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病んでる女にまとわりつかれる夫の話(実は私も??)その5

 何かを妄信している人の瞳。
「知り合ってまもない人をそんなに信用しちゃダメでしょう」
 私は心の中でそう忠告し、瞳の力に恐れおののいていた。
 広大はきっと、
「困ったことがあったら何なりと言ってください。僕たちが何とかしますから」
 とか何とか力強いセリフを吐いたのだと思われる。
 その言葉に「いちころ」となってしまったのだろう。
 あ~あ。
 広大は軽い気持ちで言っているのに、そこまで感激させてしまったのか。誤解させるようなことをいつも言う広大も悪いけれど、こんな手垢のついた物言いにコロッとなびいてしまうお2人も、ちょっと気をつけた方が良いのではないか。
 その夜遅くに帰宅した広大に、一部始終を報告したら、やはり神様扱いされたことがそうとうに違和感だったらしく、笑うしかなかったようだ。
「そんなふうに思われても困るよなぁ」
 と言っていた。


 私は、
「言葉には気をつけた方が良いよ。広大が気軽に言ったことでも、相手にとっては宝石のような言葉になる時だってあるんだから」
 と、過去に何回かした忠告をまたすることになった。

 広大は。
 何度も告げたその内容が、まったく刺さらなかったようだ。
 なぜならその2,3年後にとんでもないできごとが襲いかかってきたからだ。
 この時私が言ったことを少しでも心にとめておいてくれたなら、起こらなかったことなのか。それはもう、今となってはまったくわからない。
 次男の湊を出産し、数か月が経過していた。
 季節は冬へと向かっていた。
 夜の9時頃チャイムが鳴った。この時は、外部からの訪問だとわかる音色だった。インターフォンの前まで行くと、モニターにはエントランスに立つ2人の女性が映っていた。20代後半くらいだったと思う。
「すみません。広大さんの妊娠のことで、伝えたいことがあるんですけど」
 これが、これから話すストーリーの幕開けとなる第一声だった。
 妊娠?!
 まったく話がわからなかった。その時は、広大も家にいて、
「何の話ですか?」
 などと応対していた。
「ヘンなこと言うのやめてください」
 とか何とか言ってインターフォンの会話を切ったのではないか。

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