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【拝啓 夫へ】他の女性を褒めるの、やめませんか?

家族ぐるみで仲良くしている一家。夫とその友人夫婦は、大学時代同じ部活に入っていた。私も同じ大学出身なのと、お互いにカップル歴が長いのとで、仲がいい。

旦那さんもそうだが、奥さん(以下、A)もパワフル。世話好きなタイプで、男児ふたりの母。下の子が病気がちで仕事を休まなければいけないことがストレスで、専業主婦になった。子どもたちを自宅保育しつつFPの資格を取るような努力家。

保活について教えてくれたり、何かと助けてくれたり。とにかく私は、Aに恩がある。そして何より、人として好きだ。Aは、褒めるに値するめちゃくちゃいい子である。でも私は言った、夫に。

「A(他の女性)を褒めるの、やめませんか?」と。


「Aは、やっぱりすごいな」

A家族と遊び解散したあとに毎回放たれる、夫のこの言葉。何度聞いたことか。「Aはパワフルですごい」という意味だ。私も「Aはパワフルですごい」と思っているし、ずっと同調してきた。

でも、この言葉を言われるたびにモヤモヤが溜まった。私は臨月の妊婦だ。今年のほとんどを無理しすぎないよう、それでも精一杯頑張って過ごしてきた。夫から労われたことは、ない。褒められることも、ない。

ついには「なんか腹立つから、夫を困らせたい」と思うように。具体的には、真珠といえばの天下のMIKIMOTOで7~8万円くらいのイヤーカフを購入しようとしていた。夫の口座に紐づく家族カードで。

\\ かわいい //

家計を思い10%OFFの日に限って関西スーパーでまとめ買いをするような女が、腹いせにMIKIMOTO。嫌だと伝えた方がいい。でも、Aを褒めるなと言う器の小さな自分が嫌だ。

MIKIMOTOのHPを開いたり閉じたりしている私自身が、「自分やばいかも」と冷静になりはじめた。もっと前向きな動機でMIKIMOTOを買おう。セルフで頭を冷やした私は、考えを整理し、イヤーカフを購入するのをやめ、夫に言った。

「A(他の女性)を褒めるの、やめませんか?」と。


夫は、あえて私の前でAを褒めているわけではない。褒めているからといって「Aを妻にしたらよかった」と思っているわけでもないだろう。そんなことはわかっている。

10年以上の付き合いの中で、夫が他の女性を褒めることはそれなりにあった。「まぁ、この人はなんだかんだ私のことが一番だもんな」と根拠のない自信があったからか、気にならなかっただけ。人のいいところに気がつき、それを言葉にできるのは、夫の長所でもある。

とにかく、今まで責めたことがない。だからこそ夫にとっては衝撃だったようだ。驚き納得のいかない表情で「他の女性を褒めないように気をつけます」と返事がかえってきた。

長い付き合いだからわかる。腹落ちしていないことが。他の女性を私の前で褒めないようにすることで何か問題でもあるのか、聞いてみた。

すると、ざっくり以下のようなことを言ってきた。

・遠回しに他の女性を褒めることにつながる『◯◯いいな』も言えなくなってしまう
・何かをいいなと思い口に出すことは向上心でありポジティブなこと
・ポジティブな内容を共有するような夫婦間の会話が減ってしまうのは良くないのではないか

会話が減るのは良くないよね、わかる。でも、NGが怖いから喋らないって、ただの思考停止では……。一発アウトで離婚!じゃないし、まずは他の女性を褒めないというわかりやすい一線だけ守ってくれないかとお願いした。そして、私が普段から気遣っているポイントを共有。

・そもそも夫の前で他の男性を褒めない評価しない
・会話の内容上褒める必然性がある場合は、なるべく客観的具体的に話す(×:すごい!素敵! ◯:話し方が上品)
・私にとっては夫が夫部門(男性部門)ベストであることを示すために、オプションをつける
(◯:話し方が上品 ◎:話し方が上品な人だね まぁ、私は上品な人相手だと気を遣っちゃうんだけど)

私、健気すぎない?夫という身近な存在にめちゃくちゃ気を遣っている。だから脳が疲れてロングスリーパーなんだねナルホド(???)

そして「A(他の女性)を褒めるの、やめませんか?」を、言い換えた。

「もうちょっと妻に気を遣いませんか?」


夫は、何か呪いをかけられたんかってくらい、妻を褒めない。そのことはこの際問題ない。でも、妻を褒めないのに妻の前で他の女性を褒めるのは、気を遣っていないということでは?

夫は、おおよそ肯定的な態度だったけれど、こう思っていたかもしれない。

「めんどくせーな」「気を遣わないで自然体でいられるのが家族なのに」


ただでさえ外の世界で気を遣って疲れているのに、家でも気を遣わないといけないなんて気が休まらないじゃないか……と。

ノンノンノンノンノ〜〜〜〜〜〜ン

違う違う そうじゃ そうじゃな〜〜〜〜〜〜〜い

もともとは他人だった夫婦が自然体で心地よくいられるのは、気遣いがあったから。お互いを安全地帯ととらえ、家庭を守る同志という認識が芽生えたからだ。

家族を「血のつながり」と定義せず、共通の目的を持つ共同体ととらえている私からすれば、こんな感じ。

誤:家族→気を遣わないで済む→心地よい
正:気を遣う→家族→心地よい

「誤」を信じているとどうなるか。「もうちょっと妻に気を遣いませんか?」を蔑ろにすると、どうなるか。

夫婦、解散

気を遣われず不快感を溜め込んだ側は、家庭が嫌になり、パートナーに気を遣うことをやめる。すると、ふたりとも居心地が悪くなる。共通の目的があろうとなかろうと、夫婦は互いを安全地帯と思えず、ただの他人に戻っていく。

つまり、つまり……。

「A(他の女性)を褒めるの、やめませんか?」は「もうちょっと妻に気を遣いませんか?」であり、「もうちょっと妻に気を遣いませんか?」は……

「お互いに気を遣えると、居心地のよい家庭になりますよ」だ。

(凡)


私は夫に微笑みかける。阿佐ヶ谷姉妹の「玄関を開けたらいる人」のような佇まいで。


「Aを褒めるの、やめませんか?」

「他の女性を褒めるの、やめませんか?」

「もうちょっと妻に気を遣いませんか?」

「お互いに気を遣えると、居心地のよい家庭になりますよ」

「居心地のよい家庭が嫌なんて人、いないですよね?」

「幸せで、ありたいですよね?」


こうやって私の不満は、ある日突然告げられる。宗教勧誘のように。「他の女性を褒めないでよ」と泣きながら言った方が、タイパがよくて可愛いのにね。

今回は、夫が「他の女性を褒めるのをやめた方が自分のためにもなりそうだ」と納得していたのでヨシ。妻の前で他の女性を褒めるなんて、なんもいいことないんだゾ。

ちなみに、芸能人の場合は?と聞かれたけど、正直芸能人だとなんとも思わない。似たような属性の人を褒めたり、その褒め方が曖昧(妄信的)だったりすると嫌なのかも。ここらへんは夫が分別できないだろうから「他の女性を」とひとくくりにさせてもらった感じ。


総じて、何書いてんだ私。スッキリはしたけど。


(おまけ)まるでエコカーのエコドライブ報告のように、話し合いでどれだけのコストをカットできたかドヤりました。茶番に付き合ってくれる愛しい夫です。

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久保みのり
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