ナレッジを書くハードルを感じている時に読むnote
突然ですが、ナレッジを書くことにハードルを感じていませんか?
などなど色んな心理的ハードルが存在し、その目に見えないハードルによって折角の実践知や経験知がどこにも残らずに消えていってしまうことも少なくありません。
ただ、そんなハードルを感じている人の中には、他の人から見ると有益なナレッジが沢山眠っていることがあります。(というか十中八九あります)
そこでこの記事では「ナレッジを書く」ということに対する心理的ハードルをできるだけ下げて、誰もがナレッジを残せるようになるようなマインドセットを獲得するお手伝いができればと思っています!
万人にとって良いナレッジなんて存在しない
まず、万人にとって良いナレッジなんていうものはありません。
これは断言できるのですが、誰もが活用できるすごいナレッジなんて数年に1記事書けたらいい方です。(それを連発できる人もいたりしますが、それはその人がたくさん思考と実践と発信を繰り返した結果です)
実際にあるのは、今まさに同じようなことで困っている誰かにとっての良いナレッジなんですよね。
「良さ」はリアクション数では測れない
そして、ナレッジの「良さ」は残念ながら各種プラットフォームが提供するようなリアクションの数では測れません。なぜなら、そのリアクションには人によって色々な意味が込められているからです。
のように、リアクションには色々な気持ちや意味が内包されており、実際には「良さそう」くらいの共感のパラメータ程にしか機能していないケースも多いと思っています。
“良いナレッジ”とは?
それでは、“良いナレッジ”とはどのようなものだと思いますか?
それは、いつか誰かが再利用・応用できるナレッジだと私は考えます。
今回のポイントは「再利用・応用できる」の部分ではなく「いつか」の部分です。今すぐでなくても、自分と同じように困った誰かの助けにいつかなるナレッジが“良いナレッジ”です。
そうは言っても「再利用・応用できる」の部分は依然として敷居が高そうですよね。そんなハードルを感じる方でも、自身の実践や経験から誰かにとっていつか役立つナレッジを「残す」ことはできるのです。
ナレッジは発信するのではなく「残す」
ナレッジを書こうとする時、今すぐ多くの人の役に立つすごいナレッジを書こうとしていませんか?
それももちろん大切ですが、もっと大切なのは 「今の自分が実践・経験をしたことを、過去の自分に伝えるように残すこと」という意識です。
多くの人に有益なナレッジを共有したい!発信したい!という気持ちも大切ですが、それが強くなりすぎてしまうと自分に厳しい人ほど自分はまだまだだからもっとちゃんと結果を出してから書こうとしてしまい、ナレッジを出すタイミングがどんどん後ろ倒しになってしまいます。(そして結局書かない…笑)
ですが、私たちが普段活用したいのは研究論文や理論のようなナレッジではなく、誰かの実践や経験を元にした苦難を越えるためにやったことや気付きがまとめられた自伝のような記事だったりします。
自分が歩いた足跡を残すようにナレッジを残すことで、いつか同じような状況に陥る誰かがそれを発見し役立ててくれた時に初めてその記事は良いナレッジになるのです。
そしてそのためには、実践をした自分だけにわかる形で残すのではなく過去の自分(他者)に伝えるように残すことが大切です。(タイトルだけ決めて書き始めると意外と書けたりするものです笑)
ナレッジの言語化と成長の関係
それではここで、実践や経験から生まれるナレッジを残すことと個人の成長の関係についても簡単に紐解いてみたいと思います。(ご興味ある方だけどうぞ)
ナレッジというものはどこからともなく生まれるものでも天才的な閃きから生まれるものでもなく、必ずなんらかの実践や経験から生まれます。
どんな玄人も実践や経験なくして良いナレッジを出すことはできません。
個人の成長サイクル
「実践知」という本の中に、個人の持論形成プロセスの概念図というものが書かれています。その概念図を「個人の成長サイクル」として私が再解釈したのが下図です。
個人の実践や経験を振り返り言語化することで自身の成功パターンや失敗パターンを認知し、また実践・経験で検証するサイクルを回すことで個人の成長が後押しされます。更にそこで言語化したナレッジが他者に活用されることによって他者の成長も後押ししていくというサイクルです。
実践・経験だけでは大きな成長はできない
ここで重要なのは、実践・経験をただ繰り返すだけでは個人の「大きな」成長には必ずしも繋がらないという考え方です。
誰しもが日々の仕事の中で実践・経験を繰り返しますが、それだけを繰り返してくるとやがて成長の踊り場に行きつき伸び悩む時期が必ず訪れます。
そんな時、ある人は環境や役割を変える(実践・経験の性質的な変化を起こす)ことで成長の踊り場から抜け出そうとしますが、それは根本的な解決にはならず結局いつかは同じように踊り場に行きついてしまいます。
私も経験したことがあるのですが、この成長の踊り場にいる時に足りていないのは振り返り、すなわち内省機会の不足です。
この内省機会が不足すると、自分の中で「なぜ成功したのか・なぜ失敗したのか」というパターンが蓄積されないまま次の実践に臨んでしまうため、同じような失敗を繰り返す状態が続いてしまいます。
このように、実践(実戦)に勝る修行はないのですがそれだけだと大きな成長には繋がりません。
実践だけを繰り返して強くなった人ももちろんいますが、そこには生存者バイアスが多く含まれるため再現性はほとんどありません。
成長の鍵は「実践・経験」と「内省・言語化」のサイクル
このように、成長の鍵は実践と経験だけではなく内省と言語化をすることだと考えています。
内省と言語化を通じて実践・経験を振り返ることで、自分なりの成功パターンや失敗パターン、さまざまな状況下での課題が見えてきます。そしてそれらへの対処法が、自分独自の型としてできあがっていきます。
逆に経験を言語化せずに済ませてしまえば、自分なりの持論は感覚的なものに留まります。個人としては一時的に強くなれるかもしれません。しかし他者への伝達力が弱く、対話からの新たな気づきを得る機会が減っていきます。すると結果として、再び成長の踊り場に行きついて更に大きな失敗を招くリスクもあります。
人は一人で成長し続けることはできません。
経験や学びを共有し合い、互いに影響を与え合うことこそが、組織やコミュニティに所属する大きなメリットであり、ナレッジマネジメントの本質だと考えます。
💡ヒント:ナレッジの残し方
より簡単に誰もが今この瞬間から書き始められる切り口をご紹介しようと思います。
ナレッジの残し方には大きく2つの切り口があります。
特に簡単にナレッジを残すための第一歩は、自身の実践/経験/学びを言語化することです。つまり、1つ目の切り口のように、自身の直面した課題や困難をどのように乗り越えたのかというプロセスを簡潔に言語化することから始めるのはいかがでしょうか。
同じ失敗を繰り返さないためにも、「問題点」「解決プロセス」「得られた学び」を言語化しナレッジとして残しておけば、後に同様の事態に遭遇した際にも、過去の自分の行動を振り返って有益な示唆を得ることができます。
それでも何を書けばいいか浮かばない人へ
ここまで読んでナレッジの残し方についてはなんとなくイメージがついたかもしれません。それでも「で、何を書こう?」とお題を考えるところで悩んでしまう方も多いと思います。
そんな時は、こんなことを試してみてください👇
周りの人に無邪気にリクエストをもらってみる
同じチームのメンバーやマネージャーなど、自分の仕事を知ってくれている周りの人に、まず直近やっている仕事についてざっくばらんに話しながら、どんなこと知りたいと思うかを気軽に聞いてみてください。
意外とこういうことを知りたい・聞きたいという部分が他者視点からだとすんなり出てきたりします。
インプットではなくアウトプットを振り返る
どんなインプットをしたのかをまとめることは簡単ですが、自身の経験に紐づかないため、ただのまとめ記事になってしまいます。
一方、自身が最近アウトプットした資料や成果物、議論のための図表などを軸にそれをなぜ作ったのか振り返り文字に起こしていくと、そのアウトプットの背景にある課題や狙いが一つのナレッジになります。
参考にしたナレッジの実践例大歓迎
また、noteなどに点在する他者が書いたナレッジを参考にして実践してみた実例も貴重なナレッジです。
前提やステークホルダーなどの条件がほぼ確実に違うため、実践例とアレンジしたポイントや効果(成功でも失敗でも)をまとめた記事は、次に実践を試みようとする人の有用なナレッジになります。
最後に
ここまでつらつらと書いてきましたが、一言でまとめると、ナレッジを書くことにハードルを感じたら過去の自分に伝えるように今実践していること・経験していることを残すことから始めましょうという一言に尽きます!
誰もが最初は素人です。
言語化も訓練しないといきなり良い記事を書くことは難しいでしょう。
まずは今やっていることを残して行くことでいつか誰かの役に立つ、ぜひそんなマインドで筆を執ってみてください。
また、ナレッジを発信した人を称賛することで、多様なナレッジが循環するカルチャーを業界全体で作っていけたら良いなと個人的には思っています。
記事へのリアクションだけでは意外とどれくらい参考になっているのか本人には伝わりません。誰かのナレッジが学びになったり日々の仕事の助けになった時には、ぜひそのことをSNSや対面で伝えてみるのはいかがでしょうか。
記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。とても嬉しいです!