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【戦略的とはなにか?】引きこもり中学生が1冊の本に出会い、戦略的な考え方を手に入れてからの大学受験までの道のり

精神的な問題で教室に通えなかった中学の頃、たくさんの本を読むようになりました。だいたい1日に3冊ほどずつ。

幸い、当時は本を買ってくださるパトロン的存在の方が何名かおり、また不幸なことに話す相手が1人もいなかったために、なんの妨げもなく存分に本を読むことができたのでした。

あのころ、不安と孤独と戦いながら読んだ本たちは、良くも悪くも、僕のその後にかなりの影響を与えています。

中でも、その後の僕の活動にもっとも影響を与えてくれた本が、海上知明氏の『環境問題の戦略的解決』でした。

Amazonランキングを見てみると、環境問題のジャンルにしぼっても1504位(数も少ないのか、今やかなりの金額でもある)というめちゃくちゃ無名な本ですが、自信を持ってオススメできます。

本書は、僕が読んだいちばん最初の戦略についての本で、その後(高校生になってから)戦略についての本を20冊ほど読破していくきっかけとなりました。

僕は、この本から戦略的に考えることとある技術を教わり、高校で仲間を集めてある研究をし、いずれ起業してやろうと決意したのです。

○本質に迫るのは意外と難しい

この本から受けた衝撃を伝えるには、一つの事例があれば十分だと思います…ので、さっそく問題です。

以下の論理には問題があると海上先生は言います。それはなぜでしょう?

日本は国土がせまく、欧米にくらべて人口密度が高い。だから、食料を輸入に頼らざるを得ない。

おそらく一度は聞いたことのある話だと思います。

国土がせまい=農地がせまい
だから、食糧の自給はムリ。

一見正しいようですが、この論理は、本質をついていません。

先生はまず、僕らの固定観念をゆるがせるためにこんなことを言います。

すなわち、日本は「工業化以前からヨーロッパより耕地面積に比して過大な人口」を抱えていたと。

これは、米と小麦の土地生産力費が50対1にもなることから来ています。

さて、先ほどの文章の問題点は、もうわかりましたね?

○農業生産力を決定づけるのはなにか?

農業の生産力を左右する要素は、
土地の広さ以上に土地生産力の問題である。

だから、国土が狭いことで自給率の低さを説明することはナンセンスなのです。

とはいえ、人類が農業を始めてどれだけの時間が経っていることか。さすがに農業生産力も頭打ちなんじゃないか。

そう思うかもしれません。

ここで、海上先生はもう一つの思い込みを破壊してきます。

その思い込みとは、「農作物を育てるには、畑(土地)がなくてはならない」です。

え?当たり前じゃん。

当時の僕は、何を言い出すんだこのおっさんと思いつつドキドキしながら先を読み進めました。

それで出てきた技術がこれ。ハイポニカ農法です。詳しくは省きますが、土を使うことなく、室内で農作物を栽培することが可能です。しかも、土壌栽培より収穫効率が高い(早くかつ大量に育つ)。

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(画像:https://kenkoshukan.com/archives/3227)

海上先生は言います。

ハイポニカなら、同じ面積でも2倍の収穫ペースで、2倍以上の収穫が可能です。加えて、土の制約がありません。

30階建てのビルの各階でこの水耕栽培を行えば土地生産費は単純に120倍以上になりますね?

な、なに。たしかに…。しかも、今まで農地とされていたところにはいっさい手をつけなくてもいいわけか。ふむふむ。日本はこれから空きビルも増え続けていくだろうし…。すげぇ。

中学時代の僕は、これが「戦略的なアプローチ」というやつなのかと衝撃を受けました。同時に単純なので、俺も水耕栽培を研究して野菜を作って、売って家計の足しにできやしないかと考えるようになりました。

そこから高校進学後に生物同好会を結成し、ハイポニカ農法の研究をするまではあと2年待たなくてはなりません。

○行く手を阻む思考法

戦略を考える際に行く手を阻む思考法が2つあると海上先生は言います。

それが、「べき論」と「できない理由を考える」というもの。

海上先生は力を込めて、べき論を否定します。

べき論は「『かくあるべきだ』と言ったら、それでおしまい」な「本人が自己満足」するだけの「最低」な思考法であり、「無責任な学者、評論家に多く見られる現象」なんだそうです。先生、煽るのがお好きなようで。

さっきの問題の中にも「農作物は農地で栽培されるべき」「輸入に頼るべき」というのが隠れていましたね。

続いての「できない理由を考える」は、まさに「日本は国土がせまく、欧米にくらべて人口密度が高い。だから、食料を輸入に頼らざるを得ない」というあれです。べき論にくっついて存在している印象。

両方に共通するのは、どのようにしたらできるかと考えを進めていかないことで、その点ではとにかく「できる」と答える人間も同じ。

何の思案もなく、ただ意地だけで、あるいはやる気を見せるだけで、空っぽのまま「できる」と答えるのも、ポジティブとネガティブというさを抜かせば「できない理由を考える」ことと大差がない。
『環境問題の戦略的解決』第三章より

○VA思考で本質的な問題を見抜け

先ほど挙げたような思考の罠に陥らないためには、どのように考えていけば良いのでしょうか?

その一つが、VA(Value Analysis=価値分析)と呼ばれる方法です。

VA的な思考では、物事の本質は何かを問い、そこから逆算して考え直します。「特に、その物事の本質的機能は何かで、問いを深めていく方法」を言います。

たとえば、「水を飲む」という行為を考えます。

「水を飲むためには、コップを使わなければない(べき論)」「コップがないので水が飲めない(できない理由)」という人が居たらなんと助言しますか?

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「手ですくってみては?」「蛇口に口をつけてみては?」「点滴を打てば?」「氷を食えば?」

だいたいこんなことを言うはずです。その人がやりたいことの本質は、体内に水分を取り込むことだと考えられるからです。

冒頭の問題なら、本質的には野菜を栽培したいのであって、野菜を栽培する方法や土地は別に限定しなくてもよかったということになります。

しかし、この本質的な問題に気付くのはなかなかに難しい。

まず間違いなく、現状を理解するための緻密な調査が必要ですし、問題の解決に使える手段やリソースにめざとくいる必要があります。

もちろん、中学生の頃の僕にそんな高度なことなんかできるはずがなく、戦略を立てているつもりでいながら、実際にはただただ空っぽのまま「できる」と思っているだけでした。あの頃のことなると、恥ずかしいエピソードが尽きません。

○生物同好会と戦略

『環境問題の戦略的解決』に出会った中学生の頃の僕。

結局、あちこちで偏った理想を語ったり、空回りを繰り返したりと恥をまき散らしながら、戦略を用いた勉強も使いこなすことなく、通った塾の課題をひたすらこなし(人生でいちばん長時間机に向かっていた)なんとか地元の進学校へ。

高校生になった僕は、もう少し成長します。

実現したいことを絞り、そこへ向かう戦略を考えるようになりました。

中学から考えていた実現したいことの一つが、仲間とともに研究し、自作の水耕栽培キットを作ること(影響受けまくり)。

まずは、水耕栽培についての情報を本やネットから集め、ここまでならいけるのではという目標設定。

当時、自作の水耕栽培キットをYouTubeに紹介している方がちらほらいて(主に中国の方、再生回数はどれも200回以下だったのでこれはチャンスと思った)あれはとても参考になりました。

続いて、どんな仲間が必要か、それぞれがどんなことをすればいいかと考え、ようやく実際に動き出しました。生物同好会の結成です。

○研究失敗と受験

生物同好会の2年半の研究の結果、以下のことがわかりました(ツッコミどころ満載ですが)。

・植物を育てるのは思いの外むずかしい
・普通高校では空調をいじれない
・小規模のスペースと2年半の研究期間では何もできん

この辺がネックで、結局、生物同好会が人に売れるほどのレベルの水耕栽培キットを作ることはできませんでした。収穫できたのは、一生涯の頼れる友人だけでしたとさ。めでたしめでたし。

まあ、今思うともっとやり方はあったんでしょうけど、進学校の勉強の片手間でできることではなかったですね。(できない理由を探すの好例)

しかし、戦略を立てて動き出すことには慣れてきました。

高校2年の僕は、大学受験を戦略的に進めることを決めます。

まずは、現状把握と調査。

調査は、そもそも大学に行く必要はあるのかから始まり、脳科学や心理学に基づいた勉強法の本を片っ端から読破。内容を紙のノートにまとめました。

○基本方針

僕が大学へ行きたい大枠の理由は最初から固まっていました。

①大義を持って沖縄を出たい
②起業する仲間を集めたい
③猶予を設けて稼げる力をじっくり育てたい

この3つです。これを達成する最も現実的な方法が県外国立大学へ行くことでした。

ただし、制約が3つ。

・受験できるのは1校、1発のみ
・余裕を持って楽々合格したい
・都会には行きたくない

この辺のことは詳しくはこちらに書いてあります。

出発はこれでOK。

続いて、目的達成のために行くのが大学で本当にいいのかの調査。

○大学へ行く意味の自由研究

「大学には行ったほうがいい。そうしたら収入が上がるから」

親戚や身近な大人はだいたい大学へ行くことを推奨していましたが、基本的な理屈はみんな同じでした。高卒だと年収が低く、大卒だと年収が高い。

他には、選択肢が広がる、大人になるまでの期間を引き伸ばして気ままな生活ができる、好きな学問を追求できる、生涯の友人が見つかるなどが理由としてありました。

また、偏差値のより高い大学へ行くほど好ましいとは、学校の先生がよく主張することでした。

これらを受けて、当時の僕が最も重視したポイントは、収入

他の項目は、他人に進路について口出しする際に特段押し付けがましく言えるものではない、つまり、しっかり主張しさえすれば抵抗されないと判断したからです。

というわけで、「大卒は収入に大きな意味がある」がどれくらい妥当かを調べることに。良い戦略は常に現状の鋭い診断から生まれるのです。

資料として使ったのは、当時(3、4年前)の厚生労働省の所得分布表や、大卒非大卒の生涯収入の違いの調査、その他参考文献がしっかりしているっぽいビジネス書(統計の専門家ではなく、あくまで一高校生の自由研究です)でした。

次章で結論だけお見せします。

というのは、残念ながら、自分のためだけにメモしていたので、参考文献を記録するという最も大事なことを忘れていたためです。

たぶん今もそう違わないと思うので、現役高校生にも参考になるんじゃないかなと思います。

◯収入に影響を与えそうなもの

大卒か高卒以外にも収入に影響する要素はたくさんあります。

それらがどれほどのものかを調べてみることにしました。

その結論を先に提示すると、こちらになります。

【高校生の時の僕の出した結論】
・収入に影響を与える要素は多岐にわたる
・その中で大学進学は特別効果が大きいわけではない
・ふつうレベルの国立大学が稼ぎに与える影響はうすそう

根拠となったデータなどは以下。

数字の羅列であんまり面白くないと思うので、興味深かったポイントは太字にしてあります。たまにツッコミも入れてある。

・企業規模と収入。中企業と大企業。ピーク比較で1:1.26
参照:厚労省平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/dl/04.pdf

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・学歴。大学といってもピンキリだけど、ピークを比較すると大卒か高卒かで1.5倍。
参照:厚労省平成30年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/dl/03.pdf

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・生涯賃金だと高卒大卒で5000万の差が出るという。これは1.3倍。
参照:https://www.nenshuu.net/sonota/contents/gakureki.php

・出た大学と収入。1位 東京大学(4億6126万円)。10位 法政大学(3億8103万円)。1位と10位で1.2倍。中間の50位台の大学と比べると東大が1.8倍。中間レベルの大学卒と高卒なら1.2倍程度。

・年代ごとの平均年収は出ていたから、そこから生涯収入を計算してみた。琉大は富大とほぼ同じくらいで、23〜65歳まで働いて2.1億くらい。

高卒の平均生涯収入が1.9億円だから2000万円の差。偏差値50ちょい程度の大学なら高卒の1.1倍程度ということになる。

生涯で2000万円の差とは、働くのが45年とすると、年間で44.4万円ずつの差になる。これは、一人暮らしをした時と、夫婦暮らしをした時の一人当たりの支出の差くらい。

・男性か女性か。男性531.5万。女性287.0万。男性は女性の1.8倍。

・2018年の富山県の平均年収は447万4600円。。
2018年の愛知県の平均年収は554万6200円(富山の約1.2倍)。2018年の沖縄県の平均年収は369万4800円(富山県の約0.82倍)。住む場所で収入は1.2倍くらい余裕で変わる。

ちなみに、住む都道府県によって生活コストも異なるので、実際はもっと差がつく。富山は過疎っているため、生活コスト(家賃)が低い上に比較的平均賃金も高い。沖縄は生活コストが高い上に、平均賃金が低い。

・飲酒の習慣がある人の収入は飲まない人の収入を10%上回る。また、少なくとも月に1度酒場に行く人(お酒の付き合いがある人)は、単に飲酒の習慣がある人の収入を7%上回る。飲ミュニケーションは偉大。

・ジェラルドロシュの研究。1250名の企業幹部を対象に調査を行った。
メンターがいる企業役員の平均給与は、メンターがいない者より28.8%高く、ボーナス平均の増加分65.9%と合わせると、現金報酬の総額は平均で29.0%高いことが明らかになった。

→お金目当てなら、大学よりメンターを探す方が良いってことになるかも。

・美しい女性は4%ほど収入が高く、ハンサムな男性は3%ほど収入が高い。

・魅力的でない女性は収入が3%ほど低く、魅力的でない男性は22%も低い。つまり、男は顔で最大25%も収入に差がつく

・ハーバード大学医学部教授 ヴァリアントの研究。
際立って共感的な被験者たちは、自己中心的な者たちの2.5倍の収入を得ていた。こちらの記事がよくまとまっています。

・約2000人のオフィスワーカーを対象にしたハーバードの研究。「平均して私たちの生産性の10%以上は隣の席に座る人間の質で決まる」。

→偏差値50の大学を出るのと、職場の環境が変わることの影響は同レベルといって良さそう。

このデータから導いた結論をもう一度載せます。

【高校生の時の僕の出した結論】
・収入に影響を与える要素は多岐にわたる
・その中で大学進学は特別効果が大きいわけではない
・ふつうレベルの国立大学が稼ぎに与える影響はうすそう

で、ここから導いた方針がこちらです。

【高校生の時の僕の出した方針】
・沖縄からは出て、県外でさっさとメンターを見つけよう
・共感能力を高める方法を探ろう

これだけ調べると、周りの大人はほぼ全員説得できます(統計や教育の専門家が周りにいなかったのでこれで十分でした)。

「それ、データがあるんですか?僕の主張には根拠となるデータがあります」的なことをオブラートに包んで言えば良いのです。

残る問題は、「もっと偏差値の高い大学を目指せ」という強力な圧力。

「偏差値が高い大学卒→収入が高い」は因果関係にあるかを確かめることにしました。

◯教育経済学と行動遺伝学からの強烈な右フック

これもまた結論から言います。

教育経済学の研究によると・・・
どの高校・大学にいっても、将来の年収は変わらない

行動遺伝学によると・・・
収入に関わる行動の出方や環境の選択には遺伝の影響があり、人はある程度、その社会の中で向かうべくして向かう方向へ動いている

両方とも、えぇぇぇぇ!マジか!って感じですよね。

当時の僕にとっては衝撃的で、すぐ生物同好会に参照した本や記事をシェアしたのを覚えています。

教育経済学の方から行きます。

教育経済学者・中室牧子准教授の研究によると「どの高校・大学にいっても、将来の年収は変わらない」そうです。研究では、教育が賃金と学力に与える効果を推計するために、双子のデータを用いています。

違う大学に進学した一卵性双生児(DNAのパターンも家庭環境も同じ)のデータを使い、就職後の賃金の差を見たところ賃金の差は、ほとんど見られなかったそうなのです。

さらに言えば、同じ中学に通い、別の高校に通った一卵性双生児が合格した大学の偏差値にも、差はなかった。

大学や高校の選択は、世の中で思われているほど重要ではない可能性がある」ということだそうです。

類似の研究で、プリンストン大学の経済学者らが「大学の選択は将来の賃金に影響しない」ことを明らかにしていました。この結果は、アメリカの教育関係者にもよく知られており、高校の進路カウンセラーが、生徒に「偏差値で大学を選ぶんじゃない。何をやりたいのかが大事だ」などとアドバイスするそう。

続いて、行動遺伝学。今回改めて下の記事を参照。

当時参照したのは橘玲さんの『言ってはいけない』、 安藤寿康教授の『日本人の9割が知らない遺伝の真実』です。

人は若いうちほど遺伝の制約から自由に能力を伸ばせるそうです。だいたい20歳くらいまでは、遺伝よりも属している環境の影響を大きく受けている。なんだ、どこにいるかで収入は変わるわけじゃん!

と思ったらそうでもなくて、

45歳ごろには遺伝の影響のピークを迎えてしまうと言うのです。よく、中学までは神童、大人になったら凡人になっちゃったみたいな話を聞きますがそういうことですね。一時的に大きな流れ(遺伝)に逆らえても、結局歴史(生涯年収)は変えられなかった、というタイムトラベル系の物語みたいなことでしょうか。

この話から、僕は、保険として若いうちに稼いでおこう(資産となるものを持っておこう)と思いました。僕の親族を見る限り、45歳で平均以上に稼ぐ能力のありそうな人がいなかったので。

ある一卵性双生児の1人は、大学卒業後、なりたい職業が思いつかなくて、その気もなく受けた会社にことごとく落とされたのでフリーターになり、もう片方はやっぱり特になりたい職業が思いつかなかったけれど、たまたまその気もなく受けた会社から気に入られたのでとりあえず会社勤めをしたとしましょう。でも、それから数十年して45歳くらいになると、だいたい似たような社会的ポジションについている可能性が高いということなんです。


というわけで、先ほど収入に影響を与えそうな要素をたくさん見てきましたが、そもそもそれらを選び取れるかが遺伝に左右されているかもしれないことがわかりました。

で、当時の僕が思ったこと。「もはや、自分がいいと思うならどんな方向に進んでもええやないか!」。

ちなみに、遺伝の影響が大きいからといって、落ち込む必要はありません。もうどうにでもなれと自暴自棄になる必要もありません。脳に可塑性があることや、遺伝子もけっこう柔軟であることがわかってきています(そちらの話は割愛)。

※遺伝の影響が小さくなるように社会を設計するのは難しい。そもそも遺伝の影響が大きいのは平等な機会が与えられているからでもあるので。


というわけで、先ほどの結論に加えます。

【高校生の時の僕の出した結論】
・収入に影響を与える要素は多岐にわたる
・その中で大学進学は特別効果が大きいわけではない
・ふつうレベルの国立大学が稼ぎに与える影響はうすそう
・というか、どこへ行くかより誰
であるか(遺伝)が重要

ここまで調べれば、もう僕を説得できる大人はいませんでした。やりたいようにやるだけ。

基本方針も決定。

【高校生の時の受験基本方針】
・楽々受かる沖縄県外国立大学へ行く
・余った時間で思う存分読書・思い出づくり
(交友関係は収入以上に幸福度を決定すると知ったからでもある)
【高校生の時の大学進学後基本方針】
・進学したら、さっさと起業仲間やメンターを見つける
・大人になった後からでも伸ばせる能力を調査
・状況次第で大学を辞める・継続するを柔軟に決定
・不満なく生活コストを下げるための方法を探る

◯勉強法と集中力の研究

受験の方針が固まったら、あとはそれぞれをもう少し楽に達成する方法を探るのみ。

楽々受かれる国立大学にもっと楽々受かるため集中力と勉強法の調査から入りました。調べるのは好きなのでほぼ趣味です。

勉強にしても、仕事にしても、集中力は土台となります。自分の注意力を制御するコツを学ぶことはとても有意義。また、自分にあった勉強法を見つけるのも同じくらい有意義です。

最初に人の数倍効率よく学べるようになることに時間をかければ、遅れは後からいくらでも取り返せるのです。

といっても、僕の場合は体力のなさ・心身の弱さを乗り越えることや受験勉強以外のやりたいことの時間を作るためだったので競争心はゼロだったんですけどね。人の3倍できることより、1.5倍の出来でいいから1/2の時間しかかけないこと重視です。

個人的に、集中状態とその作り方について、もっとも参考になった本は『フロー体験 喜びの現象学』でした。

かなり読み応えのある文章量と文体なので、そういうのが苦手な方はわかりやすくまとまっている以下の記事や『ヤバイ集中力』がおすすめです。

『ヤバイ集中力』はタイトル的にエビデンスが薄そうですが、そんなことはありませんのでご安心を。

10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がけている、論文、研究オタクの作者が書いています。


続いて、勉強法についてはとにかく

①意志力に頼る部分を減らすこと
②本気にならなくてもできること(と好きなこと)の組み合わせで目標を達成する方法を探る

ことだけ押さえておいた方がいいと思います。そのための自分に合った勉強法を探してください。

東大に行きたかろうが、海外の大学に行きたかろうが同じです。基本やる気は勝手に湧いてこないと思ってうまく環境を整えてください。

大きな夢やがむしゃらな努力は素晴らしいものですが、達成する手段をあえて難しくする必要はありません。困難なことを現実的にできることの積み重ね・組み合わせで可能とするのが戦略です

良い戦略は、困難な課題を乗り越える現実的な方法を示す。戦略目標がそもそもの課題と同じくらい歯の立たないものだったら、戦略を立てる意味はない。『良い戦略、悪い戦略』


◯良い戦略の基本

ここまで長々と具体的な話をしてきましたが、取っている手順はどれも基本的に同じです。

なので、これ以上の細かい話(センターの攻略とか苦手科目の進め方とか現在の方針とか)はしません(なんなら冒頭の海上先生の例だけでも大丈夫な気がしてきた…)。

というわけで、みなさんが応用しやすいよう抽象的な話に戻します。

戦略論の世界的権威、リチャード・P・ハメルト氏によると、良い戦略は以下の基本構造で成り立つそうです。

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(参照:『良い戦略、悪い戦略』)

状況を分析し、考察。重要な要素を見極め、基本方針を固める。

あとは、単純明快でやるべきことが明確になっている進め方(戦略)を打ち出すだけ。冒頭の海上先生の環境問題へのアプローチもそうでした。

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最初の診断の質であとの2つの質が決まります。なので、僕の意見としては、時間をかけてでも診断に時間をかけるべき、です。

といっても、もちろん未来はクリアに見通せないし、この世の全てを知ることはできません。調べる時間だって限りがある。なので、少なくとも、自分の納得のいく行動をするために説得しないといけない相手よりは現状を知っておくようにするで良いと思います(口が上手いからといって、調査をせず、自分の屁理屈で押し通すのは危険なのでやめましょう。後々自分が損をします)。

みなさんも困難な状況でなにかゴールに向かって戦略を立てる際には参考にしてみてください。

ちなみに、困難な状況(少ない資源で成果を出さないといけないとかもそう)でないならそんなに戦略にこだわる必要はないです。さっさと行動して、結果からアクションを微調整しちゃってください。

◯受験期をどう過ごしたか?

結局、受験はどうなったのかが気になる方もいると思うので。

戦略的に受験に挑んだ成果がこちらです。

・友達とカラオケに行ったり、正月に親戚と遊んだり、水耕栽培の研究を続けたり、読みたい本を読んだりする時間をしっかり確保しつつ、センター試験(総合点)は固く85%ほど取れるようになりました。結果、富山大学経済学部に必要な合格点数はセンターのみで足りていました。

・苦手だった英語は、半年で60点以上点数を伸ばしました。

・富山大学経済学部に合格。

さすがに、これはあまりに上手く戦略通りに運んだので、自分でも運が良かったなと思っています。が、それでも自信はつきました。

受験という目標と戦略(あとは僕の性格や理解力など)の相性が良かったのもあるのかなと思います。(逆に言えば、相性の良いゴールを目指すのは大事)

その証拠に、大学生になってからはたびたび経済的にピンチな状況になっていますが、まだ今年中は抜け出せる気がしません。

お金を稼ぐのは一筋縄ではいきませんな。HAHAHAHAHA🤣


久々の長文、最後までお読みいただきありがとうございました!

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久高 諒也(Kudaka Ryoya)|対話で情熱を引き出すライター
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