて惚れた男は、世界を丸ごと愛してしまうような、弱い男だった。
誰といても楽しそうで、端っこが好きと言いながら、いつもみんなの輪の中にいる人だった。体に悪いし、迷惑がる人もいるから、と言いながら、タバコを吸う人だった。もう少しそばにいたいなんて言ってたくせに、さよならも言えないまま、改札の向こうへ歩いていった。
電車の窓に映るのは、見たこともない紛争地。逃げ惑う少年と、決して美味しそうではない汁をすすった親子の笑顔。隣の窓には、スーパーの裏で殺されている動物。わたしは、